第73章 「孔子とパステルエナメルの哲学」
陽希と莉桜が次に飛ばされたのは、どこか厳かな雰囲気の漂う場所だった。広大な庭園には整然とした建物が並び、学び舎のような雰囲気がある。
「ええと……ここはどこ?」
「うーん、見た感じ、かなり昔の中国っぽい?」
陽希と莉桜が辺りを見回していると、奥から一人の男が現れた。立派な長い髭を蓄えた年配の男性で、深く刻まれた皺と鋭い眼差しが、ただ者ではない雰囲気を醸し出している。
「君たちは何者だ?」
「えっ、えーと……私たちは営業マンです!!」
陽希は勢いよく頭を下げた。
「本日はこちらの素晴らしい商品を売りにきました!!!」
「ほう……。」
男は腕を組み、静かに二人を見つめる。
「……君たち、学びを求める者か?」
「えっ?」
「ここは学問を学ぶ場だ。知を求めぬ者に、私は教えを授けぬ。」
「えーっと……いや、学びは好きですよ!!」
陽希は適当に話を合わせた。すると、男は頷きながら、改めて名乗った。
「私は孔子。学問と礼を重んじる者だ。」
「こ、孔子ーーー!??」
陽希と莉桜は同時に叫んだ。
「ってことは、俺たち、まさか儒教の創始者と対面してる!?」
「ちょっと待って、こんな偉大な人に商品売るの!? かなりハードル高くない!?」
二人が焦っていると、孔子は落ち着いた声で尋ねた。
「それで、君たちは何を売りに来たのだ?」
「ええと……本日のお品はこちら!!!」
陽希は懐から商品を取り出し、高らかに掲げた。
「パステルエナメルです!!!」
孔子の表情が完全に固まった。
「……パステルエナメル?」
「はい! この素晴らしいカラーで、書物や壁を鮮やかに彩ることができます!!!」
孔子は静かに目を細めた。
「……それは学びに必要なものか?」
「も、もちろん!!」
「学問とは、色彩の美しさではなく、内なる知を磨くことにある。君の品物は、学びの本質には関係ないのではないか?」
「いやいやいや!!! そんなことないですよ!!!」
陽希は必死に説得を続ける。
「たとえば、書物に色をつければ、より記憶に残りやすくなるんです!!」
「ふむ……。」
孔子は少し考え込む。
「確かに、視覚的に学びを助けるのは悪くない。しかし、それはあくまで手段に過ぎぬ。」
「おお!? いい感じに納得しそう!?」
しかし、次の瞬間——
「だが、問題がある。」
「えっ?」
孔子は冷静な顔で言った。
「私は、書物に色を塗るなど、考えたこともない。」
「えええええ!??」
陽希は絶望した。
「ちょ、ちょっと待って!! 書物に色をつけると、学びが深まるんですよ!??」
「むしろ、文字そのものが学びの本質ではないか? 色など、不必要。」
「そ、そんなぁぁぁ!!!」
「そ、そんなこと言わないでください!! ほら、例えば……!」
陽希は咄嗟に筆を取り、パステルエナメルを使って書物に色を塗り始めた。
「たとえば、重要な部分を赤で強調して、覚えやすくするとか!」
孔子は腕を組み、興味深そうに見つめる。
「ほう……。」
「それに、学びって楽しくないと続かないじゃないですか!? カラフルにすれば、もっと楽しくなりますよ!!」
「……。」
孔子は筆を手に取り、慎重にパステルエナメルを使ってみた。
「これは……確かに、目を引くな。」
「でしょ!??」
陽希は得意げに胸を張った。しかし、次の瞬間——
「……だが、この色は目にうるさい。」
「えぇぇぇぇぇぇ!??」
孔子は顔をしかめた。
「学問において、派手な色彩はむしろ邪魔になることもある。色があれば目は奪われるが、心が迷う。」
「そ、そんなこと言わずに!! ほら、もっと落ち着いた色合いのもありますよ!!」
陽希は急いで青や緑のパステルエナメルを見せる。
しかし——
「この青は、冷たすぎる。」
「この緑は、暗すぎる。」
「この黄色は、まぶしすぎる。」
「この紫は、怪しい。」
「このピンクは、軽薄だ。」
