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「情報が速いというのも、善し悪しだな」


 テルは、そう言った。


 エンチェルクの思考より、まだまだ彼の方が鋭く、そして知識の幅が広いのだ。


「商人は商人でも……異国と取引のある連中かもしれん」


 そして。


 話は、彼女の想像を軽く飛び越えた方向へと進んで行ったのだ。


 異国。


 この国は、とてもとても広い。


 とても、一人では全てを歩き切れないほど。


 特に内陸に住んでいる人間たちにとって、海や異国とは無縁なものだ。


 テルが言うには、東の港から相当遠いところに、群島があるという。


 小さな国家がいくつもあり、船に長け、時折この国の港に小銭を稼ぎに商売に来る。


 国が出て商売をするほどの規模ではないので、都が直接関わることはない。


「もうひとつ……ありますよ」


 ヤイクの言葉は、冷たかった。


 異国のことを話すテルに、ではなく、その言葉の先にあるものに。


「ああ……あるな。もっともっと遠い国だ」


 テルの言葉も、温度を変えた。


「殿下……私は二十年前のことを調べる度に、思うことがあるのです」


 二人の間で通じるそれは。


 二十年ほど前の、あの港町の事件。


 ああ。


 そうか。


 東の港は、その時襲撃されたのだ。


 だから、キクはリリューを連れて帰って来たではないか。


「あの時……彼らが目的としたのは、ただの蛮族的行為ではなかったのではないかと」


 ビッテが。


 微かに身を乗り出したのを、見た。


 ヤイクの言葉は、政治の話がそれほど得意ではない彼さえ動かすほどの重さを持っているのだ。


「我が国の技術や人を盗むこと……いや、それだけではなく、永続的に内部調査をする人間を送り込むこと……あの蛮行のドサクサの中ならば、彼らはやってのける機会があった」


 二十年ほど前に。


 この国に、略奪とは別に、小さな虫が放り込まれたのではないか──彼は、そう言うのだ。


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