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ヒモの矜持

俺が動き出してから二週間が過ぎた。

空売りを仕掛けた筋がいるのか、

ペケポンの株価はどんどん下がっている。


ただ下がると拾う筋いて、

思うように直滑降にはならないのが、株式市場だ。


ここで不正の証拠を出し、終了の花火を打ち上げなければならない。


ではどうする?

ここは命を張って、彼女を救いに行くか。


俺は風呂に入り、髪を整え、ホスト時代に着ていたスーツに身を包んだ。


そして、警察に一報した。

「自分がこれから彼女を助けに行く。

中には刃物を持った連中がいる可能性がある」


こう通報されれば、警察は

放置すると重大事件につながるため必ず動く。


そして俺はマイクを購入しスマホにつけ、

アジトに乗り込む前に警察と連絡をつなぐ。

不正の証拠になるかもしれないからと言って。


もちろん危険だからやめなさいと言われたさ。

でも俺の大事な女をこれ以上危険な目には合わせられないと、

断わった。


俺は入口の奴に言った。

「中に入れろ」

と少々渋ったが、

「お前が責任とれるのか?足の一本や二本で済ませされねえぞ」

と言ったら、中に通した。


中には汚笑怒翔怪のナンバーツーらしき男がいた。


「お前は汚笑怒翔怪のナンバーツーか」

と俺は言った。


「そうだ。お前は誰だ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「お前らが拉致している女のヒモだよ」

と俺は言った。


「ヒモだって。ははははは。笑わせやがる。自信満々にいうなよ。このクズが」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「ヒモになれる男はな。

それだけの魅力がなければならない。

そして女を満足させ続けなければならない。

お前のいうのはたんなるひがみだ」

と俺は言った。


「ゲスが」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「あぁゲスだ。

そんな事、ずっと前から自覚している。

ただそれがどうしたって言うんだ」

と俺は言った。


「よし。こいつボコってやろうぜ。ボコってやれば少しは態度も変わるってもんよ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「ふん、甘いな。俺の身体を見ろ。ステロイドチートのお前らよりは体は小さい。でもな。これは痛みに耐え抜いた証なんだ」

と俺は言った。


「それがどうした。結果だろ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「バカだな。痛みがあるのに、こんだけ鍛えてるってことは、それは俺がどエムであることを示しているんだ」

と俺は言った。


「ははははは。なんだそれギャグか」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「お前らが得意なのは、苦痛で相手を従わせること。それは相手が苦痛を嫌がるばあいに限る。俺はな。真逆なんだよ」

と俺は言った。


「じゃあ兄貴。あいつに暴力は通用しないってことなんじゃ」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


「お前頭がいいな。モテるようになるぜ」

と俺は言った。


「それがどうした。ボコれば、支配できる」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「だからお前らはモテないだよ」

と俺は言った。


「なに?」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「じゃあ聞く。この中に女が50人以上いる奴はいるか?」

と俺は言った。


50人以上。その言葉に誰もが戦慄を覚えた。


「いないだろうな。基本的にはサディストはモテない。どエムのほうがモテるんだよ」

と俺は言った。


「いや。そんな事はない。サディストのほうが支配できる」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「バカかお前らは、サディストに屈服するのは、暴力から逃げたいからだけだ。喜んで身も身体も許す女はいない。

でもな。どエムはな。違う。女からの挑戦・テスト・屈辱にも耐えて耐えて。そして、本音をひきだす。そして愛をはぐくむ。これができるのは、どエムだからだよ」

と俺は言った。


「まぁいい、じゃあ俺たちはサディストらしくお前を葬ってやる」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「それでこそ、クズだ。でもな。俺が帰らなかったら、俺のホストネットワークが動く。どうなるか。わかるか?ホストには風俗嬢。キャバ嬢。つまり夜の世界のネットワークがある。ここにお前らの悪口が流れる。どうなると思う。モテなくなるぜ。夜の街でさえもな」

と俺は言った。


「兄貴。それは困ります。こいつは取り込んだ方が……」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


筋肉ゴリラたちに動揺が走った。


「だいじょうぶだ。金さえ積めば……」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「そうだな。金を積めば、なんとかなる女もいるわな。

でもな。それで満足なのか?お前らの男気はそんなものなのか?

