太陽の道と刀の道
∠
打ち合う。
大人になって、テルがしたかったことのひとつが、これだった。
彼は、真剣を抜いていた。
勿論、相手も真剣だ。
ずっとやりたかったことを、たったいま彼は叶えているのである。
相手は──リリュー。
同じ道場の兄弟子である彼は、真摯に刀を受け止め、流し、そして打ち返した。
重みと共に、手に伝わる振動が、リリューの意思を伝えてくれる。
真剣を使うということについては、一日の長のある兄弟子は、テルをいなしながらも刀を使うコツを教えようとしているのだ。
彼らしい。
リリューは、刀を極める道に入っている。
彼女の母と同じ道だ。
テルも。
心の奥底では、その道に入りたいと思ったこともあった。
だが、いまは違う。
いま自分が進みたいと思う道は、太陽の道で。
それに連れ添うように、刀の道があるのだ。
こうして打ち合うことで、リリューもそれを理解したのだろう。
だから、テルに扱い方を教えようとするのだ。
ああ。
リリューの太刀筋には、魂があった。
刀の魂が。
打ち合うごとに、道場で稽古していた時とは違うのだと、お互いに思い知るのだ。
テルにとって、これから刀は手段になるのだ。
目的を達成するための。
リリューの刃が美しい弧を描く。
テルの太陽の道には、美しさはいらない。
ただひたすらに極めれば、結果が勝手に美しくなるのだろう。
それは、他の人間たちの批評に任せていればいい。
向いている方向の違う二人の戦いは──邪魔が入るまで続いた。
「我が君! 大丈夫ですか!?」
真剣での打ち合いに驚いた、ビッテが駆けつけるまで。