表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/329

増殖

「あっはっはっは……拳でよかったな」


 事の次第を聞き、伯母は楽しそうに笑う。


 まったくその通りなので、桃としては恥ずかしくて小さくなるしかなかった。


 幸い、痛みは大分ひいてきていて、大事には至らないようだ。


 そんな伯母の部屋──ロジアの屋敷の一室で、リリューがベッドに横たわる次郎とにらみ合っていた。


 いや、睨んでいるわけではないのだろう。


 けれど、次郎はまだ余りに小さい赤ん坊で、それに対して従兄はどうしたらいいのか、分からずにいるのだ。


「睨んでないで、抱いたらどうだ?」


 伯母が屈託ない言葉で、息子の尻を叩く。


 リリューは、大きな大きな自分の両手をじっと見た後、小さな小さな弟を見る。


 そして。


 頭を左右に振るのだ。


「もう少し……大きくなってからにします」


 うっかり握りつぶしてしまうとでも、心配しているのだろうか。


 大きな身体で、強い力を持つ男が、赤ん坊に戸惑っている姿は、とてもおかしいものに見えた。


「馬鹿なことを……いいから抱いとけ。小さい次郎を覚えておいてやれ」


 首は据わってるから大丈夫だ。


 伯母の言葉に背中をつつかれ、おそるおそるリリューが手を伸ばす。


 兄弟かあ、いいなあ。


 ぎこちないながらに、何とか赤ん坊を抱き上げる従兄を見ながら、ふっと桃はそう思った。


「結構……重いな」


 赤ん坊の命の重さをかみ締めるように、リリューは弟を抱く。


 桃にも。


 弟がいる。


 向こうはまだ、認めてくれてはいないようだが、あの父親の子という意味では、二人は姉弟なのだ。


 一緒に暮らせなくても、何かでつながる姉弟でいたいなと、目の前の兄弟を見ながら、桃は思った。


「この国に来た時、家族と呼べるのは梅だけだった……増えるものだな」


 伯母が、目を細めてリリュー、次郎、そして桃を見る。


 嬉しそうだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