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異世界転生という次の人生に迷ったらⅡ@異世界転生の女神・アンナ

掲載日:2026/08/01

この作品には 〔15歳未満の方の閲覧にふさわしくない表現〕が含まれています。苦手な方はご注意ください。


(この小説は挿絵機能を使用しています。挿絵が苦手な方はお手数ですが挿絵機能をOFFにしてから御覧くださいませ)


どうぞよろしくお願いいたします。





 私の名はゴッデス・アンナ。


 ゴッデスというのは、英語で『goddess』と書いて女神のこと。


 なので、ゴッデスは苗字ではなくて肩書みたいなものかしら。


挿絵(By みてみん)


 異世界転生の女神、アンナです。よろしく。



 大きなテーブルを挟んで正面に立っている一人の男にそう言った。


「女神様?」


 男は、今の状況を全く理解していないようだ。


 ここがどこで何故自分がここにいるのか、そして何故女神がここにいるのか。



 女神と名乗った女性は、いかにも本や絵画に出てくる女神的な白いワンピースを着ている。


 顔だちは美人顔で、二十代半ばくらいに見える。


 ただ、女神と言うからには年齢などその百倍、千倍は超えているのかもしれない。


 そして、金髪で細身のグラマラスな女神の体ほどあろう大きな翼が背中から生えており、神々しく神秘的な雰囲気が漂っている。


 女神が座る椅子の左右にはランタン台があり、その上にランタンのような明かりが置かれている。明かりはその二か所だけであるが、強い光を放っていて二人をしっかりと照らしているので明るく感じる。


 床は大理石のような石が敷かれ、柱はギリシャの遺跡で見るような神殿の柱が何本も立っている。


 奥の方まではランタンの光が届いていないので壁と天井は真っ黒で、どのようになっているのかまでは分からない。



 アンナは手元のファイルを見ながらそれを読み上げるように、男に向かって淡々と話す。


「前田敏文、二十五歳、千葉県出身で同市で一人暮らし、独身、両親は十五歳の時に他界、友達はいないが手下が何人もいる。粗暴で犯罪も平気でできるネジが外れた人間。女性達にホストクラブで借金を作らせ、売春で稼がせて手数料と称して金品を巻き上げていたようですね。現在、強盗殺人を犯して刑務所に服役中」


 敏文はアンナの話を切って凄んで言う。


「そんな事より、ここはどこなんだよ? なんで俺はこんな所にいるんだ? もしかして刑務所から出たのか? だったら、また楽しい事しに行かないとなぁ。へへっ」


 アンナは、少し怒って言う。


「ここは異世界転生の神殿。そして私はその異世界転生を司る女神。国によっては閻魔様って呼ばれたりもするけれど」

「は?」



 ――敏文はこの異世界転生の神殿に来るまでの記憶を遡った。



 ・‥…――☆・‥…――☆・‥…――☆



 そうだ。今、俺は刑務所で服役中だ。


 金が欲しくてちょっと宝石店で強盗をしてみたんだが、いきなり警官が押しかけて来た。


「警察呼んだら殺すぞ! 嘘じゃねぇからな!」


 事前に店員に凄んでそう言っていたにも関わらずだ。


 てっきり店員が非常通報かなんかで知らせたんだと思った。


 なので、言うことを聞かなかったことと警官にびっくりしたこと、そして何より強盗に失敗したことで店員をそのまま刺し殺してしまった。


 後から聞いた話だが、巡回中の警官がたまたま立ち寄っただけだったらしい。


 だが、店員には申し訳ないという気持ちはない。


 どうせ仕事中に死んだのだから、殉職とは言わないのかもしれないが、労災とか保険とかきっちり出るだろう。


 その対価は貰えるんだからな。


 支払われる金額が少なかったりするのは俺のせいじゃない。


 役所や保険会社のせいだからな。それに対して俺に文句を言うのは筋違いだ。


 そして、巡回中で何も考えずに中に入ってきた警官共が軽率だっただけだ。


 例えるなら、突然クマに出くわして何とかやり過ごそうとしている人間に、誰かがクマを刺激して襲わせたようなものだからだ。


 当然、俺はその場で警官に現行犯逮捕され、刑務所暮らしになったというわけだ。


 ある日、俺は独房で便器に腰かけようとしたが、座った記憶がない。


 気が付いたらここにいたのだ。



 ☆――…‥・☆――…‥・☆――…‥・



(――もしかして……)


