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破壊的な希望

作者: かざむき

 西暦2017年。日本に数十発のミサイルが降り注いだ。

 それらは日本の主要大都市である政令指定都市を余さず爆撃し、特にそれは国家機能の集中する東京二十三区に集中的に行われた。皇居、国会議事堂、都庁、有力マスメディア、それらを初めとする国家を国家たらしめていた権力は、その数十発のミサイルの標的とされ、例外なく瓦礫の山と化した。

 日本という国は、ある日を境に壊滅的なまでに破壊しつくされてしまった。


 ……なんて話は、結局のところ歴史的に起こった事実を語っているだけに過ぎない。それは誇張でも何でもないし、ましてや冗談や嘘の類でもない。それは確かに起こったことなのだから。

 そんな歴史的事件が起こった日、僕はまだ一人の大学生でしかなかった。

 はるか彼方の空から飛来してくるミサイル群が、大気圏外から地球への突入を敢行する際、空気摩擦で真っ赤な流れ星になっているのを僕は目撃していた。それが僕らの住んでいる日本国に飛んできていると感付いた頃には、僕は少々どころかかなり取り乱してしまったが、だがどこかには「やっと死ねるのか」という感情もあった。

 結局、ミサイルは僕の住んでいる地域から少しはずれ、一部に無慈悲なる爆撃を与えたが、しかし僕はそれで死んだりすることはなかった。

 膨れ上がる炎、舞い上がった粉塵、半ばから折れて落ちていくビル、泣き叫んで助けを請う声、止まないサイレン、悲鳴、混乱、目も当てられないような死体の数々――僕がそれら全てを目撃したわけではないが、結果として時間とともに僕らは生き残ったマスメディアを通してそれらを直視せざるを得なかった。この”平和”という泥濘に漬かりきっていた国と、それを打ち砕かれて絶望に打ちひしがれる人々のドラマを。

 だが、それはまた別の話。今ここで語らなければならないものは、もっとほかの、そう言ってしまえば僕自身についての話だった。

 あの日――不謹慎かもしれないが――日本という国が数十発のミサイルによって壊滅したあの日、僕は避難していた場所から、これからの未来についての希望を見出していた。

 愛しくも憎々しい日本という国。そこに満ち溢れていた既得権益と偏見、差別、そういった歪んだ主観に基づいて動くエゴに突き動かされていた国民。そういったものがまとめて消え去ったのだと考えれば、それは希望と形容するしかなかった。僕の憎んでいたものが、まさに目の前で灰燼と化したのだから。

 歪んでいるのかもしれない。それは自覚している。だがやり直すことはできる。これが絶望の底なのだとしたら、見えているのは未来についての明るい展望だけではないか。

 あの日、破壊的な結末が訪れた日本という国で。

 僕は生まれて初めてと言っていいほど、猛烈に生きているような気がしたのだった。


構想も何もなく衝動的に書いてしまいました。

自分自身の感情を込めた心境小説的な気もしますが、世界観ばっかり書いててストーリーもキャラもないですね。

まあでもせっかく書きましたし、たまにはこういうのもありかなと思いまして。


学生がよく妄想するテロリストがドア蹴破って入ってきたら~みたいなのとあんまり変わりはありません(苦笑)。

軽いサンプル的な意味合いも込めて上げることにします。


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