第63章 アイザック・ニュートンと深夜番組
陽希と莉桜が降り立ったのは、17世紀のイギリス・ケンブリッジだった。
空はどんよりと曇り、冷たい風が吹き抜ける。レンガ造りの建物が並び、道を歩く人々は厚手のマントを羽織っている。
「おおお……これが17世紀のイギリスか!!」
陽希は感慨深げに周囲を見渡した。
大学の門をくぐると、学者風の男たちが分厚い本を抱えて議論している。
莉桜は手元の地図を確認しながら言う。
「そして今回の相手はアイザック・ニュートンですね」
「えぇぇ!? あの万有引力の法則の!?」
「はい。物理学の基礎を築いた天才ですが、とても偏屈で、研究に没頭すると周りが見えなくなる人です。」
「うわぁ……またしてもクセが強そうな相手だな……」
陽希はため息をつきながら、鞄の中を確認した。
「で、今回売るのは……深夜番組!?」
「……え?」
莉桜も困惑する。
「いやいやいや!!! なんで17世紀の科学者に“深夜番組”を売るんだよ!!!」
「そもそも、当時テレビがないじゃないですか!!!」
「知らねぇぇぇぇぇ!!! 俺も分からん!!!」
陽希は頭を抱えながら、ニュートンの研究室へと向かった――。
天才科学者との対面、しかしまさかの……!?
ニュートンの研究室の扉をノックすると、中から何やら激しい物音が聞こえてきた。
「むむむ……!! 計算が合わん!! なぜだ!!」
(うわぁぁ……めちゃくちゃイライラしてる声だ……!!!)
「失礼しまーす!! 商談に来た者ですが!!」
扉を開けると――
床一面に計算式が書かれた紙が散乱し、中央では一人の男が頭を抱えていた。
アイザック・ニュートン――天才物理学者。
ボサボサの髪に、疲れ果てた表情。机の上には空になったインク瓶が転がり、ろうそくは燃え尽きかけている。
(お、おおおお……これがニュートンか……思ってた以上にやばい雰囲気だぞ!?)
ニュートンは目を細めながら、陽希を睨んだ。
「君は……誰だ?」
陽希は慌てて一礼した。
「私は陽希!! 旅の商人です!! ニュートン先生に、特別な商品をお届けに参りました!!」
「……商人?」
ニュートンは怪訝そうな顔をする。
「私は今、研究に忙しい!! 無駄な時間を割く気はない!!!」
(い、いきなり拒絶されたぁぁぁ!!!)
莉桜が小声で囁く。
「陽希さん、ニュートン先生はとにかく研究に没頭しすぎて、食事や睡眠を忘れることがある人ですよ……!」
(まじかよぉぉぉ!!! こんな人に“深夜番組”を売れってどういうことぉぉぉ!!!)
陽希は気を取り直して、売り込みを開始する。
「ですが!! こちらの“深夜番組”は、ニュートン先生にとって必ず役に立つものです!!!」
ニュートンは眉をひそめる。
「……しんやばんぐみ? 何だ、それは?」
(そりゃそうだ!!! 17世紀に深夜番組なんてねぇぇぇぇ!!!)
陽希は必死に説明を試みる。
「これはですね!! 夜遅くに放送される、娯楽や情報満載の映像番組です!! これがあれば、忙しい日々の合間にリラックスできます!!」
ニュートン:「……くだらん」
(ぎゃあああああ!!! 即却下されたぁぁぁ!!!)
ニュートンは冷めた目で陽希を見つめる。
「私は研究に没頭しているのだ。そんなものに時間を割く暇などない!!」
(ぐぬぬぬぬ!!! 完全に論破されてる!!!)
ニュートンはさらに続ける。
「それに、夜は研究をする時間だ。“娯楽”などというものは、人間の進歩を妨げるだけだ!!」
(な、なるほど……!!! って、それじゃあ俺の商品が売れねぇぇぇ!!!)
莉桜が耳元で囁く。
「陽希さん……これはかなり手強いですね」
(分かってるよぉぉぉ!!!)
陽希は必死に考えた。
(このままじゃ絶対売れない……何か、何か突破口は……!!)
すると――
ゴォォォォォォン!!!
突然、外で大きな鐘の音が鳴り響いた。
「……?」
ニュートンが顔を上げた瞬間――
バシャァァァァン!!!!
部屋の天井が一部崩れ、リンゴがどさっと降ってきた!!!
陽希:「(な、なんだ!?)」
莉桜:「えええ!? もしかして“あの”リンゴのエピソードが今ここで!!?」
ニュートン:「……これは!!!」
彼はリンゴを拾い上げ、目を輝かせた。
「万有引力……!!! そうか、これはまさに私の理論を証明する現象だ!!!」
(うおおおお!!! これが歴史的な瞬間かぁぁぁ!!!)
ニュートンは興奮しながら、どんどん計算を書き始める。
「よし……よし……!! これなら……!!!」
しかし――
バタリ!!!
(えっ!?)
ニュートンが、突然机に突っ伏して気を失った。
陽希&莉桜:「えええええええええ!?!?!?」
「……すぅ……すぅ……」
(ま、まさか……興奮しすぎて気絶した!?)
莉桜:「陽希さん、もしかしてニュートン先生、寝てないのでは!?」
(えええええ!!! そんな状態で研究してたの!?!?)