「ええええええ!?!?!? 何色ならいいんですか!!!???」
孔子は静かに言った。
「無色こそが至高。」
「無理ィィィィィ!!!!!!」
陽希は頭を抱えた。
「じゃあ、どうすれば納得してくれるんですか!??」
孔子はしばらく考えた後、こう言った。
「……色ではなく、香りはどうか?」
「えっ?」
「学問の道は、五感を研ぎ澄ますもの。視覚ではなく、嗅覚を刺激することで記憶を深めるのはどうか?」
「そ、それってつまり……香り付きパステルエナメル!?」
「うむ。」
「ちょっと待って!! そんな商品、うちにないよ!!!」
「ならば、作ればよい。」
「ムチャクチャ言うなぁぁぁ!!!」
しかし、孔子は興味津々な様子だった。
「これが成功すれば、新たな学びの形が生まれるかもしれぬ。」
「くぅぅぅ……やるしかないのか!!!」
陽希は覚悟を決め、新たな発明に挑むことになるのだった——。
「香り付きパステルエナメルを作る……!?」
陽希は頭を抱えた。
「ちょっと待って! そんなもん、どうやって作るんだよ!?」
「香りと色を融合させたものなら、学問の助けになるかもしれぬ。」
孔子は腕を組み、神妙な顔で頷いている。
「お、おいおい……学問の父たる孔子様が、なんでこんな謎商品に興味津々なんだよ……!」
「陽希、どうするの?」
莉桜が不安そうに尋ねるが、陽希はもう逃げ場がないことを悟った。
「やるしかない……! 俺たちがここで諦めたら、パステルエナメル業界の未来はないんだ!!!」
「えぇ……そんな業界あったっけ……?」
こうして陽希と莉桜は、香り付きパステルエナメルの開発に挑むことになった。
試作1:お茶の香り付きパステルエナメル
「よし、まずは手堅くお茶の香りをつけてみよう!」
陽希はお茶の葉をエナメルに混ぜ、筆を使って試しに紙に塗ってみる。
「……おお、なんかそれっぽい?」
「確かに香るな。」
孔子は慎重に紙を手に取ると、鼻を近づけて嗅いだ。
「これは……普通にお茶の匂いだな。」
「ですよねぇぇぇぇぇ!!!!!」
陽希は机を叩いた。
「いや、そりゃそうだよ! 俺たち、ただお茶の葉を混ぜただけだもん!!」
「では、次の試みだ。」
孔子はまるで学問の探求をするように冷静に言った。
「ま、待って!? なんかワクワクしてません!? 俺、これ本業じゃないんですけど!?」
試作2:香水風パステルエナメル
「じゃあ、次はもうちょっと高級感を出すために、香水の匂いをつけてみる!」
陽希はとっておきの高級な香水をエナメルに数滴垂らし、慎重に混ぜた。
「よし、これならどうだ!」
孔子は再び慎重に香りを嗅ぐ。
「……これは……」
「どうですか!??」
「学問にはふさわしくないな。」
「えぇぇぇぇ!??」
「この香りでは、学問に集中できぬ。むしろ、頭がぼんやりする。」
「いや、そりゃそうだよ!!! だってこれ、高級フレグランスだもん!!!」
陽希は頭を抱えた。
「孔子様、ちょっと落ち着いてください!! これ、俺たち、パステルエナメルの売り込みに来たはずなのに、なんで開発の最前線にいるんですか!??」
「学びとは探究なり。」
「ちがーーーう!!!!」
試作3:漢方薬風パステルエナメル
「もうこうなったら……学問といえば、健康な体が大事ってことで、漢方の香りをつけよう!!」
陽希は適当に、生姜・高麗人参・ヨモギなどをエナメルに混ぜた。
「よし、これなら健康的だ!!」
「……ふむ。」
孔子は再び慎重に香りを嗅いだ。
「これは……確かに健康によさそうだ。」
「でしょ!? これなら集中力もアップするし、書物にも活用できます!!!」
「しかし——」
孔子は冷静に言った。
「あまりにも臭すぎる。」
「うわあああああ!!!!」
「これでは、学びの場が薬草店になってしまう。」
「くそぉぉぉぉ!!!! 俺の努力が!!!」
陽希は地面に崩れ落ちた。
ーーー
こうして何度も試作を繰り返した結果——