金と暴力だけで、女を抱く。ダサいの極みじゃねぇか。

お前らな。元ホストの俺から見ても、素質はある。

だからもてるポテンシャルはあるんだ。

でもな。しがみついてるモノが悪い。

オンナ受けが悪いんだよ。

教えてやるから、こっちに来いヨ。

優しくしてやるぜ」

と俺は言った。


「兄貴。俺、あいつの舎弟になろうかな」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


「バカ。惑わされんな」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「おい。お前ら悪党だろ。悪党はモテるぞ。特に悪党に見切りをつけて、主人公を助ける下っ端はな。ただ真正クズはもてねぇ。その直前で光に目覚めるクズが最高に映えるんだ」

と俺は言った。


「おい。そんなにモテるのか?」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


「そらそうだ。そういうのに萌える層がいるんだよ」

と俺は言った。


筋肉ゴリラ達の目つきが変わった。



「お前ら思い出せ。なぜ不良になった。家庭環境とかイロイロあるけど、先輩の不良に憧れたんじゃねぇか。その憧れは、これならモテるじゃなかったか?」

と俺は言った。


「そ……そういえば」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


「でもな。よく考えてみろ。俺よりモテてた先輩はいたか?」

と俺は言った。


「い……いないな」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


「だろ。たしかに不良でも一部にはモテる。でもな。俺はもっと幅広い層にモテる。どうだ。お前らの未来はココで決まる。一生そのままか。それとも俺ほどでなくても、その10分の1の5人でも女がいる世界はどうだ」

と俺は言った。


「それはいいな。兄貴俺あっちにつきます」

と汚笑怒翔怪の下っ端筋肉ゴリラは言った。


「お前ボコるぞ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「いいぞ。いいぞ。ボコられろ。でもな。こいつは俺の舎弟候補だ。奴をボコった奴は、夜の世界に情報流すからな。あと俺の舎弟にはしてやらねぇ。

だからな、いっそのこと、全員俺の舎弟になればどうだ」

と俺は言った。


「全員が舎弟。それなら、組織抜け出すのに、ボコられないな」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「あとな。お前らの飯作ってる女はな。俺の女だ。

俺の舎弟なら、飯作ってくれるかもしんねぇぞ」

と俺は言った。


「しかしな。やはりお前は潰さねばならない」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「ちょっと待て。ところでお前らステロイドなんか、普通手に入らないだろ。すごいな。どうしたんだ。ボコられる前に教えてくれよ」

と俺は言った。


「おぉカッケーだろ。実はな密輸入してるんだ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「おぉそれはすげーな普通、密輸入なんかぶるっちまってできねぇぜ。なんかバックがいるのか?」

と俺は言った。


「それは言えねぇな」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「さすが男の中の男だ。何があってもバックは言わねぇって事だな」

と俺は言った。


「おぅよ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「例え裏切られても?」

と俺は言った。


「それは違う。裏切られたら、報復する」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「そうか……そらそうだろうな。じゃあこのアジトなんで俺が知ってるかわかるか?」

と俺は言った。


「なんでだ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。



「ペケポンの奴だよ。今周りにポリも待機してるよ。もうお前ら用済みだとよ。売られたんだよ」

と俺は言った。


「なに?」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「ハハハハハ。悔しいだろ。あいつら兄弟に報復しねぇのか?」

と俺は言った。


「もちろんするさ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「じゃあ洗いざらい自白しとけ。だいぶ減刑あるかもな。特に下っ端の奴は騙された、脅されたって言っとけば、情状しゃくしゃく?とかなんとかって奴になるとか、ならねぇとか。あと幹部クラスの発言は重要視されるからな、今からペケポンぶっ潰してやろうぜ。なぁお前ら」

と俺は言った。


「おぅよ。お前ら裏切りもんぶっ潰すぞ」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは言った。


「じゃあな。ムショでたら、飲みに行こうぜ。女の口説きかた教えてやるから。ただステロイドはもうやめとけ。夜の元気がなくなるから、女を口説いても意味がなくなる」

と俺は言った。


まじか……

筋肉の塊たちは、ガクッとうなだれた。


見栄を求めるあまりに、大切な息子を失った親父のように、みな下半身をじっと見つめていた。

(取り返しのつかない事をしてしまったと……)


その後、一斉に警察が乱入したが、筋肉の塊たちは、抵抗せずにお縄についていた。


そこへ女が入ってきた。


「ちょっと待って。今連れていかれたら困るわ。せめて最後の角煮丼を振る舞わせて」

と俺の女は言った。


「じゃあ。俺のも頼む」

と俺は言った。


「あなたに作ってるのと、味付けが違うの。ちょっと辛めなのよ。それに人数が合わないから今日は我慢して」

と俺の女は言った。


「わかったよ」

と俺は言った。


「なんで……こんな俺たちのために」

と汚笑怒翔怪のナンバーツーは目を潤ませて言った。



「私の料理を美味いという男はクズでも、真正クズじゃないわ。やり直せる。お勤め果たしてまた戻ってらっしゃい」

と俺の女は言った。


筋肉ゴリラたちは、泣きながら角煮丼を食った。


「彼女はとんでもないものを盗んでしまったのかもしれません」

と警官の一人が言った。


「うん?あいつは何も盗んではいないよ」

と俺は言った。


「ゴリラの心です」

と警官の一人が言った。


「なぁ兄さん。それ言いたかっただけだろう」

と俺は言った。


警官の一人は警帽を恥ずかしそうに傾けうなづいた。


「ふっ。可愛いやつめ」

と俺は言った。


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