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美女と天女  作者: 美貝
HARUKA
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熱血・あ・た・し!

それから、春果君は本当に毎回授業に来てくれるようになった。

もう2週間ちょいになる。



あたしの授業は週に二回だから、結構な頻度で会ってることになる。



がむしゃらに授業をこなし、気付いたら五月に入ってた。

桜は完全に散って、葉桜がキャンパスを綺麗に彩ってくれてる。

緑滴る壮快感あふれる季節も、もうそこまで来てる。



少しずつ仕事にも慣れて来て、日本とオーストラリアの違いにも、ほぼ完全に順応した。



日本って、全てがキチッと整頓されてて清潔感もあるし、郊外に出ると自然がとても綺麗だよね。



日本に帰って来るまでは八百万の神とか、一国にそんなに神がいるなんてご苦労な事だな、くらいにしか思ってなかったけれど、実際に山や田畑に行ってみるとそれも分かる気がした。



目には見えない神聖なものが溢れてるのを、思い込みかもしれないけれど肌で感じた。

例え思い込みだとしても、そう思わせる何かがある事自体が驚嘆すべきことだと思う。



例えば、シドニーのブルーマウンテンもユーカリの木々で覆われたとても綺麗なところだけれど、やっぱり日本とは違う。

日本のような繊細な神々しさはブルーマウンテンにはない。



ま、ブルーマウンテンはブルーマウンテンで、彼の地にしかない良いところはたくさんあるんだけれどね。

でも、日本のように繊細ではない。



この繊細な土地が育てた愛すべき人々と一緒にいれる事に対して、あたしの中で感謝の想いが込み上げてきたのは先週末の話。

恥ずかしいから、誰にも言わないけれどね。



春果君は、あたしの中ではもっとも愛らしい日本人の中の一人。

容姿もなんだけど、心持ちがとっても可愛い。



いつも邪魔にならないように隅っこの方に座って、真剣な顔であたしの話を聞いてくれてて。

彼のお陰で、あたしの授業はすごく大所帯になった。



聞いたところによると、五月って色々慣れてダレてくる時期なんだよね?

特に一年生は。



なのに、あたしの授業は春果君のお陰で五月病とは無縁なんだ。

履修してる子も、聴講してる子も、あたしの目から見ても本当によく頑張ってくれてる。



特に聴講の子は成績つかないのに、よくやるなぁ。

目立つ発言を何一つするでもないのに、春果君はクラスのムードメーカーになってくれてて、良い意味で真剣さのあるクラスを作ってくれてる。



聴講で来てる子達。

動機は不純でも、少しでも英語に親しんでくれて、彼・彼女たちの視野が広がったらいいなって心から思う。



英語と日本語って正反対だからさ。

例えテストで良い点が取れなくても、英語を勉強することで人としての奥深さや人生の深みが増すんだったら、それが一番大切な事だとあたしは思う。



英語を勉強したら、日本語話者にとっては自分とは正反対のモノの見方が身につく。



同じ事を表現するのでも、日本語と英語じゃ全く違う。

それって、どういう風に物事を見るかが決定的に違うって事なんだよね。



その違いが分かったら、自分の中の幅がとても広がって楽しいと思う。

それこそが、英語学習の最大の目的だとあたしは思ってる。



英語話者と意思疎通が出来たら、もっと素晴らしいけどね。



それはまた、次の段階。

初級にそこまで求めたら可哀想だからさ。


新入生たちも、上級生と話す機会が出来て嬉しそう。


ペアワークの時とか、結構楽しそうに片言の英語で話してる。

色んな情報が得られるしよかったね。

人脈って、日々の生活の上で一番大切だよね。


人との出会いによって人生って大きく変わっちゃうもんね。

あたしも、人脈のお陰でここに来れたんだし。

世間でよく言われるコネってやつね。



でも、運も実力の内じゃん?

おっと、これはこれ以上カミングアウトしちゃダメになってんだよね、危ない危ない。



学生数が圧倒的に増えちゃったから授業の準備は倍増したんだけれど、それでも春果君に感謝しなきゃ。

だって、みんなに多大なる好影響を及ぼしてくれたんだもん。


実際、最初の授業以降は春果君はクラスの中であたしに抱き付いたりとか、手を握ったりだとか、一切しなくなった。



「ミス・パーカー!ハウアーユー?」


「I’m good, thanks! Yourself?」


「ア・・・アイムオーケー。センキュー。アイムゴーイング。」



いつも、こんな感じのあっさりした会話が彼がクラスに入って来た時に繰り広げられて、それで終わり。

すぐ席についちゃう。


彼の周りに座る子は決まってなくて、でも、努めて男子学生の隣に座るようにしてるみたい。

モテるくせに、勿体ない。


ほれ、そこの女子おなごの力強い視線を見てみなよ。

明らかに獲物を狙う目だよね。


はっ!


あたしのエンジェルがロックオンされてる!


ああ、春果君が空手部で良かった。

これで天文研究会とか非肉体系だと、容易に連れ去られて、あたしの口からは言えないような恥ずかしめを受けてたはずだ!


可愛過ぎるのも考えものだな。

ついつい、いけない事したくなっちゃう気持ち、お姉さんも分かるよ。


何か危ない妄想とかしちゃいそうになるよね。

お姉さんも分かるよ。



あ、春果君、身震いした。

あたしの妄想を感じ取っちゃったのかしら。

もしそうなら、謝るわ、ごめん。


だってさ、最近、春果君そっけないから、余計妄想に花咲いちゃうんだよね。

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