表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/329

駿馬

 学者は、正直だな。


 ハレは、ホックスの言葉に、そう感じた。


 相手がどう思うかよりも、一番有益と思える話を最優先する。


 だが、悪い話ではない。


 少なくとも、あの太陽の木を愛しているジリアンにとっては、一番の良策と思えた。


 しかし。


 彼女は、まだ若い。


 感情を、うまく理屈で割り切れないのだ。


 バチン!


 いい音がした。


 彼女は、ホックスの頬を本気で引っぱたいたのだ。


 涙目、だった。


 首まで真っ赤にしたジリアンは、涙の粒をこぼしながら走り去ってしまったのである。


 おそらく。


 彼女のこれまでの人生で、これほど直接的にはっきりと痛い核心を突かれたことはなかっただろう。


 あの領主の、孫娘への甘さを見ると、それがよく分かる。


 そして。


 ホックスは、さっぱり彼女の心の動きなど、理解できないのだ。


 何故、はたかれたのかも分からずに、頬を抑えて呆然としている。


 オロオロしているのは、モモだった。


 彼女も、やりとりの一部始終を見ていたようで。


 ホックスと、走り去るジリアンを交互に見つめて、どうすべきか悩んでいるように思えた。


「モモ……」


 だから、ハレは彼女に呼びかけた。


「よかったら、追ってもらえないか?」


 モモは、心の機微の分かる女性だ。


 興奮したジリアンを落ち着かせて、そしてホックスの言わんとした真意を伝えてくれるはず。


「はい!」


 彼女は、弾かれるように駆け出した。


「あ、れ?」


 置いていかれたコーが、一拍遅れてキョロキョロするものの。


 駿馬二人は、もはや祭の人ごみの向こうへと消えてしまっていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