 敏文は嫌な予感がした。



「そう、あなたは便座が上がっていることに気が付かず、便器に座って慌てて立ち上がったのです。その時、滑って転んで便器に頭をぶつけ、現在意識不明の重体です」

「そういえば、あの時は尻がすっぽりハマって慌てて立ち上がった気がする……」

「まだ死んでいませんが、魂が抜けているのでいつ死んでもおかしくありません」

「まぁ、ここに神様がいるって事は、死んだら地獄とか天国とか行くんだろう?」


 アンナはファイルを見て敏文に言う。


「そうですね。生前の行いで行き先が決まるので、あなたはまず地獄行き確定ですね。でも、元の世界にあるあなたの肉体は、頭にたんこぶがあるくらい。傷はたいしたことありません。魂を戻せばすぐにでも今まで通りの生活ができるでしょう」

「戻っても刑務所暮らしだからなぁ」


 敏文は刑務所が面白くなく、出所したら好きな事をするくらいしか考えていない。


「今回は打ち所が悪かっただけで、運の悪い事故でした。予期せぬ出来事による死亡が確認された場合、今後の人生の選択が可能になることが神のマニュアルによって定められています」


 そう言って、敏文に問いかける。


「異世界転生して人生を一からやり直すか、元の世界に戻ってあの体で人生を続けるか、選んでください。あなたの次の人生の希望を叶えましょう」

「へぇ、これが刑務所で読んだ漫画に載ってた異世界転生ってやつか……それも面白そうだな」


 すると、アンナは敏文に淡々と言う。


「それでは、七十二時間の猶予を与えます。じっくりと今までの人生を振り返ってよく考えなさい」

「七十二時間……三日?」

「七十二時間の壁、簡単に言うとそれが人命救助のタイムリミットです。それまでに答えを出してください」


 アンナはパタンとファイルを閉じた。


「は? 異世界に釈放されるようなもんだぜ? そんなもん転生に決まってるだろう。誰が好き好んで刑務所に戻るかよ」


 敏文は、ヘラヘラ笑いながらそう言った。


「で、どんな世界に釈放なんだよ? ゲームみたいに絶対死なない無敵の勇者みたいなカッコいいのにしてくれ。そして、魔王を倒して財宝をガッポガッポな人生な」


 敏文がアンナに詰め寄る。


「わ、分かりました。希望を叶えましょう。次の世界では絶対死なない勇者となり魔王を倒す使命が与えられます」


 異世界転生の女神アンナの力で敏文は、望み通り異世界へと旅立っていった。


 これによって人間世界では、『受刑者前田敏文は、刑務所において独房内の便器に頭をぶつけて死亡した』と報告された。



「ちょっと、なんなの! あの態度! 私は女神様よ! っていうか、なんであんな奴に第二の人生とか与えないといけないわけ?」


 アンナは、納得できない様子で後ろに控えている従者のカロンに言った。


「アンナ様、これも仕事ですから。『予期せぬ事故死には転生を検討させること』と神のマニュアルに記載されていますので……」


 カロンはなだめて言ったが、アンナの気持ちはなかなか収まらないようだ。


「今夜もお酒が旨くなりそうだわ。カロン、仕事終わったら付き合いなさい。私の奢りよ」

「やれやれ、また愚痴酒ですか? 呑むのもほどほどになさってください」


 そう言って、やれやれという感じでカロンは居酒屋に予約を入れた。


 カロンは、自分が好きな高級酒をこっそり付けてもらうように店員に伝えておいた。



  ☆ ☆



 敏文が気が付くとそこは石造りの豪華な城だった。


 赤いカーペットが敷かれ、その先は数段の階段があり、その上に玉座がある。


 そして、その玉座にはこの国の王と思われる初老の男が座っていた。


 王の間には他にも重臣達が集っている。


 煌びやかな貴族の服を着た大臣のような男達、戦争には不向きなくらい豪華な鎧を着た将軍のような男達、彼らは国の重鎮であることが見てわかる。


「よくぞ来てくれた。勇者敏文よ。余はロマニア国の国王である。我が国は、魔王の国から長い年月攻められおり、戦いの日々が続いておる。国は疲弊し産業も衰退し国民も貧しくなる一方だ」


