表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/329

そうかもしれん

「この国広しとは言えど……イデアメリトスの命を奪った人間は、生きている中ではお前たちだけかもしれんぞ」


 そんなテルの暗いジョークは、エンチェルクを明るくすることはなかった。


 反逆者とは言え、イデアメリトスを殺したのだ。


 とどめを、テルは彼女に申しつけた。


 日本刀の方が、その仕事に向いている──それだけだったのかもしれない。


 だが、今更ながらに彼女は、その事実の大きさを噛みしめていたのだ。


「いえ……それはないのでは」


 ビッテは、エンチェルクほどの衝撃はないのか。


 テルのジョークに、反論している。


 他にも、イデアメリトスを殺した人間がいるというのだろうか。


「ああ、父上の兄か。確かに、伯父を殺した者は、まだ生きているかもしれんな……英雄扱いで」


 そうだ。


 現太陽には、兄がいて。


 そして、旅を失敗したのだ。


 殺した者が英雄扱いということは、月の人間に殺されたのだろうか。


「そういえば……」


 テルが何かを言いかけて、ふと、止まった。


 その止まり方が、何か大きな衝撃を受けたもののように見えて、エンチェルクは怪訝に思った。


 突然。


「ああ、そうか……そうか、それなら面白い」


 テルが、大笑いを始めた。


 夜空に向けて身体をのけぞらせるように、全身で笑い出す。


 叔母の死で、あのテルがおかしくなったのではないかと心配するほど。


 だが。


 そんなタマでは、なかった。


 テルという男は、そんな柔らかい男ではなかったのだ。


「でかしたぞビッテ……そうかもしれん。それが一番しっくりくる」


 何かに、気づいた。


 それだけは、エンチェルクにも分かったが。


 テルの考えることは、彼女の想像では──とても追いつくことは出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