第76章 「芥川龍之介とTheの謎!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
またしても時空の渦に飲み込まれた陽希と莉桜。
ドガァァァァン!!!!
「いてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
陽希は地面に顔面から着地し、泥まみれになった。
「陽希、大丈夫!? って、あれ?」
莉桜が顔を上げると、二人は見覚えのない昭和の街並みにいた。
「ん? ここ、なんか近代的じゃない?」
「うわっ!! なんかレトロな喫茶店があるぞ!」
周囲には古い看板、モダンな装いの人々、そして文学を愛する人たちが集まるような雰囲気の店が並んでいた。
「ちょっと待て……この雰囲気、まさか……。」
「え、どうしたの?」
「ここ、昭和初期じゃないか!?」
「ってことは……!!!」
その時、喫茶店の中から、とある人物がゆったりとした足取りで現れた。
痩せ型の体、知的な眼差し、そしてどこか影を感じさせる雰囲気——
「こ、これはまさか……!!!」
陽希と莉桜は同時に叫んだ。
「芥川龍之介!!!!!!」
「おおお!? 文豪が来たぁぁぁ!!!」
ーーー
陽希、昭和の喫茶店で営業開始!?
芥川龍之介は、静かに二人を見つめた。
「……君たちは?」
「ええと!! 私たちは営業マンです!!!」
陽希は勢いよく頭を下げた。
「本日はこちらの素晴らしい商品を売りに来ました!!!」
芥川はゆっくりと頷く。
「ほう……営業か。何を売るのだ?」
「ええと……こちらです!!!!」
陽希は胸を張り、堂々と商品を掲げた。
「Theです!!!!!」
「……。」
しーーーーーーん……。
昭和の街並みが、一瞬で静寂に包まれた。
芥川は静かに問いかける。
「……The?」
「はい!!」
「それは、何か?」
「英単語のTheです!!!」
「……。」
「いやぁ、Theってすごいんですよ!! どんな文章にも付けられるし、英語には欠かせない存在なんです!!!」
「……。」
芥川は眉をひそめた。
「……君は、私に英単語を売るつもりか?」
「はい!!! いかがでしょうか!!?」
「……いらぬ。」
「ええええええええええええええええ!?!?!?」
ーーー
「Theは文学に必要?」 陽希、まさかのプレゼン!
「ちょっと待ってください!! なんで即却下なんですか!?」
陽希は慌てて抗議する。
「Theはめちゃくちゃ便利ですよ!! 例えば、小説のタイトルにも使えるし!!」
「ほう……?」
芥川は興味なさそうに腕を組んだ。
「例えばですね……『羅生門』のタイトルを『The 羅生門』にすれば、一気にグローバル感が増します!!!」
「……。」
芥川はじっと陽希を見つめた。
「……それは、余計なものではないか?」
「えええええ!?!?!?」
「タイトルは簡潔であるほど美しい。『羅生門』で十分ではないか?」
「いや、でも!! Theがついたら、なんかこう……海外受けしそうな感じがしません!?」
「……例えば?」
「えーっと、『The 鼻』とか!!!」
「いらぬ。」
「ぎゃああああ!!!!!」
陽希は机に突っ伏した。
ーーー
「Theの必要性」論争、白熱!?
芥川は冷静な目で陽希を見た。
「私の文学に『The』は不要だ。」
「そ、そんなぁぁぁ!!!」
「文学とは、無駄を削ぎ落とし、最小限の言葉で最大の表現をするもの。余計な装飾はいらぬ。」
「ちょっと待ってください!! じゃあ、例えばこんなタイトルはどうですか!?」
陽希は大きく黒板に書いた。
『The 蜘蛛の糸』
芥川は無言のまま、じっと黒板を見つめる。
「ほら、なんかそれっぽくなりません!?」
「……。」
「ね? ね!??」
「……ならば、試しに書いてみるか。」
芥川は筆を手に取り、紙に『The 蜘蛛の糸』と書いてみた。
「……。」
「どうですか!?」
芥川は、紙をじっと見つめ——
「ダサい。」
「ぎゃあああああああ!!!!!」
陽希は絶望して地面に崩れ落ちた。
ーーー
最後のチャンス!? Theで文学を変えろ!!
「くそぉぉぉ!!! ここまで来たら、意地でもTheを売ってやる!!!」
陽希は机を叩き、必死に説得を続けた。
「先生、考えてください!! Theをつけることで、文学が新時代に突入するんですよ!!!」
「ふむ……。」
芥川はしばらく考えた後——
「……ならば、試しに『The 芥川龍之介』と名乗ってみよう。」
「えぇぇぇ!?!?!?」
「どうだ? かっこいいか?」
「えーっと……なんか、文豪というより、バンドマンみたいになってます!!!」
「……。」
芥川は静かに筆を置いた。
「やはり、いらぬな。」
「ギャアアアアア!!!!!」
そして、新たな時代へ——
「はぁ……結局Theは売れなかった……。」
陽希は肩を落とした。
「でも、意外と楽しんでたね?」
莉桜が微笑む。
「いや、途中でノリノリになってましたよね!??」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
「うわぁぁぁぁ!? また来たぁぁぁ!!!」