 テンプレートのような始まりの成り行きに、敏文は笑いを堪えている。


「そなたには魔王討伐の勅命を与える。この国を魔王の侵攻から救ってくれ」


 国王は敏文にそう言った。


(王宮を見ている限り、かなり潤っているように見えるぞ。これで貧しいなら、魔王を撃退すればもっと贅沢な暮らしができるな)


 敏文はそう考え、国王の勅命をありがたく頂戴する。


「わかった。俺に任せてくれ」

「これは支度金だ。城下町で装備を整えて旅に出るとよい」


 そう言って、巾着袋に入った百ゴールドを渡した。


(うーん、百ゴールドってどれくらいの値打ちがあるんだ? 相場がわからねぇ……)


 敏文はそう思いながら城を出て装備を買うために城下町に行った。



「ようこそ、ここはロマニア城下町だよ」

「なぁ、兄ちゃん、武器屋はどこだ?」

「その角を右に曲がったところだよ」


 庶民はそう言って武器屋の方を指さした。


 敏文は、庶民の言った方に歩いて行くと、武器屋の看板が見えた。


 中には古今東西の武器防具が所狭しと並べられている。


「へぇ、こいつはすげぇな。おやじ、これとこれでいくらだ?」


 敏文は大きな刀と豪華な装飾の付いた鎧を指さした。


「ドラゴンキラー、一万二千ゴールド。騎士の鎧、八千ゴールドだ」


 合計二万ゴールドになる。


 二百倍ほど足りないではないか。


「あの国王、舐めてんのか? たった百ゴールドで何が支度金だ!」

「お客さん、百ゴールドなら棍棒と皮の胸当てで百十ゴールドだけど、百ゴールドに負けてやるからどうだ?」

「棍棒と皮の胸当てで魔王が倒せると思ってんのか? ふざけるのも大概にしろ!」


 敏文は何も買わずに店を出て行った。


 しばらく町をうろついて裏路地に入ると、玄関が開いている民家がある。


 敏文は無断で中に入っていった。


「やぁ、こんにちは。今日はいい天気だね。こんな晴れた日は東の山脈の霧も晴れて祠が現れるんだよ」

「そうか。分かった」


 いかにもな街の住人は、話の中で次に行くべき所のヒントをくれる。


 しかし、見ず知らずの男が勝手に家に上がり込んで来ているのだから、まず言うべき事が違うのではないだろうか。


「だいたいこういう所には……」


 敏文は、そう言って大きな壺や本箱を物色する。すると、五百ゴールドと薬草を四つ手に入れた。


「転生前の所業と勇者のスキルを合わせれば、ざっとこんなもんだぜ」


 さっさと民家を出て、その隣の民家に土足で上がり込んで壺や本棚を物色する。今度は、二百ゴールドを見つけた。


 そのまま長い廊下を抜けて奥の扉を開けると、そこは先ほどの武器屋のカウンターの中に続いていた。


 店におやじはいないようだ。


 敏文はカウンター下の宝箱を見つけ、引っ張り出すと強引にこじ開けた。


 中には重厚な鎧と剣が入っている。


 これらは一目見れば分かる。扱う者を選ぶ超一級品である。


 宝箱の底に説明書と保証書が入っていた。


 説明書には、『勇者の剣と鎧セット(魔王戦最終版)、十五万四千ゴールド(税別)、勇者がこの剣と鎧を装備すると魔王と互角の力を発揮できる』と書かれている。


 敏文はその説明書を読んでニヤリと笑った。


「ふん、俺は勇者なんだから、これは俺の物だ。返してもらうぜ」


 敏文は、勇者の鎧と剣を手に入れた。



 ――それから二か月。



 敏文は、ロールプレイングゲームのようなこの異世界で勇者として誠実に生きている。


 前世と同じく、暴力によって金品を奪ったり盗んだり、女を手にしたりすることは変わらない。


 つまり、街を出て野山を歩いて魔物を倒しては金品を奪う。


 時には、レアなアイテム目当てに魔物の大量殺戮をする。


 そして、村や町の民家を物色しては隠されたアイテムや金品を得る。


 手向かう人間はおらず、むしろ情報提供してくれるお人好しぶりである。


