間違えるので経本でもいいらしい
今回文字数多めですが、ほとんど真言なので、サラーッと流してしまってください。
じぃちゃん家から帰った後、昴とレラちゃんに会いに行った。お土産持って。っていっても普通の饅頭。なのにすっごい美味いんだよね。この饅頭を美味しそうに食べるレラちゃんが見たい。
一緒にナスとひき肉のカレーを作った。言われるままに作ったけど、思ったより簡単に作れたし美味い。ただ鶏ひき肉は気をつけないとすぐ固まる……。
作りながらじぃちゃん家での犬神祭りと地縛霊退治の話をした。
「犬神祭り楽しかったみたいで良かったね」
「地縛霊のことなかったことにすんな」
「ハクジが負けるわけないし、何もなかったのはここにいることで証明されてるから」
そうなんだけどさ。
もうちょっと前のめりになってくれてもいいのに、昴はいつも冷静すぎるんだよ。
仕方ないから饅頭をレラちゃんにあげる。ごはん前だけど。レラちゃんも手伝ってくれるけど、炒めるとか煮込むのはできないし、手持ち無沙汰だろうから。いや、あげたいだけ。
『ありがと』
いただきます、とおじぎしてから饅頭にかじりつくレラちゃんが可愛い! ハクジも食べてくれるけどひと口だし!
なお、フリスビーとかやってくれるかなと思って試したら、ため息吐かれて、そなたのそばから離れるわけがないし、我は犬ではない、と冷たく諭されました。スミマセンでした。
「それにしても呼び寄せる地縛霊かー、迷惑だねぇ」
「うちの近くにもいるのかなぁ」
いたらやだなぁ、と思っていたら、「いないよ」と即答された。良かったー。安全が約束されたー。…………もしかして。
「オレが見えるようになる前にあちこち散歩とか言って連れ回されたのって……」
昴が拍手する。
「あたりー」
「おまえなー!」
「え、でも見えるようになる前に始末しておいたほうが良かったでしょ?」
ぅぐ……正論。
でもなんか悔しい。
「悠里は普通にしてても寄って来ちゃうから実感ないと思うんだけどさ、めっちゃ数減ってるんだよね」
「……あれで?」
「あれで」
どんだけいたんだよ!!
今だってどんどん寄ってきてはハクジに始末されてるのに!?
「地縛霊は悠里が思ってる以上に厄介だし、悪意強めだから、早めに対処したほうがいいらしいよ」
「誰情報だよ、それ」
「兄キ」
あぁ、春樹兄……。
「そういえば春樹兄、今どこにいんの?」
「マチュピチュ」
「なんで!?」
「幽霊が見えるという特性を活かしてるらしいよ」
斬新……。メンタル強すぎ。
っていうか活かすって何。
「そういえばさ、昴と春樹兄、どっちが霊感強いの?」
「残念ながらオレ」
「昴も霊感活かすの?」
「平穏が一番だからね」
ビビりではないけど、そういうのに関心もないらしい。昴らしいっちゃらしいけど。
「兄キの性格知ってるでしょ」
「底抜けに明るい」
そう、と昴が頷く。
春樹兄は、名前に春が入ってるけど、真夏! しかも迷惑な酷暑! みたいな人。暑苦しいから数メートル先ぐらいの距離がほしい。悪い人じゃないんだけど。
「あそこまで明るいと、霊も近寄れないんだって」
「えっ、そうなの?」
「なんていうの? 光属性って奴」
急に頭の中にマツケ◯サンバが流れ始めた。なんか納得した。
「付け入る隙がないんだって、春樹兄みたいなタイプは」
「……なるほど」
もしかしてオレもあぁなれば……。
『無駄だ』
心読まれて秒で期待が消え去る。いいじゃんちょっとぐらい夢見させてよ……。
「オレはそうじゃないからね、普通に生きるよ」
「同い年のオレが言うのもなんだけど、昴、おまえ人生二週目だろ?」
「それはレラだね。ねー、レラ」
饅頭をかじっていたのを中断して、顔を上げるレラちゃん。
『じんせーじゃない、二週目じゃないよ。レラはおこ……イヅナだから』
今オコジョって言おうとしてたな。
「地縛霊っていえばさ、暗闇坂通りの商店街の裏道にいるんだよね」
「えっ」
「オレから見てかなりヤバめだから近付かないようにしてるんだけど、地縛霊だからさすがに悠里に近寄らないとは思うんだけど、行かないようにね」
なんだかんだ言って心配してくれる昴は良い奴だ。
「商店街の裏道にいるアレ倒しに行きなさいよ」
そしてコイツは悪い奴だ、とルカを見ながら思う。
「お偉いごほーどーじ様が行けよ」
「いやよ、面倒だもの」
「押し付けんなよ。大体なんでいきなりそんなこと言うわけ?」
「頼まれたのよー」
「誰に」
「闇堕ちしかけてる神に」
「なおさらおまえがやれよ、おまえが頼まれてんじゃん」
『そなたがやれ』
ハクジがはっきりと拒否する。
アイツらを消し炭にすることに関しては大変自発的なハクジにしては珍しい。
『標的になってもいいのなら構わんがな』
標的?
