生の情報
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そうそうたる面子に、桃は少し困ってしまった。
ハレ、ホックスだけではなく、テル、ヤイク、エンチェルクとそろい踏みだったのだ。
皆、彼女の持ってきた都の生情報を聞きたがっている。
まずは、テルとハレの伯父──いわゆる、反逆者の処分はイデアメリトスの内々で済んだということ。
逆に言えば。
外に公開されない分、内部では大々的な処刑が行われたという。
「祭りの前に、全て終わらせられるよう、円滑に手配されたそうです」
ハレとテルが都へ帰りつけば、祭りが始まる。
その祭りの儀式に関わらぬ日程で、血生臭い事は終わらせたそうだ。
「当然だな」
テルが、一言だけでその話を終えた。
「ただ……」
終わらせられないのは、桃だ。
母は、思慮深い人間で。
そして、たくさんの情報網も持っている。
特に、飛脚には立ち上げから大きく関わっているおかげで、民間からの情報はとても多く手に入れられるのだ。
「ただ……どうも支援者がいたのではないかという話が」
動かないハレと対照的に、テルの表情は一瞬にして険しくなった。
「根拠は?」
言葉も鋭く、桃に突き刺さる。
「聖職の身分に見合わない、金品を持っていたそうです」
寄進の金を着服していたか、誰かに個人的に寄進されていたか。
その真意は、本人に正せないままの処刑となった。
勿論、宮殿側は正そうとしたという。
しかし、テルに腕を切り落とされて以来、ほとんど正気ではいられなかったようで。
元々、キュズの葉の中毒も患っていたらしい。
「キュズ! あんなイカレ葉まで嗜んでいたのか、あの男は」
テルは、言葉を放り投げた。
心底、軽蔑した声。
同じ、イデアメリトスの血縁だからこそ、なおさら腹立たしいように見える。
「ありがとう、モモ。少しテルと話をするから、他の部屋で休んでいておくれ」
桃は、しばらく待つこととなる。
公的な話は終わっても、まだ私的な話があるのだと──ハレはそう言っていたのだ。