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帰ってこない女

女が帰ってこない。

普通の男はここで焦る。必死で電話するわな。メッセージ送るわな。

だからモテない。

俺は違う。

何もしねぇでボーっと待つ。

信じてる?

いや……そんなんじゃない。

これはホスト時代に培った駆け引きってやつだ。

でもな。今回はそれが裏目に出た。

次の日の朝になっても帰ってこなかった。

さすがに俺も心配になってしまった。

昨日は晩御飯が食えなかったんだ。

料理できないしな。

パチスロで、すって金もない。

だから水しか飲んでない。

仕方がないから、別の女のところに行って飯を食わせてもらう。

なに?心配しねぇのかって。

何を言ってる。腹が減ってそれどころじゃねぇえんだ。

まぁ一応メッセージは入れた。

「生きてるか?」

それだけだ。

返信があったかって?

ねぇよ。

既読にすらならねぇ。

普段は30分以内には返信するしな。

身持ちの堅い女だからな。

急に男作って逃げ出すようなことはないだろう。

もしかして事件でも巻き込まれたのか。

俺はようやくその可能性を考え始めた。

あいつ何か言ってなかったか……。

俺はここ1週間の事を思い出していた。

月曜日……証券会社の女と会ってた。

火曜日……キャバクラの女と会ってた。

水曜日……老舗旅館の娘と会ってた。

木曜日……エステサロンの経営者の女と会ってた。

金曜日……投資会社経営の女と会ってた。

土曜日……新聞社勤務の女と会ってた。

日曜日……女に服を買ってもらってた。


あれ……

何か言ってたか???


思い出せねぇな。


俺にはたくさんの女がいる。

今問題になってる女は、一緒に住んでる女だ。

いわゆる同棲相手だな。

飯と家を提供してもらってて、たまに服とかを買ってもらっている。


なに浮気しまくってるって?

いやそんなんじゃない。

俺はもともと誰とも付き合ってはいない。

証券会社の女も、キャバクラの女も、老舗旅館の娘も、他の女たちも。

みんなあれだ。

俺は男娼みたいなもんなんだ。

女と身体を重ねるだろ。

そしてな。

空っぽの財布を置いておく。

そしたらな。

勝手に財布の中身が増えてるんだよ。

ただそれだけだ。

俺は俺の身体を提供する。

女はできる事をする。

ギブ&テイクの関係だ。

なにが悪い。

コンビニでおにぎりを買うのとまるで同じだ。

腹が減ったからおにぎりを買う。

おにぎりには値段がついていて、指定された金額を支払う。

それと似たようなもんだ。


それにな。

別にみんな俺を独占しようとなんかしない。

同棲相手も、俺がいろんな女と会ってる事を知ってる。

みんなも同棲相手がいることを知ってる。


まぁなんていうか。シェア文化だな。

俺はシェアされてんだ。


同棲相手がいなくなっても、別に他の女の所に転がり込めるんだが。

少し困ったことがある。

飯が美味いんだよ。

俺好みに超絶調整しやがるから。

離れられねぇんだ。

だからな。

もしなにかあったんなら。

なんとかしねぇといけねぇ。


しかしな。とりあえず飯を食わなきゃな。

俺はサイコロを振る。

この数字は……

今日は新聞社の女だな。

俺は女に電話する。

「めずらしいわね。今日会う日じゃないでしょ」

と新聞社の女は言った。


「実はな、昨日から飯食ってないんだ」

と俺は言った。


「わかったわ。じゃあご飯行きましょ」

と新聞社の女は言った。


「わかった。近くまで行くよ」

と俺は言った。


俺は新聞社の近くまで行き、女に電話する。


女はすぐに降りてきた。


「じゃあ、こっちよ」

と新聞社の女は言った。


「会社だいじょうぶなのか?」

と俺は言った。


「だいじょうぶ。素行の悪い男はどういう思考をしているかというのを取材するって名目だから」

と新聞社の女は言った。


「おいおい。勘弁してくれよ。俺めっちゃ素行良いだろう」

と俺は言った。


「そうね。あっちは暴れん坊だけどね」

と新聞社の女は言った。


「おいおい。オッサンのセクハラ発言じゃねぇんだから」

と俺は言った。


「新聞社でね。いろんな事情持った人間とばかり向き合ってると、思考がオッサンになるのよ。だから潤して」

と新聞社の女は耳元でささやいた。


俺は高級中華料理店に連れてこられた。


「高級そうな店だな」

と俺は言った。


「あら。スッポンとかのほうが良かった?」

と新聞社の女は言った。


「いやいや、スッポンはな色んな意味でヤバいだろ」

と俺は言った。


「私はいいわよ。なんなら直帰でと報告するから」

と新聞社の女は言った。


「いいよ。飯だけで」

と俺は言った。


「そう。でもあなた同棲相手の飯が美味いって言ってたでしょ。まさか捨てられた?飼ってあげようか」

と新聞社の女は言った。


「いや。ちげーよ。昨日から帰ってこねぇんだ」

と俺は言った。


「たしか経理とかやってる真面目な子だよね」

と新聞社の女は言った。


「だよ。上場企業の経理部だよ」

と俺は言った。


「なんて……とこ」

と新聞社の女は言った。


「ペケポンカンパニーだったと思う。ちょっと待ってくれ。あぁそうだペケポンカンパニーだ」

と俺は言った。


新聞社の女は何か考えている。

「ペケポンカンパニー……。ちょっと良くない噂を聞くわね」

と新聞社の女は言った。


「マジか」

と俺は言った。


「もしかして事件性があるかもしれない。気を付けて」

と新聞社の女は言った。


「そうか。ありがとうな」

と俺は言った。


「何かあったら相談して。できるだけ協力するわ」

と新聞社の女は言った。


「あぁありがとうな」

と俺は言った。


美味そうな料理が運ばれてきた。

俺らはそれをガッツく。


別れぎわ

「そんな状態のあんたは美味しそうじゃない。またの機会にするわ」

と新聞社の女は言い、財布から金を取り出し。俺の胸ポケットに入れた。

「これこの間。借りてた分。返したわよ」

そう言った。


「あぁ。じゃあな」

と俺は言った。

俺が女に金を貸すことなんかない。

これはつまり、これで当面しのげって事だろう。

俺は心の中でありがとうと呟いた。


相手は上場企業か……。

そのままストレートに行っても、もみ消されるだけだろうな。

生半可な手じゃムリだ。

どうやるこんな相手に喧嘩……。


ふと俺の頭に1人の男の顔が浮かんだ。


本物のクズの顔が……。


あいつに聞くのは気乗りしないが仕方ない。

会いに行こう


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