「どういうこと?」
『神が神に頼み、断ることは別によくあるがな。神ではないものになりかけているものが地縛霊に取り込まれ、己を救ってくれなかった怨讐をこやつに抱く』
なにそれめっちゃ危険じゃん。いくらルカが強くても駄目だろ。
「ルカ、面倒がってないで行けよ」
「いやよ」
「ルカは人になりたいんだよね?」
それまでオレ達のやりとりを黙って見てた昴が、レラちゃんに豚肉巻きインゲンの照り焼きを食べさせながら言った。アレ美味そうだな、作りかた教わろ。
「そうよ」
「今は護法童子だから襲われても大丈夫だろうけど、人になったら大変だろうね」
ルカが真顔になった。昴の笑顔から溢れ出る恐ろしい説得力よ。
「人になったルカの霊力でピヨちゃんの維持も大変だろうし、少し真剣に考えてもいいんじゃない?」
とどめの言葉にルカは真剣な表情のまま俯く。でもすぐにパッと顔を上げる。笑顔で。
「だからそれはハクジが」
「ただの人になったルカを助けてあげる理由、ハクジにあるの? 悠里が嫌がってるし、ハクジの主人は悠里だよ?」
すっごい正論かましまくってて昴すごい。頼もしい。
「……自分で行くわよ」
「それがいいね」
……昴つよー。
……で、何でオレここにいんの?
ハクジが対応しなくて良くなったのに、昴に連れられて暗闇坂の商店街の裏通り入り口にいるオレ。
「護法童子の戦い見たくない?」
「結界でメコメコにすんのかと思ってた」
『そんなわけなかろう』
ハクジに呆れられた。
「貴重なもの見せてあげるんだから、あとでスイーツおごんなさいよ?」
ルカはそう言ってから裏道に入って行った。
理屈おかしいけど、この商店街にパンケーキの美味しい店があるらしいから、そこに誘導しよう、そうしよう。
あれかな、変身したりすんのかな。……ルカが変身したら魔法少女とかになりそうだから、変身しないでいい、な。似合いそうなのがまた複雑な気持ちになる。
ルカが地縛霊の前に立つ。
この前の地縛霊と違って、なんか赤黒い。身体からボタボタとこぼれてるのに、なんかよく分からんのが吸い込まれていってて、ひと言で表すなら、キモい存在です。
ルカの背中を昴と一緒に見守る。
「ウシュニーシャ・ヴィジャヤ・ダーラニー」
アレ? なんか思ってたんと違う呪文だ。
「ナモー バガバテー トライローキヤ・プラティヴィシシュターヤ ブッダーヤ」
『仏頂尊勝陀羅尼だ』
「ぶっちょーそんしょーだらに?」
『真言はそれぞれの神や仏が持つ独自のものがある。そなた達人間ならオン アボキャ、で始まる光明真言が有名だろう』
真言って種類色々あるんだ。そりゃそうか。
っていうかあの有名な臨、兵、っていうアレはなんなんだろう?
