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美女と天女  作者: 美貝
HARUKA
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接近1

桜が散って今度は新緑を予感させるピンクと緑の境目のワクワクが今か今かと飛び出してきそうな、そんな不安定さがキャンパスに漂ってる。


本来なら心躍ってしかるべきなのに、あたしはただ憂鬱な気分でトボトボ歩いている。

足取りが重い。

非常勤講師室までの道のりに、いつもの二倍時間がかかってるって分かってる。

ただでさえ、授業があるから早く行って準備しなきゃなのに、何してんだあたし。


でも、あたし迷ってるんだ。

結局、目ぼしいサークルには巡り会えずに、あのオリエンテーションから二週間経ってしまった。

適当に決めればいいやって思ってたけど、適当にすら決めれなかった。何となく春果君の嬉しそうな顔がちらついて・・・


ああぁ、どうすんの、あたし。

まずくない?

もう四月も終わりそうだし。

他の先生方は、もうお決めになったのかな。


今日、誰が来てるんだろ。誰でもいいから、聞いてみよ。

そして、アドバイスを仰ごう。


うん、それがいい。

あわよくば、いいとこ紹介してもらって、それがだめでも、非常勤の先生はたくさんいらっしゃるし、いいのに当たるまでトライし続けて・・・


とか、うだうだ考えてる間に非常勤室についてしまった。


あたし、実は非常勤室好きじゃないんだよね。

教えてる科目違うのに、何か皆さんライバル意識強くて空気がピリピリしてんの。

せっかく縁あって一緒の時期に教える事になってんだから、助け合えばいいのにね。

落とし合いしたって、それで常勤のポジションが約束される訳でもなし・・・


居心地悪いから、あたしは大きなパソコンとプリンターが必要な時だけその部屋にいて、必要ないときは極力斜め向かいの使われてない教室で自分のラップトップで仕事することにしたんだよね。


空調とか入ってないから、まだちょっと肌寒いんだけど、ピリピリした環境で肌を刺されるより、冷たい空気に攻撃されてる方がずっとまし。


今日はどなたがいらっしゃるのか。出来れば温厚な方だといいんだけどな。

学生団体の話聞きたいし。


あたしは、そろりと非常勤室のドアをあける。


途端に中からむわっと強い香水のにほひが顔を攻撃してきた!

ぐわぁっ、目潰し攻撃か?!

何だ、新手のテロリズムか?


痛い痛い。リアルに痛い。

何なの?


あたしは、なみだで滲む目を少し開ける。ぼや~っと人影が浮かんでくる。


それは、あろうことか、あたしと同時期に入って来た推定年齢32歳・田山先生だった。


確か経営の先生だったはず。


チャラララララ~♪


戦闘が開始した。


敵は究極のナルシストTAYAMA。

自称大学内一モテる教師。


今日もブランド物のスーツをこれ見よがしに着用し、髪は綺麗に7:3に分けている。メガネはもちろん、おしゃれメガネ。


最近よく食べるのか、少しお腹がポチャってるのは見えないことにしといてあげよう。


あたしにも初めて会った日から、強烈なるアプローチを惜しまないTAYAMA。

さぁ、どうやってこの場を乗り切るのか、Nazuna!

ここは腕の見せ所だ。


「あ、田山先生、こんにちは。これから授業ですか」


あたしは爽やかに、極上のスマイルでさっさと授業に行けオーラを出す。


「これはこれは、パーカー先生。今日もお美しいですね。いや、僕は学生のアポイントメントがあって彼女達が来るのを待っているんですよ」


TAYAMAはサラッとあたしの攻撃をかわし、且つ女学生が自分に会いに来る事をさり気なくアピールする。


くそっ、カウンター攻撃か。やるな。


大して参考にはならないだろうけれど、念のため聞いとこう。

もし、あたしと同じ状況なら攻撃力は高いはず。



「田山先生、もうどの学生団体に入るかお決めになりました?これだけ数が多いと、逆に迷ってしまいますよね」


「ええ、そうですよね。一つだけ、と言うのがネックですね。二つ以上は入っても無給で時間だけ取られますからね。いやぁ、僕は多くの学生たちに入れ入れと誘われてまして。彼女たち全員の希望に応えてあげられないのが、先生として辛いですよね」



チーン。

奴には既に目ぼしい団体がアル。


Nazunaは聞いた相手を間違え、カウンター攻撃をモロにくらった。


Nazunaの中に焦りが生まれた!


ピコーンピコーンHPが赤色に変わる。残りわずかだ。


ってか、先生として女学生の気持ちに応えてあげたいなら、無給でも全てのサークルに入ってやれよ。


金と学生、どっちが大切なんだ。


だめだ、こいつと一緒の空間にいるなんて耐えられない。


そもそも、香水がきつすぎて鼻がもげるし、涙が止まらん。

催涙スプレーばりの効果だ。

同僚にこんな強力な武器を使うなんて、何て奴だ。



「人気者は大変ですね。では、私は授業がありますので、これで。失礼します、先生。Have a good one!」



Nazunaは敗北を認め逃げ出した。


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