表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/329

すさまじい客

 モモが──すさまじい客を連れてきた。


「おじい様ではありませんか」


 ハレは、驚き余って苦笑になってしまう。


 まさか、こんな旅先の領主宅で、放浪中の祖父と再会するとは思っていなかった。


 正直。


 もう、二度と今生で会うことはないだろうと、どこかで思っていたのだ。


 祖父の年は、既にいつ亡くなってもおかしくないものだったし、彼は自分を守ることの出来る髪を、ここまで落としてしまったのだから。


 死に場所を探すために、旅に出たのではないかとハレは思っていた。


「お前がここにいるということは……あれは弟の仕業か」


 だが、祖父は年老いてなお衰えているようには、とても見えず、若かりし時と変わらない笑みを浮かべるのだ。


 父とは違う、少し人の悪い笑み。


「弟は、魔法を使ったぞ」


 その情報をハレに与えながらも、祖父は彼の反応を見ようとしている。


 イデアメリトスの兄弟という概念は、ハレたちの時代に劇的に変わったため、前の世代とは一線を画していた。


 そんな古い概念で、祖父は自分を観察しているのだろうか。


「私も、もうとっくに使いましたよ」


 ハレは、その視線を軽くかわした。


 かわしながら、逆に祖父の反応を観察するのだ。


「はっはっは……食えんな、お前は」


 声を出して、祖父は笑った。


 本当に、愉快でしょうがないように。


「ちょうどよかった、おじい様……テルの手紙を読んでいただけませんか?」


 父には、既にテルが飛脚を走らせている。


 祖父もまた、イデアメリトスの直系として、知っておくべきことだとハレは思ったのだ。


 これほど年老いてから、身内の反逆の話など、聞きたくもないだろうが。


「どれ……」


 彼は手紙を受け取り、開いた。


 表情は変えなかった。


 太陽でいる間に、祖父はそうあらねばならなかったのだ。


 手紙から顔を上げ、彼は自分を見た。


 まっすぐな視線の中に、微かな翳りを感じる。


「最悪の心当たりなら、ひとつだけあるな」


 口調は尊大ではあったが、苦さがたっぷり含まれていた。


 やはり。


 年老いた祖父の、心を痛めてしまったようだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