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そこにしかない

「私の名代として、月の殲滅に向かってくれ」


 父に呼び出され、言われた一言はテルにとって衝撃的なものだった。


 討伐ではなく──殲滅と言われたからだ。


 根絶やしにしろ。


 そういう意味だった。


 逆に言えば、根絶やしにできそうな彼らの本拠地を見つけたということだ。


「必要なだけの兵と、そしてハレイルーシュリクスも同行させよう」


 ため息の混ざるその声は、何と表現すればいいのか。


 父にとっては、ついに来てしまったこの日は、非常に重いものなのだろう。


「一体、どこからそんな情報が?」


 疑っているわけではない。


 これまで、この国の全てを統べる太陽から身を隠し続けてきた彼らの本拠地が、突然分かったように思えて不自然だったのだ。


「ハレイルーシュリクスだ……」


 答えは、意外な人間だった。


「正確には……ハレイルーシュリクスが、トーから聞き出した」


 意外の皮はすぐに取り払われ、そこから白い髪の男が現れる。


 月の血を持つ男。


 彼ならば、知っていてもおかしくはない。


 しかし。


「それが正しいと……どうして言えるのですか?」


 トーを疑っているわけではない。


 完全に信用しているというわけではないが、この場合の質問は違う意味だ。


「彼は長い間、同胞たちから離れて暮らしているではないですか。秘密を知る彼が離脱したことにより、本拠が危険にさらされることを考えて移転しているのでは?」


 太陽に認められた歌う者。


 月にしてみれば、彼は命を狙うべき裏切り者だ。


 どうして、ずっとそこにとどまっていよう。


「留まらねばならなかったのだ、彼らはそこに……」


 父を信用させた深みが、言葉の中からあふれ出てくる。


 彼らだって、本拠地を移動出来るものなら移動したかったのだ、と。


「この国で……そこにしか『場』がないというのだよ」


 この『場』が──月の人間たちの運命を、全て決定づける理由となったのだった。




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