陽希は急いでニュートンを起こそうとしたが――
「……むにゃむにゃ……法則が……」
(や、やばい!!! これはこれで貴重な瞬間かもしれんが、売り込みどころじゃねぇぇぇ!!!)
こうして、陽希は“寝落ちしたニュートンをどうするか”という新たな問題に直面するのだった――!!!
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(や、やばい……ニュートンが寝ちまった……!!!)
陽希は頭を抱えながら、机に突っ伏したニュートンを見つめる。
ぐっすりと眠り込んでいる。
先ほどまで天才的な計算をしていたとは思えないほど、完全に無防備な寝顔だ。
「すぅ……すぅ……万有引力……むにゃむにゃ……」
(ちょっと待て!!! これ、どうすりゃいいんだ!?)
莉桜がニュートンの机の上に転がっている紙を拾い上げる。
「陽希さん、見てください……これ、昨日からの研究記録ですよ」
「昨日から?」
「いえ、それどころか……どうやらニュートン先生、ここ数日間ずっと研究し続けて、寝てなかったみたいです。」
(おおおおおお!!! そりゃあ、倒れるわけだぁぁぁ!!!)
「つまり、彼は睡眠をとる時間すら惜しんで、研究に没頭していたんですね……」
「うわぁ……なんかめっちゃ意識高ぇぇぇ……」
「でも、このままじゃニュートン先生、体を壊してしまいます!!」
(それはマズい!!! でも……こんな状態で、どうやって“深夜番組”を売ればいいんだ!?)
陽希は腕を組んで考え込んだ。
(ん? ちょっと待てよ……?)
「……莉桜、もしかして、これって“深夜番組”の必要性を証明できるんじゃね?」
莉桜:「え?」
「深夜番組ってのは、夜中にのんびり見るためのものだろ?」
「はい」
「でも、ニュートンみたいに寝る間も惜しんで研究してるやつにとっては、深夜番組を見ることで、強制的にリラックスする時間を作れるんじゃないか!?」
莉桜:「!!!」
(そうだ!! 俺は今、ニュートンに“エンタメ”を売ろうとしてるわけじゃない!!!)
(深夜番組=休息の時間の大切さを伝えるためのツール!!)
(そう考えれば、これはむしろニュートン先生にピッタリの商品なんじゃね!?)
陽希は気合を入れ、ニュートンの肩を優しく揺さぶった。
「ニュートン先生!! 起きてください!!!」
「むにゃ……ん? ……ああ、君か……」
ニュートンはぼんやりと目を開け、ゆっくりと体を起こす。
「……すまん、どうやら寝てしまったようだ」
「そりゃそうですよ!!! 先生、ここ数日まともに寝てなかったんでしょ!?」
「……研究とは時間との戦いなのだ。私はまだまだ知りたいことが山ほどある……!!」
ニュートンはキリッとした表情を浮かべるが、目の下にはクマができており、体は明らかに限界を迎えている。
(おおお……もう完全にブラック企業の社員みたいになってる……!!!)
陽希は大きく深呼吸し、力強く言った。
「先生!! だからこそ、この“深夜番組”が必要なんです!!!」
「……?」
ニュートンは不思議そうに首を傾げる。
「これは、単なる娯楽ではありません!!! 深夜にリラックスするための最高のツールです!!」
「研究者にとって最も大事なのは、冷静な思考と、鋭い判断力!! でも、疲れすぎたら、まともな計算もできなくなる!!」
ニュートン:「……確かに、それはそうだな」
「だからこそ!! 深夜番組を見ながら適度にリラックスし、頭を休める時間が必要なんです!!」
ニュートン:「……なるほど」
(おおおお!? なんか意外と納得しそうな雰囲気!?)
ニュートンは腕を組み、考え込む。
「……では、その“深夜番組”とやらは、どのようなものなのだ?」
(きたぁぁぁ!!! ここが勝負どころだ!!!)
陽希はバッグから、深夜番組のサンプル映像(巻物に描かれた内容)を取り出し、見せる。
「例えば、これは“夜の街をぶらぶら歩いて、面白い店を紹介する番組”です!!」
ニュートン:「……?」
「これは“世界の不思議な現象を解説する番組”!! 例えば、重力や光の屈折についても解説しているんですよ!!」
ニュートン:「!!!」
(きた!!! ここで食いついた!!!)
「先生が好きな科学についても、楽しく学べる番組がたくさんあります!!」
「つまり、深夜番組は、ただの娯楽ではなく、研究者にとっても有益なものなんです!!!」
ニュートン:「……ふむ」
ニュートンは少し考えた後、目を細めて微笑んだ。
「面白い」
(やったぁぁぁぁぁぁ!!!!)
「君の言うことも一理あるな。確かに、休息の時間を意識的に取ることも、研究者として重要なのかもしれん」
「でしょ!??」
「では、その“深夜番組”とやら……買おう」
(よっしゃぁぁぁぁ!!!)
陽希は思わずガッツポーズをした。
ニュートンは巻物をじっくりと見ながら、ニヤリと笑う。
「さて……これを見ながら、少し休むとしようか」
(ああ……まさかニュートン先生が“深夜番組を見る習慣”を持つことになるとは……!!!)
莉桜:「陽希さん、また歴史に妙な影響を与えてしまいましたね」
「うん、俺もそんな気がする……」
こうして陽希は、またしても歴史の偉人に“よく分からない文化”を広めることに成功してしまったのだった――。
第63章 アイザック・ニュートンと深夜番組 終




