違うが違わない
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エンチェルクは、その気配に肌を粟立たせた。
ただの夜盗とは違う、組織だった集団が──彼らの旅路に立ちはだかったからだ。
「そこの子供……フードを取ってもらおうか」
彼らは、悪意を隠すこともなく振りまきながら、テルの姿に難癖をつけるのだ。
ビッテは、まだ抜かない。
他の誰かと、勘違いされている可能性もある。
そう、思っているのだろう。
いつでも抜けるよう、エンチェルクも指先まで、神経をとがらせた。
何事もなく、去って欲しい。
そう思えるほど、双方の空気はぴりぴりとしている。
テルは──フードを取った。
堂々と。
その姿や、世継ぎにふさわしい気高さである。
彼の姿を見た男たちは、不思議な反応をした。
一瞬、安堵しかけて。
そして。
前以上の戦慄が走ったのだ。
次の瞬間。
既に、ビッテは抜いていた。
彼は、敵味方の判断が速い。
決めたら、一瞬も迷わない。
その肝の据わり具合は、キクに近いものがあった。
要するに。
探している人物は、別の人間だった。
しかし。
テルを見て──彼が、何者であるか分かる連中、と判断したのだ。
悪意は消えることはない。
いや、それどころか増す一方だった。
ビッテは、豪快に沢山の屍を築いていったが、とても一人でさばききれる人数ではなかった。
案の定、脇をすり抜けてテルに襲い掛かる男。
ふぅ。
息をひとつ、整えて。
エンチェルクは──刀を抜いた。