 敏文が前世にいた頃も、カツアゲされてニコニコしているような奴もいたが、この世界はその比ではない。


 まぁ、どのゲームでも一般人のテンプレートはこんなものだろう。


 こうして得られた金は百万ゴールドを超え、毎晩豪華な宿屋に泊まり、高級居酒屋で豪遊とぱふぱふを繰り返し、敏文は異世界生活を満喫していた。


 もちろん金のある所には女も寄ってくる。勇者ハーレムと言われる成果も得られた。



 そして、今日も魔物の金品を奪いにゆく。


 そこに現れたのは、いつものゴーレムだ。


 倒すと高く売れる鉱石をドロップしてくれる金づるだ。


 敏文は、勇者の剣を振り回して次々とゴーレムを倒してゆく。


 今日も大漁の収穫だった。


 MPも使い果たし、HPも半分くらいになったので、そろそろ引き時だと思った時、ふと敏文の周りの地面に影が現れた。


 空を見上げると、巨大な翼竜が飛んでいる。


「しまった! ゴーレムを深追いしすぎた。翼竜のエリアに来てしまったか……」


 そう思ったが時すでに遅く、万全でない敏文は翼竜には勝てずに倒されてしまった。



 ……


 ……


(ああ、敏文よ、死んでしまうとは何たることだ。今一度チャンスをやろう)


 どこからともなく声がする。敏文が気が付くと、そこは教会の中だった。


 そう、このロールプレイングゲームのような異世界では死んでも復活する事ができる。


 ただし、手持ちのゴールドが半分になってしまうというリスクがある。


 しかし敏文は、手持ちのゴールドを常に最低限にしており、ほとんどを銀行に預けている。


 そのため手持ちのゴールドを半分失っても痛くはない。


「くそ! 手持ちの金より奪った鉱石を持ち帰れなかった方が痛い!」


 敏文は、教会の椅子を蹴り飛ばして出て行った。



  ☆ ☆



 敏文は、戦いに明け暮れた後、ついに魔王の城までたどり着いた。


 そして、一気に玉座まで攻め進んだ。


 そこには魔王がただ一人座っている。


「勇者敏文よ、よくぞここまでたどり着いた。余が魔王リュウキであるぞ」

「魔王のお出ましか。ロマニア国への侵攻はここまでだぜ」


 敏文は、ほぼ建前のセリフを魔王に吐く。


 本音は魔王城の財宝目当てである。


 魔王城の宝物庫には伝説のアイテムが数多く眠っているのだ。


 敏文は、期待に胸を躍らせて勇者の剣を抜いて構える。


 すると、魔王が玉座から立ち上がって敏文に言う。


「ロマニア国は勇者のお前がいなければ、余に滅ぼされるだろう。だが余が滅ぼさずとも、城で毎日贅を尽くしている国王達は自ら滅びるだろう」


 さらに魔王は敏文に言う。


「お前は、ロマニア国王からいくら貰ってこの仕事を引き受けた?」

「……百ゴールド」

「余と手を組め。そうすれば世界の半分をやろうではないか。ロマニア国は、お前が滅ぼして治めればよい」


(まぁ、国王から報酬をたんまり貰えるだろうからな。同盟を結んで魔王を退かせた方が簡単だな)


 敏文は、剣を鞘に戻した。


「いいだろう。魔王リュウキ、軍を退け。同盟を結んでやる。二度とロマニア国へ侵攻するな」


 敏文はそう言って、魔王城を後にした。



  ☆ ☆



 ――ロマニア国の王の間にて。


「おお! 勇者敏文よ! よくぞ魔王軍を退かせてくれた。これでこの国も平和になるだろう」


 国王が敏文の功績を称えて喜んだ。


「国民がその功績を末代まで称えられるよう、勇者の銅像を王城の門前に建ててやろう。これで国民は余と勇者を同時に拝むことができるぞ」


 国王が満足気に言った。


 続いて大臣が言う。


「これで勇者殿も王都の外れにある生家に戻り、元の生活に戻れるでしょう。本当にご苦労でしたな。そうそう、勇者としてご不在であった期間、税金を支払われておりませんので、早急に納税のほどを」

