推薦
∠
「文官役と、女性の従者が決まったんだね」
ハレが、やってきた。
「おかげさまで」
テルは、ヤイクとエンチェルクを手に入れた。
まさか、あの貴族が推薦する女性が彼女だとは思わなかったが、異論があるはずがない。
ただし、現時点で随分と平均年齢の高い面子に、父には笑われてしまったが。
「こっちも、武官役と女性従者は決まった」
ハレの言葉に、そうかと、テルは答えた。
モモが決まっていたのは、既に聞いていたが、ついにリリューが引き受けたのだ。
武の賢者の、養い子。
彼は、ハレの旅路を安全に導いてくれるだろう。
「お互い、あと一人だな。そっちの文官候補は、ごろごろ取り巻きにいるだろう?」
ハレの方が、その点では分がいい。
貴族の取り巻きは、頭はいいが、腕が立たないものも多いのだ。
だが、テル自身にエンチェルクという補佐がつく。
堅実な男の武人が、一人いればいい──そう考えていた。
「軍令府の府長の末息子が、なかなか評判がよいと聞いているよ。ちょっと固いらしいけど」
ハレは、そんな弟の心を読んでいるかのように、よさげな身分の男を挙げた。
リリューに断られたら、その男に声をかける予定だったのだろう。
軍令府の府長か。
テルは、都の中心部にある道場を思い出していた。
たしか、府長のところの三男坊が、そこで剣術道場を営んでいる。
キクの道場に、張り合って建てたのだろう。
身分、場所、と一級品が揃っているおかげで、貴族の子息のたしなみ道場と化している。
男ばかり七人も兄弟がいると、末っ子に残されるものなど、役人の職が精いっぱいだろう。
そんな男の腕を、ハレはリリューの次に目をつけていたというのだ。
面白い物件ばかり持ってくるなぁ。
テルは、少し悔しくなった。
このままでは、ハレの言うがままの人選になってしまうではないか。
だが、この兄が自分を陥れようと思っているなどと、考えたことはなかった。
どっちが太陽になったとしても、恨みっこなし。
それは。
母の前で、二人が誓ったただ一つのこと。