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2日目

『グリーン・ルーフ・イン』のロビー(と我々が呼んでいる待合室)に立つと、現代社会のテクノロジーがいかに人間のモラルを曖昧にしているかがよくわかる。


かつて、泥棒といえば覆面を被り、深夜の店舗に忍び込むか、あるいは商品をコートの内側に隠して逃げる者のことを指した。しかし、現代の大型スーパーマーケットに「セルフレジ」というシステムが導入されて以来、この施設には全く新しいタイプの顧客がチェックインしてくるようになった。




「うっかりスキャンし忘れただけだ」




と主張する、自称・善良な市民たちだ。





本日のシフトで私の前に立たされたのは、グレアムという42歳の男だった 。



彼は軍隊を引退したばかりの元軍人で 、過去には13年間も日本の南部に駐留していたという誇り高い経歴を持っていた 。鍛え上げられた体格の持ち主だが、今は両手を後ろ手に回され、手首に食い込む冷たい金属の感触にひどく苛立っている様子だった。



彼がここに連行されてきた容疑は、被害総額1000ドル未満の軽窃盗ペティ・セフトだ 。





「俺はただ、妻のために夕食を作ってやろうと家に帰る途中だったんだぞ」 。





グレアムは受付のカウンター越しに、不満に満ちた声で事の顛末を語り始めた。彼の主張によれば、事件は地元の大型スーパーマーケットで起きた。


彼はカートいっぱいの食料品をセルフレジに運び、全ての商品をカウンターに置き、一つ一つスキャンしていったという 。






「全部ちゃんとやったはずだ。だが、店の隅っこに隠れてジッと様子をうかがっているような陰湿な連中がいてな。俺が出口のゲートに向かった途端、そいつらがしゃしゃり出てきて『お客さん、いくつかスキャンし忘れてますよ』なんて抜かしやがったんだ」 。





警備員の指摘によれば、彼は5つの商品のスキャンを完全に「スルー」していたらしい 。しかしグレアムは、それが故意の窃盗であるという嫌疑を頑なに否定し、怒りを露わにした。





「よく考えてもみろ。俺の食料品の会計は全部で600ドルだったんだぞ。クレジットカードで何の問題もなく決済されている」



。「600ドルもきちんと払える人間が、どうしてわざわざ数点の商品を盗もうなんて馬鹿な真似をするんだ?」 。





彼の言い分は、この施設で働く者なら耳にタコができるほど聞かされてきた典型的な『セルフレジの弁明』だった。





確かに、600ドルもの大金を払う人間が数ドルの肉やチーズを盗むのは不合理に思えるかもしれない。だが、人間の心理とは奇妙なもので、「これだけたくさん買ってお金を払うのだから、少しくらい紛れ込ませてもバレないだろう(あるいは、許されるだろう)」という歪んだ免罪符を勝手に発行してしまう者が後を絶たないのだ。

それが意図的な万引きであれ、本当に機械の操作ミスであったとしても、ゲートを越えて未精算の商品を持ち出そうとした時点で、法的な扱いは同じになる。





職員たちが淡々と書類の手続きを進め、彼に

「決して弁明を聞き入れるつもりがない」という冷酷な事実が伝わり始めた頃、

グレアムは戦術を変えた。軍人としての威厳や論理的な反論が通用しないと悟った顧客が次に切るカードは、決まって「健康状態の深刻さ」だ。






「いいか、俺は家に帰るべきなんだ。こんな所にいちゃいけない人間なんだぞ」 。





彼は突然、声のトーンを落とし、切羽詰まったように訴え始めた。




「俺は多発性硬化症(MS)を患っているんだ」






「おまけに、脳には42個もの病変がある」






彼は自分の足元を指差し、職員たちを睨みつけた。




「今はこうして何とか立っているがな、俺の体がギブアップしてこの床に倒れ込むまで、そう長くはかからないぞ」





「私が倒れたら、お前たちの責任問題になるぞ」という暗黙の脅しである。






しかし、ここはグリーン・ルーフ・インだ。






外の世界の肩書きも、言い訳も、そして個人的な悲劇でさえも、ここでは一切の効力を持たない。

末期ガンを宣告された者であろうと、今にも倒れそうな難病患者であろうと、我々はただマニュアルに従って車椅子を用意するか、医療スタッフを呼ぶだけであり、チェックインのプロセス自体を免除することはない。







「分かりました、グレアムさん。お体の具合は医療記録に記載しておきます。それでは、壁に向かって両手をあき、足を広げてください」








職員の無機質な指示に従い、グレアムは渋々と壁に手をついた。彼の誇り高き軍歴も、600ドルのレシートも、彼をこの屈辱から救い出してはくれなかった。

彼はその後、緑色のセンサーに指を押し当てて指紋を採取され、赤い足跡のマークの上に立って、怒りと疲労が入り混じった顔つきでマグショット(逮捕写真)のフラッシュを浴びた。





今夜、彼が妻のために温かい夕食を振る舞うことはない 。



代わりに彼に与えられるのは、ひどく着心地の悪いオレンジ色のユニフォームと、薄っぺらいマットレス、そして味が全くしない冷めたサンドイッチだけだ。




セルフレジの機械は時としてエラーを起こすかもしれない。だが、このグリーン・ルーフ・インの分厚い扉だけは、決してエラーを見逃さず、来る者すべてを平等に飲み込んでいくのだ。



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