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犬上家と愉快なオトモタチ  作者: 黛ちまた


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16/19

強襲するこっちが悪者みたい…

暴力、グロテスクな表現があります。

苦手な方は読み飛ばしてください。


 インターホンを春樹兄が連打する。ほんとこの人は変わらないなー。

 団体は無視を決め込んでいるのか、誰もいないのか、反応がない。でもね、相手が悪いっていうか。春樹兄はインターホンを連打しつつ、ドアをバンバン叩く。

 隣に立つ昴を見る。


「本当に血、繋がってる?」

「そのはず」


 さすがの昴も苦笑いする。


「なんなんだアンタは!」


 突然ドアが開いて、出てきた人が怒鳴った。無理もない。嫌がらせみたいな連打だったし。


「酷いなぁ、そちらが呼んだから来たのにー」


 そう言ってさっきの手紙を団体の人に見せる。


「これは……!」


 下っ端まで情報伝達されてるのか、この人が実は団体内でそこそこの地位にいるのかは不明。


「そんなワケだからお邪魔しまーす」


 相手が戸惑ってる隙をついて、春樹兄は中に入って行った。


「あ! ちょっと!」


 団体の人──面倒だからオッサンと呼ぶ──は春樹兄を止めたいけど、どう止めていいのか分からないといった感じ。

 オレと昴とルカもシレッと中に入っちゃう。お邪魔しまーす。


 レラちゃんに繋がる光の筋は建物の奧を示してる。

 ズカズカと進む春樹兄を、オッサンが本気で止めに入るものの、どういう仕組み(?)なのか春樹兄を止められない。スカッスカッと避けてどんどん奥に進んでいく。コントみたい。


 いかにも怪しい、向こうには中ボスくらいならいそうですといった感じのドアが目に入った。

 オッサンはバッと走って行って扉の前に立ちはだかった。


「ここから先は行かせん!」


 いやなんかこっちが悪い奴みたいなセリフ吐かれてるけど、光の筋はドアの向こうから出てきてる。


「あんたらの都合とかこっちは知ったこっちゃねぇよ」

「この先は神聖な場所だ!」

「反吐が出るようなことをほざいてくれるなぁ。殴りてぇなぁ。でもそんなことしたらアイツに必要以上に迷惑かけるから我慢しないとなー」


 背負っていたザックを床に置くと、中からロープを取り出した。わー、あの人の未来が見えた気がする。


「とりあえず、大人しくしよっか?」


 本当にどっちが悪者なんだか分からないやりとり。

 春樹兄はドアに背をつけていたオッサンを軽くドアからひっぺがし、背後に回ってロープで縛りあげていった。


「はーい、お口もチャックでお願いしまーす」


 いつの間にか手拭いを手に持っていて、オッサンに猿轡みたいにしてかませると、床に転がした。いやほんとに、ころってね。

 オッサンの前に春樹兄は屈む。ポケットからサバイバルナイフを取り出すと、オッサンの目の前の床に突き刺した。オッサンの額に汗がにじむ。オレの手にも汗が。

 春樹兄、冗談じゃなくマジでこれまでどういうことしてきたんだろう。


「なんでこの程度でビビってんの? アンタらさぁ、こういうこと子供らにやってきたんでしょ? 力の差がある弱い子供に。もうちょっと覚悟決めなよ」


 ……春樹兄、ガチで怒ってる。

 児玉さんは弟のために警察官を目指した。春樹兄は昴を守るために昴に何も見えない、知らないフリをさせた。

 兄としては当然だったのかもしんないけど、春樹兄はきっと、児玉さんの弟を助けられなかったのに、自分の弟だけを助けたことに罪悪感を抱いてたんじゃなかろうか。


 サバイバルナイフを床から抜くと、折りたたんで刃をしまった。

 振り返った春樹兄は笑顔じゃなかった。いつも、どんな時でも笑顔だったのに。


「かなりキツいもん眼にすることになるだろうから、直視しないほうがいいぞ」


 …………そうだよな。だから、レラちゃんに光の筋が、魂が吸い込まれてるんだもんな。

 耐えられるか分からないけど、行かないという選択肢はない。


「頑張る」


 オレの返事に春樹兄がへにゃりと笑った。


「相変わらずヘタレだなぁ、悠里は」


 言いながら春樹兄はドアに手を伸ばし、開けた。

 むわりと、においが鼻をつく。何のにおいなのか、聞かなくても分かる。……血だ。血のにおいなんてこれまでの人生でかいだことないのに分かるのはなんでなんだろう。本能的なものなんだろうか。


 臆することなく部屋の中に入る春樹兄のあとを追って、オレ達も部屋に入る。

 部屋の中央にあるものを見た瞬間、頭が真っ白になった。

 よく、鈍器で殴られたようなって表現があるけど、今のオレはそれよりも上の衝撃を受けていると思う。

 隣に立つ昴から、ただならぬものを感じる。これは、そう、怒りだ。顔を見ると目だけで射殺せそうな、そんな目を昴はしていた。


 そこに、部屋の真ん中にあったのは、六人の子供の、遺体。子供達の身体から光が出ていて、レラちゃんに吸い込まれている。


「誰だ!」

「何者だ!」

「アイツは何をやってるんだ!」

「神聖な儀式を穢されてはならん!!」


 ワーワーと叫んでるコイツらは、団体の人間なんだろう。

 わっと一斉に襲ってきた奴らを春樹兄は投げ飛ばしていく。武術の心得もない奴が投げられたら受け身を取れるはずもなく、床で痛みに呻いてる。

 春樹兄を倒すのは無理だと思ったのかオレ達を襲おうとするも、ルカによって張られたシールドで近付けない。

 そうこうするうちに春樹兄にのされていき、二十人程の大人が床に倒れていた。

 春樹兄は子供達に寄った。ブーツが真っ赤な液体に浸かることも気にせず。

 一人一人を触らないようにしながら確認し、立ち上がって首を横に振った。皆、事切れてるんだろう。でもそれは、なんとなく分かってた。だって、生きていたならレラちゃんに吸収されるはずがないんだから。


 春樹兄はスマホを取り出すと、誰かに電話をかけた。多分児玉さんだろう。


「あ、児玉? オレオレ。すぐ来てくれ。それと、すまん、間に合わなかった」


 やっぱり相手は児玉さんだった。

 通話を終えた春樹兄は、ザックから新たなロープを取り出し、床に転がってる団体の奴らを全員縛りあげていった。

 団体の奴らは叫んでるけど、春樹兄はガン無視してる。


「この国はさ、一人殺した場合では死刑になんないけど、二人以上は死刑になるんだよな」


 ピタリと叫ぶのを止めたかと思ったら、自分はやってないとか、命令に逆らえなかっただとか、聞くに耐えないことを叫び始めた。


「オレらに言い訳すんじゃなくて、あの世で閻魔様に言い訳すんだな」


 児玉さんが来るのを待つ間に、最後の光がレラちゃんに吸い込まれ、大きく光って消えた。それを見た瞬間、我慢できなくて泣いた。助けられなかったからとか、そんな感情じゃなくって、なんでって言葉が何度も何度も頭の中を駆け巡る。

 この子達は人と違う力を持ってただけで、なんでこんな目に遭わなければならなかったのか。

 ……あぁ、違う。オレはハクジがいたから守られて、この子達みたいにならなかった。それが申し訳なくて、なんて謝っていいのか分からなくて、ごめんと言いながら泣くしかできなかった。


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