最終的に、ほんのり香る「清涼な竹の香り」をつけたパステルエナメルが完成した。
「これは……悪くないな。」
孔子は満足げに頷いた。
「では、正式にこれを導入しよう。」
「やったぁぁぁ!! やっと売れたぁぁぁ!!!」
陽希はガッツポーズを取ったが、次の瞬間、孔子は静かに言った。
「ただし。」
「えっ?」
「このパステルエナメルを使うには、一つ条件がある。」
「ど、どんな条件ですか……?」
孔子は陽希をじっと見つめ——
「君もここで学ぶべきだ。」
「えぇぇぇぇぇぇ!??」
「学問を深めることで、より良い商売もできるであろう。」
「いや、確かにそれはそうかもしれないけど!! 俺、営業マンなんですけど!!?」
「では、これより毎日、朝の六時から学問の講義を始めよう。」
「はやぁぁぁぁぁぁい!!!!」
こうして陽希は、パステルエナメルを売ることに成功したものの、代わりに「孔子の弟子」として厳しい学問修行に巻き込まれることになったのだった——。
「陽希、起きて!」
「ぐぅ……あと5分……。」
「ダメ! もうすぐ講義が始まるよ!!」
「な、なんで俺が朝6時から孔子の授業を受けなきゃいけないんだよぉぉぉ……!!」
陽希は布団(藁布団)にしがみつきながら、必死に抵抗していた。しかし、次の瞬間——
「陽希!!! 遅刻は学問の大敵なり!!!」
ドカーン!!!
「ぎゃあああああ!!!???」
孔子の豪快な張り手が炸裂し、陽希は見事に布団ごと吹き飛ばされた。
「いてぇぇぇぇ!!! なんで目覚ましが張り手なんだよぉぉぉ!!!」
「学問の道に怠慢は許されぬ。さあ、授業を始めるぞ。」
「ぐぅぅ……。」
陽希は涙目になりながら、完全に目が覚めた。
論語地獄、開幕
「では、まずは論語の暗唱から始める。」
「えっ。」
孔子が巨大な巻物を広げると、そこにはびっしりと漢文が書かれていた。
「な、何これ……まさか、全部暗記……?」
「当然だ。」
「うそぉぉぉぉぉ!!!!」
陽希は絶望しながら、孔子の厳しい目を見た。
「ええい、やるしかねぇ……!!」
陽希は意を決して、論語を読み上げ始めた。
「えーっと……子曰く、学びて時に之を習う、亦た説ばしからずや——」
「よし、その調子だ。続けよ。」
「ええと……ええと……」
陽希は頑張って続けようとするが——
「……もう忘れた!!!!!」
「学問の道は一日にしてならず。」
「ひぃぃぃ!!!」
陽希はまたもや孔子の張り手を受けて吹っ飛んだ。
「学ぶこと」と「売ること」の違い
「はぁ……はぁ……。」
陽希はボロボロになりながら、必死に論語を復唱していた。
「莉桜……俺、もうダメかもしれない……。」
「頑張って! 陽希!!」
「いや、俺は営業マンなんだぞ!? なんで古代中国で論語を丸暗記してるんだ!??」
「学問は商売にも通じる道理。」
孔子は陽希の肩を叩きながら、真剣な顔で語り始めた。
「陽希よ、お前は商売人であるならば、なぜこの学びが必要なのか分かるか?」
「えっ……?」
「商売とは、ただ物を売るだけではない。相手に信頼され、価値を理解させることこそ、本当の売り方なのだ。」
「……!」
陽希はハッとした。
「つまり、知識を持って話せば、相手に説得力が生まれるってこと……?」
「その通りだ。」
孔子は微笑んだ。
「学問は、商売だけでなく、あらゆる道に通じるのだ。」
「……なるほど……!」
陽希は少し納得しながら、論語を再び読み始めた。
「己の欲せざる所は人に施すことなかれ……。」
「よし、その調子だ。」
こうして、陽希は次第に学問の大切さを理解し始めたのだった。
そして、営業へ——
数日後。
「孔子先生!! 俺、やりましたよ!!」
陽希は自信満々にパステルエナメルを持ってきた。
「これが、俺が考えた「学問を深めるためのパステルエナメル」です!!!」
孔子は興味深そうに陽希の品を見つめる。
「ほう……。」