「は?」


 続いて将軍が言う。


「勇者殿、その勇者の剣と鎧は王国博物館で展示することにした。ここに置いて行かれよ。ちなみに、王国博物館の入場料は二十ゴールドだが、勇者殿には特別価格で半額の十ゴールドで入れるようにするつもりだ」

「は?」


 敏文が思い返すと、国王から魔王討伐に行ってこいと言われて百ゴールドを貰っただけだ。


 この国王は、その後の事など何も話していない。


 これでは魔王と戦う必要がなくなった敏文は、無職になるだけである。


 敏文は、勇者の剣を抜いて国王に向ける。


「いいだろう。今から俺が本当にこの国を救ってやろう。貰った支度金の百ゴールドは前金だ。残りの成功報酬としてこの国を貰っておくぜ」



 ――こうして国王や重鎮達は勇者の剣の錆となり、ロマニア国は敏文が君臨する新生ロマニア王国として生まれ変わった。


 そして、敏文は王国を得て間もなく、魔王との同盟を破棄して魔王の国と戦争を始めた。



 敏文は、一気に魔王の玉座まで攻め込んだ。


「くっ! まさかお前が裏切ってここまで攻め込んでくるとはな」


 同盟破棄をしてからの敏文の速攻に、魔王は成す術がなかった。


「しばらくぶりだな魔王! やっぱり世界を半分ずつじゃだめだ。争いのない世界を作りたければ世界を一つにして支配する方がいいぜ」


 そう言って、敏文は魔王の首を刎ねた。


「お、おのれ! あの時、お前と戦って始末しておけば……」



 ……


 ……


(ああ、魔王リュウキよ、死んでしまうとは何たることだ。今一度チャンスをやろう)


 どこからともなく声がする。魔王が気が付くと、そこは魔法陣の中だった。


 そう、このロールプレイングゲームのような異世界では死んでも復活する事ができる。


 ただし、手持ちのゴールドが半分になってしまうというリスクがある。


 しかし魔王は、手持ちのゴールドを常に最低限にしており、ほとんどを宝石やレアアイテムの購入に当てて宝物庫に保管している。


 そのため手持ちのゴールドを半分失っても痛くはない。


「くそ! 手持ちの金より呪いの魔剣を勇者に奪われた方が痛い!」


 魔王は、魔法陣を叩き壊して出て行った。



 こうして、ロマニア国王の勇者敏文と魔王リュウキは一進一退の戦いを繰り返し、永遠に終わる事のない戦いに明け暮れているのであった。



  ☆ ☆



「ちなみに魔王リュウキも転生者です。彼は柴田隆樹という指名手配犯で、銀行強盗をして山へ逃亡した時、マムシに咬まれて落命したのです。彼もまた予期せぬ事故死だったのでここへ来たのですが、第二の人生を魔王になって世界征服をすることを選んだのです」


 異世界転生の女神アンナは、次に来た女子高生の転生者の前で勇者と魔王の話を終えた。


「彼らの転生先は、魔王を倒す勇者の世界であり、世界征服をする魔王の世界でもあります。常に戦い続け、死ぬことすら許されない戦いだけの世界。六道輪廻では修羅道とも言うのです」

「そ、そんな……。夢見てた異世界ファンタジーが……」


挿絵(By みてみん)


 女子高生が絶望するような顔でアンナを見た。


「魔王と勇者のいる異世界とはそういう世界のこと。地獄や戦争に何を求めて転生していくのかは人それぞれだけど、あなたも第二の人生はしっかり考えた方がいいわよ」


 そして、アンナは女子高生に転生先の希望を聞いた。


 女子高生が即答できずに困っているようだ。


「それでは、七十二時間の猶予を与えます。じっくりと今までの人生を振り返ってよく考えなさい」

「七十二時間……三日?」

「七十二時間の壁、簡単に言うとそれが人命救助のタイムリミットです。それまでに答えを出してください」


 アンナはパタンとファイルを閉じた。


「カロン、彼女をテラスに案内しなさい。そこでゆっくり考えてもらいます。それから、コーヒーとケーキも出してあげなさい」

「かしこまりました」

「ふふ。さて、今日は久々に定時上がりができそうね」


 仕事を終えたアンナは、カロンと居酒屋へ行く準備をはじめた。





最後まで読んでくださってありがとうございました。


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