『護法が唱えている仏頂尊勝陀羅尼は長く唱えきるのが僧侶でも難しいのでな、経本を用いるぐらいだが、厄払いとしても効力が高く妖も祓える。護法が唱えれば調伏させられるだろう』
この言い振りからして、ルカが間違えるとは思ってないんだな。
「バガバテー タディヤター オン ビショーダヤ ビショーダヤ サマサマ サマンタ・アヴァバーサ・スパラナ・ガティ・ガハナ・スヴァバーヴァ・ヴィシュッデー アビシンチャトゥ マーン スガタヴァラ・ヴァチャナ・アムリタ・アビシェーカイヒ マハー・マントラパダイヒ アーハラ アーハラ、アーユフサンダーラニー、ショーダヤ、ショーダヤ、ガガナ・ヴィシュッデー」
…………え、マジ長い。
ルカが唱えてる間、地縛霊が持っている斧でガンガン攻撃してるけど、ルカに当たってない。あぁいうのを見ると、ルカってやっぱ人じゃないんだなって思っちゃうけど、むしろ無傷で安心する。
「ウシュニーシャ・ヴィジャヤ・ヴィシュッデー、サハスラ・ラシュミ・サンチョーディテー、サルヴァ・タターガタ・ア アヴァローカニ、シャト・パーラミター・パリプーラニ、サルヴァ・タターガタ・フリダヤ アディシュティターナ・アディシュティテー、マハームドレー、ヴァジュラ・カーヤ・サンハタナ・ヴィシュッデー サルヴァ・アーヴァラナ・バヤ・ドゥルガティ・パリヴィシュッデー、プラティニヴァルタヤ」
これ、無理だろ、言えないよ。練習とかそういう問題じゃない。
ルカが真言?を唱えて続けていく間にどんどんルカに光が集まる。
「アーユフ・シュッデー、サマヤ・アディシュティテー、マニ、マニ、マハーマニ タターター・ブータ・クローティ・パリシュッデー、ヴィスポータ・ブッディ・シュッデー ジャヤ、ジャヤ、ヴィジャヤ、ヴィジャヤ、スマラ、スマラ サルヴァ・ブッダ・アディシュティタ・シュッデー、ヴァジュリ、ヴァジュラ・ガルベー、ヴァジュラン バヴァトゥ、ママ、シャリーラン、サルヴァ・サットヴァーナーン、チャ、カーヤ・パリヴィシュッデー サルヴァ・ガティ・パリシュッデー、サルヴァ・タターガタシュ、チャ、メー、サマーシュヴァーサヤントゥ サルヴァ・タターガタ・サマーシュヴァーサ・アティシュティテー、ブディヤ、ブディヤ、ヴィブディヤ ヴィブティヤ、ボーダヤ、ボーダヤ、ヴィボーダヤ、ヴィボーダヤ サマンタ・パリシュッデー、サルヴァ・タターガタ・フリダヤ・アディシュターナ・ア」
マジでこれいつ終わるの……。
『調伏するぞ』
ハクジに言われて地縛霊を見ると、いつの間にかルカを包んでいた光が地縛霊を光の縄みたいなもので、ギリッギリに縛りつけていた。縛られすぎて形態変わってんのこわ! 細長くなりすぎじゃ!?
