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自然な不自然

 新しい町に入る度、ヤイクはその手腕を発揮した。


 少々羽振りのよい商人然として振る舞い、保存食の買い出しから、宿の確保まで何事もなくこなしていく。


 その様子は、本当に貴族かと疑うほどだった。


 そう。


 いまや彼は、どこから見ても貴族には見えない。


 町に入る前に、彼は一つ思い切ったことをしたのだ。


 腰の短剣で──ばっさりと、結んでいた髪を落としたのである。


「どうせ、また都に戻るまでには伸びますからね」


 この旅で、自分の髪は邪魔だと判断したのだ。


 そして。


 フードを購入してきた。


「無用な衝突を減らすためです」


 ヤイクは、そのフードを彼に差し出す。


 イデアメリトスの髪を、見えにくくしろといっているのだ。


 要するに彼は、徹底的にイデアメリトスの成人の旅路であることを隠すつもりなのだ。


 ビッテも、それについては異論はないようで、口は挟まなかった。


 自分の身分を隠して旅をする。


 それに、テルは抵抗がないわけではない。


 だが、従者二人が勧めるこれを、蹴ることには抵抗があった。


 ヤイクが、自分の髪を先にばっさりと落としたことも、その抵抗感を増大させたのだ。


 分かっていて、切ったか。


 テルの性格までをも、ヤイクはしっかりと読んで行動を起こした。


 先に折れます、あなたも折れて下さい。


 彼は、そう言っているのだ。


 さすがは。


 ハレが推薦するだけの、政治肌の男だ。


 テルは、唇に笑みを浮かべながら──そのフードを取った。


 そうしたら。


 まるで。


 商人と、その少し年上の妻、一人息子。


 荷物持ち兼、彼らの護衛の男。


 そんな、自然なような不自然なような一行が出来上がったのだった。


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