「このエナメルには、重要な部分を強調するための色がついています!」
「ふむ。」
「そして!! この巻物には、俺がこの数日間学んだ論語を全部カラー付きで書き直しました!!」
孔子は静かに巻物を開く。
「……ほう。」
そこには、しっかりと色分けされた論語が記されていた。重要な部分は赤、補足説明は青、解釈は緑——まるで現代の参考書のように分かりやすくなっていた。
「これは……。」
孔子はしばらく黙った後——
「……うむ、なかなか良いではないか。」
「やったぁぁぁぁ!!!!!」
陽希はガッツポーズを取った。
「では、正式にこれを導入しよう。」
「マジで!??」
こうして、ついにパステルエナメルが孔子の学び舎で正式採用されたのだった。
しかし——
「ただし、陽希、お前は引き続きここで学ぶべし。」
「えぇぇぇぇぇぇ!??」
「学問は終わりなき旅路なり。」
「いやいやいや!! 俺、営業マンなんですけど!!!」
こうして、陽希はまたもや強制的に学問修行に巻き込まれることになるのだった——。
「……俺が、教師……?」
陽希は絶望した顔で孔子を見つめた。
「いやいやいや!! 俺は営業マンですよ!? なんでいきなり教師になるんですか!?」
「学問を深めるには、教えることが最良の方法である。」
孔子は当然のように頷いた。
「商売人としても、相手に価値を伝える力が必要であろう?」
「いや、それはそうですけど……!」
「ならば、授業を始めよう。」
「えぇぇぇぇぇ!??」
陽希が抗議する暇もなく、孔子はすでに準備万端の様子だった。
「お前は今日から、「パステルエナメルと論語を組み合わせた新しい教育法」を実践し、儒学生たちに教えるのだ。」
「俺、そんな大役背負える器じゃないですよぉぉぉ!!!」
陽希、いきなり授業開始!
孔子の学び舎には、すでに多くの弟子たちが集まっていた。
「本日より、新しい学びの方法を教える者がいる。」
孔子が言うと、弟子たちがざわめいた。
「誰ですか、それは?」
「まさか……あの妙な商人では?」
「……はい、それ、俺です……。」
陽希は申し訳なさそうに手を挙げた。
「なぜ商人が私たちに学問を教えるのです?」
「いや、俺も聞きたいよ!!!」
弟子たちは訝しげな目で陽希を見つめている。
「えっと、俺は営業マンなんですけど、孔子先生に学問の大切さを教わりまして……。」
「学問の大切さを知ったなら、なぜ商人なのです?」
「だから、それは——」
「まさか、商売のために学問を利用しようとしているのでは?」
「違う違う違う!!! 誤解だぁぁぁ!!!」
陽希は慌てて手を振ったが、弟子たちは依然として警戒の目を向けている。
「……仕方ない、まずは実践してみよう。」
陽希は覚悟を決め、パステルエナメルを取り出した。
「よーし、じゃあ今日は新しい学習法を試してみよう!!」
パステルエナメルの試験運用!
陽希は黒板のような大きな板を用意し、論語の一節を書いた。
「子曰く、学びて時に之を習う、亦た説ばしからずや」
「ここで、重要な部分を赤で強調!!」
陽希はパステルエナメルで「学び」と「習う」を赤く塗った。
「さらに、補足説明を青で記入!!」
「……。」
弟子たちは興味深そうに見ている。
「えーと、こうやって色を使うと、どこが大事なポイントか一目でわかるんだ!!」
「おお……。」
弟子たちの反応が変わり始めた。
「確かに、重要な部分がはっきりと分かるな……!」
「これは便利かもしれない!」
「おお!! いい感じだ!!」
陽希が喜んだ瞬間——
「……だが、問題がある。」
「えっ?」
孔子が静かに言った。
「色がついていると……字が読みにくい。」
「えぇぇぇぇぇ!??」
「文字はそのままが最も美しい。色をつけることで、却って読みにくくなっておる。」
「くそぉぉぉぉ!!! せっかく好感触だったのに!!!?」
陽希は絶望した。
最後の手段!? 香り付きパステルエナメルの逆転劇!
