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ペケポンの崩壊

女は解放されたが、警察からの事情聴取で忙しそうだった。

俺の踏み込んだ事件のあと、ペケポン社員の薬物問題が発覚し、粉飾決算も明るみになった。

恐らく上場廃止案件だろうと、だれかが言っていた。

俺の女たちは、今回の騒ぎで相当儲けたらしい。

口には出さないが、プレゼントがあると言っていた。


まぁ女たちは損しなかったなら、それでいい。


俺はペケポンCEOの邸宅の前にいた。

一連の仕事を始める前、俺は呪いの指輪をペケポンCEOの邸宅に投げ込んでいた。

あの呪いの指輪が効いたのか。

CEOの邸宅はドロドロとした雰囲気に包まれていた。


もう終わったんだなと思っていると、俺は突然数人の男に連行された。


連れていかれたのは、雑居ビルの一室。

そこには見慣れた男がいた。

ペケポンのCEOと汚笑怒翔怪のナンバーワンだ。


「もう終わったよ。最後に君の顔が見たくてね。御足労いただいた。みんなサーッと逃げて行った。あんなに世話をしたし、金もばらまいたのに」

ペケポンのCEOは言った。


「俺は最近ドライアイ気味だが、お前は愛が乾いた深刻なドライ愛だな」

俺は言った。


「愛が乾いて、ドライ愛か……。まったく持ってその通り、愛はカラカラに干からびているよ」

ペケポンのCEOは言った。


「顔を見たらわかる。幸せそうじゃねぇもんな」

俺は言った。


「お前みたいなホスト崩れがペケポンを崩壊に導くとはな……。

ペケポンはな。昔下町で人気のラーメン店だったんだ。

親父が屋台から初めてな。

俺が2代目。

ラーメン屋のせがれにしては、俺は割と頭が良かった。

周りの連中に、お前ならこのラーメン屋を世界的チェーン店にできるってな。

おだてられた。

親父が倒れてな。レシピと店を引き継いだ。

そして借金もな。店の借金じゃないぜ。親父の個人的な博打の借金だ。

借金の返済のために、俺たちは懸命に働いた。

でも返せない。

だからどんどん規模を大きくした。

店の売上は順調に増えたよ。

でもな。

借金もどんどん増えた。

そして社員もどんどん増え。

こんな巨体になってしまった。

ラーメン事業だけでは収益が足りなくって、また借金をして次々と

他の企業を買収した。

そしたらな。

何が起きたかわかるか?

闇とのつながりだよ。

闇とつながって、どんどん収益は増えた。

俺は何度も思った。

なんで親父の店を捨てなかったんだろう。

店を引き継がなかったら、こんな目に合わなかったのに。

弟も壊さなくて済んだのに。

そう思った。

弟は喧嘩は強いがアホでな。

裏部隊をやらせるのにはちょうど良かった。

でもな。

どんどん壊れていった。

本当は優しい奴なんだ。

見る影もないけどな。

なんなんだろうな。

他人の欲望のために成長させれられて。

他人の欲望のために潰される。

この株式市場ってのは悪魔が住んでいるのかい?

なぁ教えてくれよ」

ペケポンのCEOは言った。



「こういう時、欲をかきすぎたな。というのがテンプレなんだろうが……。

一応言っておく。欲をかきすぎたな。

でもな。欲をかきすぎたというより、恥をかくのを恐れすぎたな。

というのが正解なんじゃねぇか。

人は恥をかくのを恐れる。特に日本人はな。

恥を極端に恐れる。

村社会だしな。

だからな、人と違う事を恐れるんだ。

でもな。成功する奴って言うのは、たいがい恥を恐れない奴なんだ。

いわゆる羞恥プレイで興奮する。

そういうどエム体質だけが成功するだよ。

お前はどエムじゃなかった。

だから耐えられなかった。

それだけだ。恥じる事はない。

どエムは神に選ばれたチート能力だからな」

俺は言った。



「ふっ。普通に考えたら、頭がおかしいセリフだが。

なんだがお前が言うと、やけに説得力があるな。

どエムか。俺もどエムになれるかな……」

ペケポンCEOは言った。


「どエムになれるかって?

そいつはわからねぇ。でもな。ムショにいる自分に徐々に興奮したり、新聞から責められる自分が妙に興奮してきたら、その素養が芽生えたってことだ。

まぁせいぜい。興奮しておきなよ」

俺はそう答えた。


俺はふと汚笑怒翔怪のナンバーワンを見た。

ありえないほど発達した僧帽筋に、分厚い上半身。

その体を震わせている。

怯えた子犬のようだった。

ふと指を見ると、俺が投げ入れた指輪を身に着けていた。


「なんかスゲー指輪してるな」

俺は言った。


「あぁこれか。これは拾った奴なんだ。カッコいいからな。つけてたが、質屋にでも売ろうと思う」

汚笑怒翔怪のナンバーワンは言った。


「どこのだ」

俺は言った。


「繁華街の外れにある」

汚笑怒翔怪のナンバーワンは言った。


「〇〇〇か」

俺は言った。


「よく知ってるな。昔から断捨離のたびにあそこを使うんだ」

汚笑怒翔怪のナンバーワンは言った。


「あぁそうか」

俺は言った。


そうか。こうやって、またあの指輪は戻るんだな。

俺はなんとも言えない不思議な気分になった。


「お前、ありがとうな」

汚笑怒翔怪のナンバーワンは言った。


「なんでだ」

俺は言った。


「俺たちを止めてくれた」

汚笑怒翔怪のナンバーワンは言った。


「止まりたかったのか」

俺は言った。


「どうなんだろうな。よくわからねぇ、でも兄さんと今こうしていて。すごく幸せなんだ」

汚笑怒翔怪のナンバーワンは言った。


「私もだ」

ペケポンCEOは言った。


……

こうして俺は日常に戻った。

今週の予定はこうだ。


月曜日……証券会社の女と会ってた。

火曜日……キャバクラの女と会ってた。

水曜日……老舗旅館の娘と会ってた。

木曜日……エステサロンの経営者の女と会ってた。

金曜日……投資会社経営の女と会ってた。

土曜日……新聞社勤務の女と会ってた。

日曜日……女に服を買ってもらってた。


みんな。

俺にたんまり小遣いをくれた。

いつもなら、すぐにパチスロにつぎ込んでいたところだけど。

さすがに軍資金を溶かしたことで、パチスロには飽きた。

代わりにインデックスファンドとやらに投資し始めた。

投資会社の女も、証券会社の女も、これなら市場平均いくから、確実よ。

と太鼓判を押してくれた。

興奮はないけど、興奮なんて女だけで十分だ。

俺はそう思った。


「クズっぷりが薄くなるわね」

投資会社の女は言った。


「たしかにな。でも多少堅実なクズも悪くねぇだろ」

俺は言った。


「もちろんよ」

投資会社の女は笑った。


俺の人生も、俺の女も最高じゃねぇか。

そしてあんたの人生もな。最高だと思うぞ。

俺はな……。


なぜって?


俺はな……

クズのまま、幸せになると決めたからだ。


END

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この作品は完結していますが、

反響があれば続編を書く可能性があります。

ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。


■坂本クリア作品

異世界・現代・コメディなど様々な物語を書いています。

次に読む作品はこちらから探せます。


坂本クリアの小説まとめ|全作リンク集

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2898515/blogkey/3591538/


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