表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/329

違うもの

 一目で、モモの成長は見て取れた。


 エンチェルクは、それをとても嬉しく思ったのだ。


 刺々しい成長ではなく、彼女は広く大きくなっていた。


 柔らかな気配は、母から受け継いだものでもあり、モモが自分で育てたものでもある。


 もはや。


 モモは、地面を這っていた力ない赤子ではなく、父親を恋しがる少女でもなかった。


 それらの殻を破った外側で、しっかりと立っている女性になっていたのだ。


 これから、きっとモモと沢山の話が出来る。


 それを、エンチェルクが喜ばないはずはない。


 そんな彼女は、見知らぬ女性と一緒だった。


 だが、その容姿は特徴的で、すぐにどこの血筋の人間か、エンチェルクには分かったのだ。


 白い白い髪。


 歌う者だ。


 それは、根本まで引っ張ってゆくと──月の者ということになる。


 テル一行の旅路に、何度も現れては苦しめた宿敵である。


 だが、キクやウメがトーを受け入れ、モモが生まれる時に、誰よりも本当に助けになったのもまた、元は月の者だ。


 二人は、とても仲睦まじく話をしている。


 まるで、姉妹のように。


 その話が終わった直後。


 白い髪の女性が、たっと駆け出した。


 エンチェルクの方へ。


 年齢に追いついていない、好奇心に充ち溢れた目。


「エンチェルクイーヌルト!」


 その唇が、彼女の名を一分の淀みもなく口にした時。


 エンチェルクは、自分が彼女に直接触れられた気がした。


 魂を掴む、その声。


 目の前で両手を大きく広げた後、白い髪の女性はハッと止まった。


「あの……触ってもいい?」


 ちらりと一瞬だけ、モモの方を見た後、彼女はエンチェルクに懇願の瞳を向ける。


 何故だか分からないが、自分に触れたくてしょうがないようだ。


 月の者だ。


 自分たちの旅路を苦しめた、ひどい敵勢力の血をひく者。


 だが。


 あれらとは、違うものなのだ。


「どうぞ」


 トーも──この女性も。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