「待て……まだだ……まだ終わっていない……!!」
陽希は最後の切り札を取り出した。
「孔子先生、では、これならどうですか!?」
陽希は、先日苦労して作った香り付きパステルエナメルを取り出した。
「これを使えば、書いた文字に竹の爽やかな香りがつくんです!!」
「ほう……。」
孔子は興味津々で筆を手に取り、香り付きエナメルを使ってみた。
「……む。」
「ど、どうですか!?」
「これは……」
孔子はゆっくりと顔を上げ——
「悪くない。」
「よっしゃああああああ!!!!!」
陽希はガッツポーズを取った。
「確かに、香りがあると、心が落ち着き、集中できるな。」
「でしょ!! つまり、学問にも最適ってわけです!!」
孔子は満足げに頷いた。
「……よし、この香り付きパステルエナメルを正式に導入しよう。」
「やったぁぁぁぁ!!!」
こうして、ついに香り付きパステルエナメルが孔子の学び舎で正式採用されたのだった。
そして、次の問題……。
「……さて、陽希。」
「はい?」
孔子は静かに微笑んだ。
「お前には、引き続き学問を教えてもらう。」
「ええええええええええ!!!!???」
「学問は終わることがない。次は、弟子たちを指導する立場になってもらおう。」
「待て待て待て待て!!! 俺、営業マンですから!!!」
「ふむ……では、「儒教式営業術」という新たな学問を作るのはどうだ?」
「やめろおぉぉぉぉ!!! なんかよく分からない学問が生まれそうになってるぅぅぅ!!!」
こうして陽希は、またもや孔子の学び舎に閉じ込められ、今度は教師としての試練が待ち受けることになるのだった——。
「営業マンが、教師……?」
陽希は目の前が真っ暗になった。
「いやいやいや!!! 俺、商品を売りに来ただけなのに、なんで教壇に立つ羽目になってんの!??」
「学問を究めるには、教えることが最良の道なり。」
孔子は落ち着いた口調でそう言い、陽希の肩を叩いた。
「それに、君は営業マンなのだろう? 教えるというのは、商品(=知識)を売ることに等しい。」
「いや、言い分は分かるけど!! でも俺、儒教の専門家じゃないし!!!」
「ならば、儒教を用いた営業術を考えればよい。」
「儒教式営業術!??」
陽希の目が点になった。
「ちょっと待って、なんかとんでもない学問を生み出そうとしてません!??」
「ふむ……「論語を活用した究極の交渉術」など、興味深いではないか。」
「やめろぉぉぉ!!! また新しい仕事が生まれるぅぅぅ!!!?」
陽希、まさかの教師デビュー!?
陽希が抗議する間もなく、弟子たちはすでに教室に集合していた。
「さあ、授業を始めよ。」
孔子が厳かに言う。
「ええええええええ!? もう始まるの!??」
陽希は絶望しながら教壇に立たされた。
「ど、どうしよう……。」
「頑張って、陽希……!」
莉桜は心配そうに見守っている。
「よし、ええと……じゃあ、今日は新しい営業術を教えます!!!」
弟子たちはポカンとした顔をしていた。
「営業……術?」
「そう!! たとえば、お前らが何かを売るとするだろ? その時に大事なのは——」
陽希は黒板に大きく書いた。
「信頼こそ最大の資本なり!!!」
「……ほほう?」
孔子が少し興味を持ったようだ。
「商売ってのは、商品を売ることじゃない! 信頼を売ることなんだ!!」
陽希は勢いよく語る。
「たとえば、お前らが町で『すごい薬』を売るとする。でも、誰もお前らのことを知らなかったら、信用しないだろ?」
弟子たちは頷いた。
「じゃあ、どうすればいいか?」
陽希は満面の笑みで言った。
「答えは簡単! まずは、お前らが信用できる人間だってことを証明すればいいんだ!!」
「なるほど……!」
弟子たちが目を輝かせ始める。
「これは意外と……いいのでは?」
孔子が腕を組んで唸っている。
「でしょ!? じゃあ、次!! 交渉術について話すぞ!!」
「論語×営業」驚異のコラボ!?
