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太陽の木の娘

「父上も、大変な遺産を遺してくれたものです」


 セルディオウルブ卿は、苦笑気味にそう言った。


 屋敷の裏手にある林に、男たちを案内しながら。


 男たち。


 ハレとホックスと、リリュー。


 リリューの仕事は、勿論二人の護衛であって、太陽の木見物ではない。


 モモとコーは、買出しに出かけた。


「私は、植物に関しては門外漢だったのですが、このおかげで随分植物の勉強をさせられる羽目になりました」


 木は、細くしなやかに伸び、葉を茂らせていた。


 リリューの検分では、その程度の感想しかない。


 以前、太陽妃と母も、この屋敷を訪れたという。


 ハレとホックスが、熱心に太陽の若い木を検分していると。


「おじいさまー!」


 遠くから、うら若い女性が駆けて来る。


 彼女の後ろから、側仕えの女が遅れて必死で追いかけてくるのが見えた。


「おじいさま、そこへゆくときは、わたくしに許可を取るって約束でしょう!」


 長ったらしい裾で、よくそこまで速く走れるものだ。


 貴族の子女というよりは、まるで駿馬だった。


「これ……ジリアンデーベルフツル、はしたない。大事なお客様の前ですよ」


 卿は孫をたしなめるが、その言葉に強い響きはない。


 甘い祖父のようだ。


「だって、それはひいおじいさまが、わたくしに下さると言ってくださった木ですもの」


 トンと足を止め、客人に型どおりの礼を取る。


 だが、その言葉は早口でとめどない。


「申し訳ありません……実は太陽の木のことは、私より孫の方が詳しいありさまで」


 ぎょっとした表情を浮かべたのは──ホックスだった。


 父宛に送られた手紙の、太陽の木に関する話のほとんどは、この少女からの伝聞だと聞かされたせいだろう。


 モモとさして年の変わらない彼女が、いわばこの大陸で数少ない太陽の木のスペシャリストだというのだから。


 ジリアンと呼ばれた女性は、鼻高々に太陽の木の説明を始めた。


 自分の周囲といい。


 最近は、女性のパワーが本当に底知れないようだ。



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