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決着

 その決着は――なんと表現すればよかったのだろう。


 リリューは、これまで様々な戦いを見てきた。


 だが、魔法の絡む戦いはごくわずかだ。


 それに、言葉がそこまで達者ではない自分では、うまく表現出来ない気がした。


 例えるなら、それは居合いに似ていて。


 男とコーは、睨み合っていた。


 先に、男が音という武器を抜くまで、彼女もまた微動だにしない。


 コーは、絶対に先に抜けないのだ。


 男が出そうとする音を、彼女は知らないのだから。


 みな、シンと静まり返っていた。


 生けとし生ける者すべてが、音を消したのだ。


 男の怒りが、そんな静寂の中で上がってゆく。


 それは。


 憎悪であり、殺意だった。


 この中のすべてを、亡き者にする歌が来る。


 大技を繰り出す気なのだろう。


 ハレは、彼女にすべてを委ねた。


 ならば、リリューに異論はない。


 はらり。


 枯葉が、ひとひら落ちた瞬間。


 男の唇が――開いた。


 リリューは。


 見た。


 枯葉が、粉々になる一瞬を。


 そして。


 次に粉々になったのは。


 男だった。


 男の周囲の木をも巻き込み、粉微塵に散り飛んだのである。


 立っているのは――コー。


 だが、その身はゆっくりと崩れ落ちる。


 モモよりも速く、後ろのハレが手を伸ばす。


 残念ながら、子供の身では支えきれなかったが。


 倒れる二人に、リリューは駆け寄った。


「私は大丈夫だ……コーを」


 うつぶせの彼女を、リリューが抱き起こすと。


 彼女は、ぐったりと気を失っていた。


 それ以外に。


 違和感を覚えた。


 何か、違う。


 リリューが、その顔をじっと観察するより早く。


 モモが、彼女の頭を撫でながら言った。


「年……追い抜かれちゃった」


 そう。


 コーの姿は、もう少女のものではない。


 五歳くらい、一気に飛び越えていたのだった。



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