表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/329

あれでしょう

 男の荷馬車で、桃はあの木へと戻った。


 結局──コーもついてきている。


 彼女は狙われていて、危険だから置いてきたかったのだ。


 だが。


『桃が危なかったら、コーが助けるよ』


 そう、コーが言いきった。


 彼女の声の威力は、ホックスとリリューの一件で、十分証明済みだ。


 ハレの許可も出たので、一緒に向かうことになった。


「髪の長い子どもが、町に来る夢を何度も何度も見ました」


 男は、馬の足を速めながら、思いを抑えきれない声を出す。


「あの日から、ただの八百屋の親父の人生が、まるっきり変わってしまったんですからね」


 多分。


 多分、男の話のそれは──いまの太陽のことではないだろうか。


 彼が旅をしている時、太陽妃と伯母も一緒にいたらしい。


「あの人たちは……あれでしょう? 本当はあの御方たちなんでしょう?」


 男は、言いにくそうに空を指した。


 木々の隙間に見える、空高くで輝く太陽。


「孫の読んでる本を見て、はっきりと分かったんです。丸い硝子を鼻に乗せた女性と刀を持った女性が、その本に描かれていましたから」


 ああ。


 この人もまた、マリスの描いた挿絵を見たのだろう。


 太陽妃の丸硝子──眼鏡というらしいそれは、やはり特徴的なようだ。


 母の形容が出てこないのは、母は旅を共にしていないから。


 そ、それは。


 桃には、彼の問いを否定も肯定も出来なかった。


 成人の旅は、世間には一応隠されて行われている。


 でなければ、旅路の危険が増すからだ。


 どう答えようか。


 桃が一瞬悩んでいたら。


「止まって! 止まって!」


 コーが、身を乗り出して木を指差す。


 話に夢中で──行き過ぎるところだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