陽希は再び黒板に大きく書いた。
「己の欲せざる所は、人に施すことなかれ!」
「これは孔子先生の言葉だ!!」
「おお!!」
弟子たちの目が輝く。
「この言葉、営業にも通じるんだ!! つまり、相手の立場に立って考えろってことだ!!」
陽希は板書しながら説明を続ける。
「例えば、お前らが売りたいものがあったとして、それをゴリ押しで売ったらどうなる?」
「……嫌われる?」
「そう!! だから、まずは相手が本当に必要としているものを考えろ!!」
「おおお……!!」
弟子たちがどんどん前のめりになっていく。
「つまり、営業は——相手の悩みを解決すること!! それができれば、自然と物は売れるんだ!!!」
「おおおおお!!!!」
弟子たちが拍手をする。
「やった!! なんかめっちゃ盛り上がってる!!!」
陽希はテンションが上がった。
「では、実践してみよ。」
「え?」
孔子が静かに言った。
「では、弟子たちに何かを売ってみるがよい。」
「え、えええ!? 俺が売るんですか!??」
「当然だろう。」
ーーー
実践販売!! 陽希、論語で営業!?
陽希は慌てながら、手元のパステルエナメルを手に取った。
「よ、よし……じゃあ、お前らにこのパステルエナメルを売る!!!」
弟子たちがざわめく。
「パステルエナメル……?」
「なぜ我らにそれが必要なのか?」
「お、お前らは学問を学んでいるよな?」
「うむ。」
「じゃあ、重要なポイントを見やすくするのは大事だよな?」
「うむ……。」
「このパステルエナメルを使えば、書物の重要な部分を強調し、より深く学問を理解できる!!」
「……!!」
弟子たちが興味を持ち始める。
「さらに!! この特製パステルエナメルには、竹の香り付き!! 落ち着いた気持ちで学問に取り組める!!」
「な、なんと!!」
「そして、今なら特別価格!! 二本買えばもう一本おまけ!!!」
「おおおおお!!!」
弟子たちは歓声を上げ、次々に財布(当時の貨幣袋)を取り出した。
「買う!!」
「私も!!」
「よっしゃああああ!! 売れたぁぁぁぁ!!!」
陽希は大喜びでガッツポーズを決めた。
ーーー
こうして、新たな営業哲学が生まれた——。
「ふむ……。」
孔子は静かに目を閉じ、深く頷いた。
「「儒教式営業術」……これは意外と、使えるかもしれぬ。」
「やめろぉぉぉ!! 変な学問を生み出すなぁぁぁ!!!?」
陽希の悲鳴が響き渡る中、こうして「論語を活かした営業術」という謎の学問が正式に誕生し、孔子の学び舎で実践されることになったのだった——。
陽希が売り込んだ「パステルエナメル&論語営業術」は、想像以上に弟子たちに大好評だった。
「これ、学びにすごく役立つな!」
「香りもいいし、書物が見やすくなる!」
「先生! もっと営業のコツを教えてください!!!」
「えええええ!??」
陽希は驚いた。
「ちょっと待って!? 俺、ただパステルエナメルを売りに来ただけなのに、なんで営業の先生みたいになってんの!??」
「君の話を聞いて、商売にも学問と同じく道があると感じた。」
孔子は腕を組んで頷いた。
「ならば、陽希よ——「営業の極意」を正式に教えてくれ。」
「な、なんでそうなるのぉぉぉぉ!!!!!」
陽希の悲鳴が響く中、「孔子の学び舎で営業研修が始まる」という、誰も予想しなかった展開に突入してしまった——。
ーーー
「儒教式営業研修」開幕!!