「ディシュティタ・マハームドレー、スヴァーハー!」
ルカが言い切った途端、地縛霊を中心として光がドバッとあふれて、オレたちを通り越していった。
あまりの眩しさに目をつぶっていると、ルカの声がした。
「終わったわよ」
目を開けると、そこにさっきまでいた地縛霊はいなかったし、ちょこちょこ見かけるおじとか、全部がいなくなっえた。
「面倒だったからこの辺一体の全部調伏しておいたわよ。あー、今日も徳を積んだわー」
ご……護法童子すげー……。
「さっ、スイーツよ!」
あ、そうだった。あまりの衝撃に一瞬記憶飛んだ。
「パンケーキいこーぜ」
パァッとルカの表情が明るくなる。
「いいわね! 撮ってアップしちゃお!」
SNSを使いこなす護法童子、謎。
真言の内容としては↓このようなものです。
仏頂尊勝陀羅尼
ウシュニーシャ・ヴィジャヤ・ダーラニー
ナモー バガバテー トライローキヤ・プラティヴィシシュターヤ ブッダーヤ
世尊に帰依し奉る。三界で最も優れた仏陀
バガバテー タディヤター オン ビショーダヤ ビショーダヤ サマサマ
世尊に。すなわちオーム。浄化したまえ。浄化したまえ。隅々まで普く
サマンタ・アヴァバーサ・スパラナ・ガティ・ガハナ・スヴァバーヴァ・ヴィシュッデー アビシンチャトゥ
平等に輝き照らすことを本性とした、完全に清浄なる者よ、灌頂したまえ
マーン スガタヴァラ・ヴァチャナ・アムリタ・アビシェーカイヒ マハー・マントラパダイヒ アーハラ
私に。最高の善逝の言葉による不死の灌頂である、偉大なる呪文の言葉によって、与えたまえ
アーハラ、アーユフサンダーラニー、ショーダヤ、ショーダヤ、ガガナ・ヴィシュッデー
与えたまえ、寿命を保つ者よ、清めたまえ、清めたまえ。虚空のように清浄な者よ
ウシュニーシャ・ヴィジャヤ・ヴィシュッデー、サハスラ・ラシュミ・サンチョーディテー、サルヴァ・タターガタ・ア
清浄なる仏頂尊・勝尊よ、千の光線を放射された者よ、一切の如来を
アヴァローカニ、シャト・パーラミター・パリプーラニ、サルヴァ・タターガタ・フリダヤ
観察する者よ、六波羅蜜を完全に備え、一切の如来の真髄による
アディシュティターナ・アディシュティテー、マハームドレー、ヴァジュラ・カーヤ・サンハタナ・ヴィシュッデー
加持によって加護された者よ、偉大なる印相よ、金剛の身体を結集させた清浄なる者よ
サルヴァ・アーヴァラナ・バヤ・ドゥルガティ・パリヴィシュッデー、プラティニヴァルタヤ
一切の障害の恐れと困難から完全に浄化させた者よ、回避させ給え
アーユフ・シュッデー、サマヤ・アディシュティテー、マニ、マニ、マハーマニ
寿命の清浄なる者よ、戒律によって加護された者よ、宝珠よ、宝珠よ、偉大なる宝珠よ
タターター・ブータ・クローティ・パリシュッデー、ヴィスポータ・ブッディ・シュッデー
真実実際のように完全に清浄なる者よ、知性を顕現させた清浄なる者よ
ジャヤ、ジャヤ、ヴィジャヤ、ヴィジャヤ、スマラ、スマラ
征服したまえ、征服したまえ、勝利したまえ、勝利したまえ、念じたまえ、念じたまえ
サルヴァ・ブッダ・アディシュティタ・シュッデー、ヴァジュリ、ヴァジュラ・ガルベー、ヴァジュラン
一切の諸仏に加護された清浄なる者よ、金剛よ、金剛を蔵する者よ、金剛に
バヴァトゥ、ママ、シャリーラン、サルヴァ・サットヴァーナーン、チャ、カーヤ・パリヴィシュッデー
私と一切衆生の身体をしたまえ、身体の完全に清浄なる者よ
サルヴァ・ガティ・パリシュッデー、サルヴァ・タターガタシュ、チャ、メー、サマーシュヴァーサヤントゥ
一切の道において完全に清浄なる者よ、一切の如来たちよ、私たちを激励せよ
サルヴァ・タターガタ・サマーシュヴァーサ・アティシュティテー、ブディヤ、ブディヤ、ヴィブディヤ、
一切の如来の激励によって加護された者よ、目覚めたまえ、目覚めたまえ、悟りたまえ
ヴィブティヤ、ボーダヤ、ボーダヤ、ヴィボーダヤ、ヴィボーダヤ
サマンタ・パリシュッデー、サルヴァ・タターガタ・フリダヤ・アディシュターナ・ア
遍く完全に清浄な者よ、一切の如来の真髄による加持によって
ディシュティタ・マハームドレー、スヴァーハー
加護された偉大なる印相をもつ者よ、よろしく。
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