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偉人相手に商談!?陽希がんばります!  作者: 乾為天女


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第70章 「上杉謙信と合わせ鏡の呪い」

 陽希と莉桜が次に飛ばされたのは、日本の戦国時代だった。目の前には堂々たる城がそびえ立ち、遠くには山々が広がっている。時代劇のセットのような雰囲気に、陽希は思わず感嘆の声を上げた。


「おおお! ついに戦国時代か! これはワクワクするぞ!」


「でも…ちょっと待って。ここってどこ?」


 莉桜が不安そうに周囲を見回す。すると、近くの武士が何やら騒いでいるのが聞こえてきた。


「謙信公がご乱心なされた!!」


「ええっ!??」


「どういうこと!?」


 陽希と莉桜は慌てて城の中へ駆け込んだ。そこでは、上杉謙信が自らの部屋で何かを見つめながらブツブツと呟いていた。


「貴様……なぜそこにいる……?」


「……えっ?」


 陽希が恐る恐る謙信の視線の先を追うと——そこには二枚の鏡が向かい合って置かれていた。


「こ、これは……合わせ鏡!!?」


 陽希は思わず叫んだ。


「貴様、無限に増殖するつもりか……!? それとも、これは異世界への入り口……?」


「いやいやいや!! ちょっと待って!!!」


 謙信の視線は異様に鋭く、何かに取り憑かれたように鏡を睨んでいる。


「もしかして、謙信公、鏡の中の無限の自分に混乱しているのでは……?」


 莉桜が小声で囁く。


「えっ!? そんなことで!??」


「貴様!! そこに映るお前は何者だ!!!」


 謙信が叫び、突然、木刀を振りかざして鏡に突進した。


 バキィィィン!!!!


「ぎゃあああ!! 鏡割れた!!」


「貴様、何者だと聞いている!!!」


「俺じゃねぇぇぇ!!! 鏡だよ!! 鏡の自分だよ!!!」


 陽希は慌てて手を振るが、謙信はさらにヒートアップしている。


「ふむ……お前は私の中に潜むもう一人の私か?」


「違います!! 俺は営業マンです!! 今日はあなたに素晴らしい商品をご提案しにきました!!」


「……ふむ。」


 謙信は一瞬動きを止めた。


「何を売るのだ?」


「合わせ鏡です!!!」


「ふざけるなぁぁぁ!!!!」


 バキィィィン!!!!


 もう一枚の鏡が叩き割られた。


「ちょっと待って!! まず話を聞いて!!!」


「なぜこの不吉な道具を売りつけようとする!??」


「いやいやいや!! これ、めちゃくちゃ便利なんですよ!!!」


 陽希は慌てて説明を始める。


「例えば! これがあれば、鏡の角度を調整することで、後ろ姿が簡単に確認できます!!」


「……ほう?」


「剣の構えを確認するのに最適!! 美しい立ち姿を研究するのにも使えるんです!!」


「ふむ……。」


 謙信は腕を組み、しばし考え込む。


「確かに、戦場での姿勢は重要だ。」


「そうなんです!! さらに、敵の動きを反射で確認するのにも役立ちます!」


「それは……。」


 謙信は再び鏡を見つめる。しかし、次の瞬間——


「……む!? 貴様、またそこにいるのか!!!」


「違う違う違う!!! それはただの反射ぁぁぁ!!!!」


 バキィィィン!!!!


「また割れたぁぁぁぁ!!!!」


「くそっ! 何度倒しても消えぬとは!! これが妖術か!!!」


 謙信の理不尽な攻撃は続き、次々に鏡が犠牲になっていく。


「ちょっと待ってください!! これ、高いんです!!!」


「知るか!!! こんなもの、余には不要!!! こんなに分裂されてはたまらぬ!!」


「いや、分裂してないってば!!! それはただの反射!!!」


 しかし、謙信はまったく聞く耳を持たない。ついには陽希が必死で鏡を抱え込み、盾のように防ぐはめになった。


「や、やばい!! どうすればいいんだ!!?」


 莉桜は必死で考え——


「……陽希、これ、変な話だけど、"合わせ鏡が吉兆を呼ぶ"っていう話をしない?」


「えっ?」


「ほら、戦国時代なら験担ぎを信じるかもしれない!」


「なるほど!!」


 陽希は咄嗟に叫んだ。


「謙信公!! この鏡、実は勝利を呼ぶ鏡なんです!!!」


「なに!?」


 謙信の動きが止まる。


「この鏡を割らずに持っていれば、天下統一も夢ではない!!」


「ほ、本当か……?」


「はい!!! 逆に割ると不吉なことが!!!」


「……むぅぅぅ!!!!」


 謙信は青ざめた顔で鏡の前に正座した。


「では……どうすればよい?」


「鏡に向かって誓いを立ててください! そうすれば、戦のたびに勝利が訪れます!!!」


 謙信は真剣な顔で鏡を見つめる。そして、静かに言った。


「我、鏡を割らず、勝利を手にすることを誓う。」


「よし!!!!」


 陽希と莉桜は、無事に鏡を売りつけることに成功した。


 しかし、その後、謙信が毎晩鏡に向かって誓いを立て続け、城中が不気味な雰囲気に包まれることになるのは、また別の話——。


 第70章 「上杉謙信と合わせ鏡の呪い」 終



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