翌日——
「おいおい、なんでこんなことになってんだよ!!!」
陽希が呆然と見つめた先には、机を前に正座し、真剣な眼差しを向ける弟子たち50人がいた。
「……あの、皆さん、これから営業の授業を始めるんですか?」
「はい!! 陽希先生!!!」
「やめてぇぇぇ!! 先生とか呼ばないでぇぇぇ!!!!」
「静粛に。」
孔子の一喝が響く。
「営業とは何か? その本質を学ぶことも、立派な学問である。」
「いやいやいや!! 俺、こんなつもりじゃなかったんですけど!??」
「では、まずは君の理論を述べよ。」
「ええええ!??」
陽希は混乱しながらも、やむを得ず教壇に立った。
「……じゃ、じゃあまずは……基本的な営業の流れから説明します!!」
陽希は黒板(木板)に大きく書いた。
営業の基本三か条
相手を知ることがすべての始まり
押し売りは絶対にダメ! 信頼を築け!!
商品ではなく、価値を売れ!!!
「おおおお……!!!」
弟子たちの目が輝く。
「なんか、めっちゃ食いついてる!??」
ーーー
営業実践!「顧客のニーズを見極めよ!!」
「では、今から実践だ!!」
陽希は勢いよく弟子たちに告げた。
「お前ら、一人ずつ俺に商品を売り込んでみろ!!」
「ええっ!? 私たちが!?」
「そうだ!! 実際にやってみないと意味がない!!」
弟子たちはざわめいたが、すぐにやる気を出して、一人が前に出た。
「では、私は……この高級な筆を売ります!!」
「よし、じゃあ売り込んでみろ!」
「この筆は最高級の毛で作られており、書き味が抜群です!! いかがですか?」
陽希は即座に首を振った。
「ダメダメ!! 俺に売るなら、俺が何を求めているかを考えろ!!」
「え……?」
「俺、字を書くのがめちゃくちゃ苦手なんだよ!!」
「えぇ!??」
「そんな俺に、『この筆は書き味が抜群』って言われても、刺さらないだろ?」
弟子はハッとした。
「じゃあ……先生は、書くことが苦手なんですね?」
「そうだ!!」
「ならば……この筆は、筆圧を調整しやすく、初心者でも滑らかに書ける特別仕様です!!」
「おお!? それなら欲しいかも!!」
「つまり、相手のニーズを見極めて、それに合った売り方をしないとダメってことだ!!!」
「な、なるほど!!!」
弟子たちが感動し始める。
「す、すごい……営業って、まるで哲学のようだ……!!」
「商売と学問に共通点があるなんて!!!」
孔子も満足げに頷いていた。
「ふむ……これは、我々の学び舎にも取り入れる価値があるな。」
「やめろぉぉぉ!!! 儒教の歴史を変えるなぁぁぁぁ!!!!!」
ーーー
そして、謎のカリキュラムが爆誕する……。
それから数日後——
孔子の学び舎では、驚くべき変化が起こっていた。
「おい、何やってるんだ!?」
陽希が驚いて見た先では——
「商売の極意を学ぶための模擬市場」が開かれていた。
「な、何これ!?」
「学問の実践の場です!」
「我ら、論語を活かした営業力を鍛えるために、市場を作りました!!」
「顧客のニーズを分析し、最適な商売を行います!!」
「新たな儒教ビジネスの誕生だ!!!」
「やめろぉぉぉ!!! なんか歴史を改変してるぅぅぅ!!!」
陽希の叫びもむなしく、孔子の学び舎では、新たに「商売繁盛学問」という謎のカリキュラムが誕生してしまった。
こうして、陽希は知らぬ間に「儒教×営業の第一人者」として歴史に名を刻んでしまうことになったのだった——。
ーーー
そして、次のトラブルへ——
「はぁ……やっと解放された……。」
陽希は疲れ切った顔で学び舎を後にした。
「でも、意外といい授業だったね。」
莉桜が微笑む。
「……まあ、営業の本質は伝えられたかもな。」
「でも、次はどこに行くんだろう?」
「さあ……でも、次こそは普通の営業を——」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
「うわぁぁぁ!?!?」
突然、地面が揺れ、陽希と莉桜はまた時空の狭間に飲み込まれた。
「いやだぁぁぁ!! また新しいトラブルがぁぁぁ!!!」




