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ハレとテル

「連れて行って欲しいのは……モモだ。リリューの従妹になる。女は、二人の数には入らない」


 テルの言いだした言葉は、ハレにとっては疑問だった。


 リリューの従妹ということは、ウメと呼ばれる女性の娘になるのだろう。


 ウメ。


 彼の頭の中では、その女性は別格だった。


 彼女は、この国に置いて革命的なことを、数多く成し遂げていたのだ。


 十数年の月日は、それらの偉業を熟成させ、花実をつけようとしている。


 寺子屋制度により、各町の子供から若者の識字率は上昇し、国からの触れ事は誤解なく隅々まで行きわたるようになった。


 それにより、手紙、本、絵、書類などの紙情報の需要が跳ね上がった。


 だが、情報は滞ることはない。


 飛脚が、いまや遠い果ての村まで、行き来するようになっていたのだ。


 読み書きのできる若者には、新しい職が増えた。


 よい師匠についた生徒たちは、とりわけ目覚ましい能力を開眼させ、いままでは裕福な家の子しかなれなかった地方役人の職に就く者まで出るほど。


 それらを、決して国庫のお金を使うことなく、やってのけたのが──ウメという女性だったのだ。


 そんな女性の言葉を、宮殿で代弁しているのは、ヤイクという男。


 賢者の甥で、彼自身も貴族を最近継いだ。


 一般人の言葉は、古い貴族社会ではなかなか受け入れられない。


 だが、ヤイクの口から出る言葉は、決して無視出来ないのだ。


 その斬新な発案の数々に、この国はなかなか追いつけてはいないのだが。


 ともあれ。


 ハレが、決して無視できないでいるウメの娘を、何故テルは寄こそうとしているのか。


 第一。


 テルが、自分の旅の補佐役を決めたという話は、まったく聞こえてこなかった。


「いいから、モモを連れてってやってくれ……」


 それが、ハレのためになる。


 自分の旅より、ハレの旅の心配をしているのだ、この男は。


 テルは、自信家だ。


 自分は、絶対に生きて戻れると思っているからこそ、ハレの周囲を盤石にしようと考えているに違いない。


 これで。


 自分は、太陽になるつもりはないと言ったら──きっと一晩中、説教をされることだろう。



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