違うもの
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一目で、モモの成長は見て取れた。
エンチェルクは、それをとても嬉しく思ったのだ。
刺々しい成長ではなく、彼女は広く大きくなっていた。
柔らかな気配は、母から受け継いだものでもあり、モモが自分で育てたものでもある。
もはや。
モモは、地面を這っていた力ない赤子ではなく、父親を恋しがる少女でもなかった。
それらの殻を破った外側で、しっかりと立っている女性になっていたのだ。
これから、きっとモモと沢山の話が出来る。
それを、エンチェルクが喜ばないはずはない。
そんな彼女は、見知らぬ女性と一緒だった。
だが、その容姿は特徴的で、すぐにどこの血筋の人間か、エンチェルクには分かったのだ。
白い白い髪。
歌う者だ。
それは、根本まで引っ張ってゆくと──月の者ということになる。
テル一行の旅路に、何度も現れては苦しめた宿敵である。
だが、キクやウメがトーを受け入れ、モモが生まれる時に、誰よりも本当に助けになったのもまた、元は月の者だ。
二人は、とても仲睦まじく話をしている。
まるで、姉妹のように。
その話が終わった直後。
白い髪の女性が、たっと駆け出した。
エンチェルクの方へ。
年齢に追いついていない、好奇心に充ち溢れた目。
「エンチェルクイーヌルト!」
その唇が、彼女の名を一分の淀みもなく口にした時。
エンチェルクは、自分が彼女に直接触れられた気がした。
魂を掴む、その声。
目の前で両手を大きく広げた後、白い髪の女性はハッと止まった。
「あの……触ってもいい?」
ちらりと一瞬だけ、モモの方を見た後、彼女はエンチェルクに懇願の瞳を向ける。
何故だか分からないが、自分に触れたくてしょうがないようだ。
月の者だ。
自分たちの旅路を苦しめた、ひどい敵勢力の血をひく者。
だが。
あれらとは、違うものなのだ。
「どうぞ」
トーも──この女性も。