雄々しい
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ハレとホックスが神殿に行ってしまうと、リリューのすることはなくなった。
宿舎に行くか、適当に歩くか。
少なくとも、明日の真昼まで、彼には大きな暇が与えられたのだ。
そんな風に考えながらも、神殿前でぼんやりしていると。
本殿から、出てくる人間が見えた。
リリューは。
ゆっくりと、自分の目を大きく見開いたのだ。
ひとつずつが。
その人間のひとつずつが、彼を驚かせていったのだから。
しっかりとした身体つき。
大きな手足。
腰に下げた、日本刀。
褐色の肌に、金褐色の瞳。
そして、左目の下のふたつのほくろ。
悠然と、こちらを見ながら近づいてくるその男を──自分は、よく知っているはずだった。
母か。
腰の日本刀の理由には、すぐに思い当たった。
母が、彼の成人の儀式に合わせて、神殿に送っておいたのだろう。
「久しぶりだな、リリュールーセンタス」
無事を喜ぶ目ではない。
彼らが、ここに到着して当たり前という目。
この旅路の途中で、残っていた子供っぽさは、どこかに捨て去ってしまったようだ。
リリューは、ハレの成長を惜しいと思った。
彼は、よい太陽になるだろうと。
しかし。
テルもまた、熱い血潮を感じる雄々しい男になっていたのだ。
ハレとは違う意味で、彼もまた太陽に相応しい。
勿体ないことだ。
まったく同じ年で、まったく違う性質の、太陽に相応しい者が二人もいる。
だが。
太陽の椅子は、ただひとつ。
彼らが、椅子を争うことはない。
少なくとも、ハレは──そこに座る気はないのだから。