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犬上家と愉快なオトモタチ  作者: 黛ちまた


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18/19

またね

 児玉さんと警察が集団でやって来た。

 ちなみに児玉さんは春樹兄に真っ先に掴みかかった。

 ですよねー。


「何であの場に待機しなかった!」

「奴等の残党が、隠蔽工作としてこの遺骨を始末するのを防ぐためだ」

「それはもっともだが、オレ達が行くくらいなら間に合っただろう」

「児玉警視、そこまでで」


 警察官(?)と首を傾げたくなる、ちょっと雰囲気の異なる人達が集まった。なんかちょっと弁護士っぽいような、なんかそういう雰囲気。


「檜山、まずは別件の報告をしてからにしてくれ」

「すまん。予想より早く団体が行動を開始してしまってな」


 児玉さんが怪訝な顔をして春樹兄を見る。

 春樹兄は内ポケットから手帳を取り出して児玉さんに見せた。


「すまんな、児玉。実はこういうもんだ」


 手帳を見た児玉さんの、声にならない叫び。

 分かる、その気持ち。

 たださ、驚いたことに団体の奴等の残党が、この山にやって来てて、児玉さん達に検挙されたこと。春樹兄の予測は正しかった。


 署までご同行願います、をされたので、車に乗った。

 遺骨や発掘された、いわゆる現場は所轄の警察と公安との合同調査という扱いになるらしい。公安のことは秘密みたいだけど。

 こうなるとオレ達には関係のない話。春樹兄と児玉さんに、こっから先はオレらの出番って言われた。出番も何も、オレはただついて行っただけなんだけどね。




 翌日、警察が宗教団体 光導の導が複数の児童を誘拐し、儀式と称して殺害したこと、また数年前に起きた複数児童誘拐事件も同団体による犯行であり、その当時の被害者の遺骨も山中にて発見されたことを発表した。

 昼も夜もテレビはこの事件のことばかり放送した。なにも知らないクラスメートがもうあのニュース飽きた、って言ってるのを複雑な気持ちで聞いたりした。

 

 発見された遺骨は白骨化していて、五人の子供と大人一人のもの。子供の骨のうちの一人は、児玉さんの弟さんのものだった。児玉さんは覚悟していたことでも、実際に目の前に突き付けられて辛かっただろうと思う。だって、想像したオレがこんなにキツイ思いをするんだから、兄で、弟のためにずっとやってきた児玉さんが苦しい思いをしないはずがない。

 子供達は皆身元が判明したけど、大人の、レラちゃんのものだけは判明しなかった。春樹兄が言ってたけど、団体の信者が産んだ子供を出生登録もせずに団体で囲ったんだろうって。


 アーモンド入りチョコを両手で抱えたレラちゃんは、ひと口チョコをかじった。


『レラ、生き神様、呼ばれてた。でもかいちょー変わって、レラ、用無しになった』


 あの夜、レラちゃんは確かにいつもと違う感じだった。でも翌日にはいつものレラちゃんに戻っていた。


「会長?」


 光導の導の会の会長ってことか?


『新しい会長、レラにごはんくれなかった。レラ、ごはんもらうため、お手伝いいっぱいした。でもできること少なかった。いつもおなか空いてた』


 思わず持って来たお菓子をレラちゃんの前に置いてしまう。必要だったのは今じゃなくて、前世のレラちゃんなんだけど、それでも。


『友達いなかった、おとーさんおかーさんもいなかった。学校、行ったことない。だからてれびいっぱい見た。知らないこといっぱい知れて、てれび好きだった』

「前の会長は、優しかったけど、レラを学校には行かせてくれなかったんだね」


 そう言って昴はレラちゃんを撫でる。昴もお菓子をレラちゃんの前に置く。


 あんなことをする奴らだ。レラちゃんを強引に連れてきて生き神様だとかいって閉じ込めたんだろう。それなのに用無しだっていって捨てようとした。でもレラちゃんは生きていく術がないから、団体にいるしかなくて、こき使われたんだろう……。


『新しい会長、子供いっぱい連れて来た。レラみたいにされるかも思って、逃そうとして、失敗した』

「うん、レラ、偉いね、優しいね」


 ヤバい。泣きそう。

 レラちゃん、そんな目に遭ってても子供達を助けようとしてたなんて。


『光見る子供、神様に捧げる、加護受ける、儀式』


 頭がおかしい。いつの時代なんだよ、生贄とか。そんなんで神様が喜ぶわけないだろ!?

 ハクジが目を細める。ほら、現役の神様からしてもあり得ないんだって!


『レラも、生贄なった』


 胸がギュッと痛くなる。

 散々レラちゃんを利用して、わけの分からん儀式の生贄にするなんて、団体の奴らは頭がおかしい。ゴミだ、クズだ、人殺しでしかない!


