表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/329

運命

「素晴らしい演説でした」


 男の話が終わり、広場は村の素朴な楽隊の演奏が始まった。


 料理や果物がふるまわれ、踊り出すものもいる。


 ハレがそう声をかけると、男は驚いた顔をした。


「あなた方のような旅人が通るのは、これで三組目です」


 そして、残念そうに笑うのだ。


「もしやと思って鼻を効かすのですが、やはりまだ20年では実はなりませんね」


 ああ。


 彼は、テルとオリフレアの一行のことを言っているのだろう。


 その度に、男は匂いを嗅ぎに行ったのか。


 それほどに、昔のことが忘れられないのだ。


「太陽の木……らしきものを見ましたよ」


 あの木の場所から町までの距離、そして男の話を噛み合わせると、つじつまが合う。


 昨日、コーは一生懸命木の側で歌い続けた。


 早く実れ実れと。


 彼女も、食べたくてしょうがなかったのだろう。


 だが、残念ながら一夜で実らせる奇跡は起きなかった。


「本当ですか!? そ、それはどこに!」


 ハレの言葉に、鋭く食いついたのは男だった。


「是非、是非教えてください! あの実の新鮮さ具合から、そう遠くないとは思っていたのです! この町の近くなのですか!?」


 興奮しているのか、ハレの腕を掴んですごい力で前後に揺すられる。


 悪意がないのは分かっているが、さすがのリリューが止めに入るほど、大きく視界が揺らされてしまった。


 教えてやりたいのは、やまやまだ。


 しかし、旅の途中、気軽に戻るわけにもいかず。


 そしてもうひとつ、決められた二人の男以外と同行してはならない制約にひっかかる。


 どうかして、この男の望みを叶えてやりたいものだと思案を巡らせていると。


「あの……私がさっと行って教えるのなら、大丈夫ですか?」


 おそるおそる、モモが言葉を挟んできた。


「目印に、木に紐を巻いてきたので……分かると思います」


 ああ。


 運命だったのか。


 ハレは、思った。


 この男は、今日──あの木に出会う運命だったのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