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美女と天女  作者: 美貝
HARUKA
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接近2

惨敗だった。田山は手ごわかった。


次に会う時までに、ナルシストに対抗する臨機応変能力のレベルをあげておこう。


ナルシストは、何を言ったって自分にとってプラスに取る、激烈幸せな人種だよね。

そんな、そんなのって・・・



普通に羨ましひ(´・ω・`)



あたしも常にポジティブでいたいよ。


そして結局、この教室かよ。

まぁ、今日はプリンターが必要なものは全て準備済みだし、いいんだけどね。


最早、あたしの聖域だな、ここは。

学内で唯一心休まる空間だ。

落ち着くわー。


あたしは、椅子に座ったまま腕を前の机に伸ばし、そのまま手足をだらーんと伸ばす。

そして、頭も机にコツンと乗せる。


あの田山ですら、入るサークルあるんだ。

どうしよう、もう空手部入っちゃった方がいいのかな。

いずれにせよ、どこかには入らなきゃいけない訳だし、だったら、田山じゃないけど来てほしいって言ってくれてるところに行った方がいい気がしてきた。


ああ。



##FS.L##とか何とか悩んでる場合じゃなくて、今は!##FE##



やっべ、パワーポイントの準備しなきゃ。

昨日の夜、講義ノートを作ったはいいけど、そこで力尽きて寝ちゃったんだよね。

田山も学生団体も、授業が終わってから考えればいいから!


授業の準備間に合わなかったら、やばいよ、あたし。

あと一時間半で何とかするんだ。


そして、それから一時間半、鬼のような形相でラップトップをカタカタ、カタカタさせてた。


あたしの顔見たら、泣く子は更に泣いて逃げ出しただろうし、写真撮られて珍獣発見とか言うタイトルでtwitterにあげられてもおかしくなかったと思う。


あたしの、燃え上がるような情熱で室内温度は真夏のように急上昇してたと思うし。


美女も、切羽詰まるとなりふり構ってられないんだよね。

まじ、生活かかってっからさ。

どんだけ見苦しかろうが、不細工だろうが、それ以上に大切なものってある。


責任だってその一つ。

社会人になったら言い訳なんて聞いてもらえないから、自分にも常に厳しくいかなきゃ。


あたし、もうガキじゃないんだ。

24なんだし。

23年間、充分泣いて来ただろ。


誰も自分のことでいっぱいいっぱいで、助けてなんてくれない。

そんな余裕ないんだ。


だから、これからは泣く暇があったら努力して、全部自分で解決してくんだ。

それが社会人ってもんだろ、あたし。


.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o


感傷に浸りつつも、作業の手を止めなかったあたし、さすが。

無事に終わってよかった。


最後に、講義ノートを開いて、準備したマテリアルとスライドが合致しているか確認する。


うん、完璧!


我ながらアニメや映画、小説とかのポップカルチャーを良く取り入れて、分かりやすくまとめてると思う。


初級だし、まずは英語を好きになってもらうところからスタートだもんね。

それに、日本の学生はシャイで読み書きは出来ても喋れないのが最大の特徴だから、私のクラスでは兎に角たくさん喋る機会をつくってあげれるよう一番心砕いてる。


あたし、ネイティブスピーカーだから細かいところまで直してあげられるし。


勉強を頑張る子はすごく好き。

勉強って、もちろん良い企業に合格するためとか世俗的な目的もあると思うけれど、一番は幸せになるためにするんだと思うんだよね。


勉強をする事で、ものの見方がすごく深まるし視点も複眼的になる。

浅いところしか見えてなかった自分が、本質を見抜ける自分に変わっていく。


人生の深みが変わってくる。

幸せの深さが変わってくる。


同じ経験をするのでも、人によってそれから得るものって大きく違う訳で。

勉強をしてる子、って言うか考える習慣が身についてる子は、一つの経験から他者より多くのものを抽出して掴み取る。

だから、一日の重みが変わる。


それって、人間しか出来ない事だよね。

高等生物の醍醐味って言うか。


娯楽に走って現実から離れて気分転換する時間も時には必要だけど。


でも自分の人生のために努力してる子って応援してあげたくなる。

出来る事なら何でもしてあげたい。


きっと、あたし、学生に過去の自分を投影してんだ。


って、また過去の記憶か。

今日はえらいノスタルジックだな、あたし。


どうしたの?

疲れてるの?

ぐったりなの?


あたしは、自分の中のあたしさんに優しい言葉をかけながら、教室に向かう。

桜が散って、窓からの景色も味気ない。

足取りが軽くなれない。


やる気ちゃん!

出ておいで。

どこにいるの?


今、召喚する!


君が引っ込んでて、あたしの心象風景はえらいことになってる。


そして、今日は教室周辺もえらいことになってる!

何だ、あの学生の群れは?!




え?


教室がえらいことになってるって?



あたしの意識が現実に一瞬で戻される。



な、何事?

教室周辺の人だかり。


今日は、あたしの授業にテレビの撮影でも入るのかしら。


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