『生贄なったあと、どうしていいか分からなかった。どこ行けばいいかとか、知らなかったから』


 管狐のレラちゃんの表情は読めない。喋り方がたどたどしいから、レラちゃんが悲しかったのかとか苦しかったのかとかが、逆にリアルっていうか。

 ポリポリと音をさせながらアーモンドをかじるレラちゃん。


『レラと一緒に生贄なった子たち、泣いてた。泣きやませようとした』

「うん、偉いね、レラ」


 昴の指がレラちゃんの小さなおでこを撫でる。


『皆、一人嫌だ、泣いた。だから一緒行こう、誘った。そしたら、皆一緒来た』


 あぁ、そういうことなのか。

 生贄にされてしまった子供達は、大人のレラちゃんに付いていきたがった。その結果が、魂の融合だったんだ。


『気が付いたら、池のそばにいた。ご主人と悠里くん、ハクジさまに会った』


 えっへんとばかりに胸を反らすレラちゃんを昴が抱きしめた。ボロボロとこぼれた涙がレラちゃんを濡らす。


『ご主人、レラ大丈夫。泣かないで』

「……レラ」

『うん』

「レラ、頑張ったね……」


 我慢しきれずにオレも泣いた。


『頑張った、かな?』

「頑張ったよ。子供達を受け入れてあげたんだから」

『そっか。レラ、頑張った』

「うん、偉いよレラ、本当に偉いよ」


 すり、とレラちゃんが昴に頬擦りする。目を細めて、嬉しそうに見える。


『レラ、寝てたけど、何があったか、新しい子達教えてもらった』


 ……新しい子。

 今回生贄になった六人の子達のことだよな……。


『皆言ってた。ご主人、悠里くん、ルカちゃん、ご主人のおにぃちゃん、レラの中のもう一人の子のおにぃちゃん来てくれたって』


 オレはいただけなんだけど……そんな風に言われると申し訳なくなる。


『レラ、知ってる。あのままだと、悪いのに食べられちゃうって。だからご主人達来てくれて、助かった』

「そう言ってもらえると、嬉しいよ」


 たけのこの里を食べ、きのこの山を食べ、レラちゃんが首をひねる。


『どっちも好き』


 不意にハクジが言う。


『話が進まぬから口を挟むが、その飯綱、神成りを果たしたぞ。弱いがな』

『えっ! ほんと!? レラ神さまなれた!?』


 レラちゃんがぴょんぴょん跳ねる。


『神成りを果たしたことで、契約は解除されるが』


 昴が悲しそうな顔をする。


『? レラはご主人と一緒』

『そうか』


 ハクジもオレと一緒にいるために神成りを果たした。


 レラちゃんは昴の指を握る。


『レラ、頑張る』

「うん、ありがとう、レラ」


 もう片方の手で昴はレラちゃんを撫でる。その顔は嬉しそうだった。

 昴にとってレラちゃんはもう家族だもんな。




 帰宅してから父さんと母さんに事情を説明した。春樹兄には両親には伝えないとこんかいの外泊を許してもらえないと思うと伝えたら、了解を得た。


「春樹君、出来が良かったもんなぁ」

「そうよねぇ」


 あのちゃらんぽらんの春樹兄がそんな評価だったとは驚きだ。


「それにしても、霊感が公安で活かせるなんてなぁ。時代の変化を感じるな」

「あの宗教団体の後に出来た組織もあるみたいよ、ネットで調べたけど」


 ネットにのってるのか……。

 あの宗教団体が起こした、世界中を騒がせた事件は、オレが生まれる前。その後に公安内で発足した組織もあるらしい。春樹兄が所属するのはそこじゃないみたいだけど。


「悠里もやれるんじゃないのか?」

「やだよ」


 平凡に生きられるかも微妙なのに。







──お兄ちゃん!

──ヒロユキ……?

──うん!

──ヒロユキ、ごめんな、オレ達がもっと話を聞いてやれてれば……。

──そうだよ! 聞いてくれなくて悲しかった!

──そうだよな、ごめん……。

──お姉ちゃんから、お兄ちゃんが僕を助けるために頑張ってくれたって聞いたから、許してあげる。

──お姉ちゃん?

──そう、お姉ちゃん。優しくてね、泣いてた僕達を助けてくれたの。今はすばるってお兄ちゃんと一緒にいる。

──すばる……春樹の弟か。

──あ、僕、もう行かなくちゃ。

──ヒロユキ!

──大丈夫だよ、神さまが迎えにきてくれたから。お兄ちゃん、またね!

──……あぁ、またな。


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