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行きます

「オリフレアリックシズの屋敷だ!」


 ハレは、御者台の方へ顔を出し、前方を確認した。


 やや遠目の建物から、黒煙が上がり始めている。


 間違いようのない、彼女の屋敷。


「急いでくれ!」


 人が走るより、荷馬車を走らせた方が速い。


 ハレは、領主の御者に頼んだ。


 何事だ!?


 彼女が、自分の屋敷を吹っ飛ばすほど癇癪を炸裂させたという話は聞いたことがない。


 逆に言えば、それほどの魔法を使わなければならない事態に陥ったということか。


 考えにくいことだ。


 いくら髪が短いとは言え、魔法の制限のない今、彼女の屋敷に押し入るのは、命がいくつあっても足りないはず。


 特に月の人間は、テルに散々戦力を削られている。


 それに、彼女にはあの男がついているのだ。


 いま、こんな事態が起きるとは、とても考えにくかった。


 ということは、また反逆者か!?


 相手が、イデアメリトスであればありえると、納得しそうになった時。


 はっと、ハレはあることを思い出した。


「コー! エンチェルクと、この町で話を聞いたと言ったね?」


 他愛ない雑談の中。


 コーは言ったのだ。


「はい、町の人は『オリフレアリックシズ様が、弟殿下のお子を授かったようだ。おめでたい』と噂していました」


 ああ。


 人の口に、戸は立てられない。


 テルがいついた後に、オリフレアに妊娠の兆しが出たことを、町の人間の多くが知ってしまったのだ。


 弟もまた、彼女のことを気にかけているようで、ハレとの話で「つわりが重いようだ」と漏らしたことがあった。


 彼女は、妊娠という状態で──いま、まさに弱って無防備になっている時ではないか。


 それを知ったら、反逆者だろうが月の人間だろうが、手をこまねいて眺めているはずがない。


「行きます」


 屋敷が目前まで迫った時、リリューが一言確認した。


 ハレが頷くと。


 大きな身体は、荷馬車が止まるのも待たずに、飛び出して行ったのだった。



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