第69章 「エリザベス1世とナンバリング地獄」
陽希と莉桜が次に飛ばされたのは、荘厳な城の中。壁には巨大なタペストリーがかかり、床はピカピカの大理石。豪華絢爛、まさに王宮そのものだった。
「おおっ!? ついに貴族社会へ!!」
「でも、ここって…どこの時代?」
莉桜が不安そうに辺りを見回すと、遠くで誰かが叫んでいる。
「余に会わせろ! 余がエリザベス1世だ!!!」
「……え?」
振り向いた瞬間、そこには派手なドレスに身を包んだ女性がいた。金色の髪を高く結い上げ、目つきは鋭く、威厳たっぷり——そして、今にもキレそうな顔をしている。
「うわぁああ!! いきなりテンションMAXの人がいる!!」
「貴様ら、何者だ!!?」
「ええと! 私たちは営業マンでして! 本日はあなたに素晴らしい商品をご提案しに参りました!!!」
「ほう…どんなものだ?」
「ナンバリングです!!!」
エリザベス1世の表情が固まる。
「……なんだそれは?」
「ナンバリング! つまり、物事に番号を振ることで、管理がしやすくなるシステムのことです!!!」
「番号?」
エリザベスは腕を組んで考え込む。
「そんなもの、必要ないのでは?」
「いやいやいや!!! 必要なんですよ!!!」
陽希は汗を拭いながら熱弁を振るう。
「例えば、あなたの財宝! 何がどこにあるか、管理ができていますか!? もし泥棒が入って、一個だけなくなっても気づかないんじゃないですか!?」
「むっ…確かに…。」
エリザベスの表情が少し変わる。
「そして、兵士の装備! 剣がどこに何本あるか、わかってます!? いちいち確認するの面倒じゃないですか!?」
「それも…あるな。」
「そこで!!!」
陽希は懐から小さなスタンプを取り出した。
「このナンバリングスタンプ!! これさえあれば、どんなものにも番号を振ることができます!!!」
エリザベス1世はじっとスタンプを見つめ——
「……面白い。」
「おおっ!?」
「では、試してみよう。」
エリザベスは近くの書類にスタンプを押してみた。
ポンッ!【No.001】
「おお…!」
「どうです!? 便利でしょう!!!」
「確かに…これは——」
その時、近くにいた執事らしき男が飛び込んできた。
「陛下!! 緊急事態です!!!」
「何事だ!?」
「王宮の財宝がどこにあるかわからなくなりました!!」
「……ええっ!? ちょっと待て、どういうことだ!?」
「最近、記録が混乱し、どの部屋に何があるのか、誰も把握できておりません!!」
「だから言ったじゃないですか!! ナンバリングが必要だって!!!」
陽希は得意げに腕を組んだ。
「では、ナンバリングスタンプを使い、すべての財宝に番号を振る!」
「了解!! では、さっそく!!」
王宮の使用人たちが次々にナンバリングを押し始める。
ポン!【No.002】
ポン!【No.003】
ポン!【No.004】
「いいぞいいぞ! これでどこに何があるかわかる!」
「……いや、ちょっと待て。」
エリザベス1世が突然、顔をしかめた。
「なぜか、番号がバラバラなのだが?」
「えっ?」
陽希が財宝のリストを確認すると——
No.001:王冠
No.008:剣
No.003:黄金の皿
No.115:銀のカップ
No.074:宝石箱
No.002:ネックレス
「……えっ!??」
「ちょっと待て! なんでこんなに番号が飛びまくってるんだ!!?」
「申し訳ありません!! 我々、適当に押しておりました!!」
「適当ってなんだよ!!??」
陽希が叫ぶ中、すでに王宮はナンバリングの嵐。至る所にスタンプが押され、混乱は深まるばかりだった。
「陛下! この皿にNo.99999が付いています!!!」
「そんなに財宝あったっけ!??」
「陛下!! 壁にNo.042が…!」
「壁に押すな!!!」
「陽希!! これ、大混乱を生んでるよ!!」
莉桜が焦る中、王宮内はカオス状態。
「くっ…ならば!」
陽希は最後の手段に出た。
「ナンバリングシステム・リセットボタンを押します!!」
「リセット!? そんなのあるのか!?」
「ええい!! 押してしまえ!!!」
ポチッ——
次の瞬間、すべてのナンバリングが消えた。
「おおっ!!!」
「すごい!!」
「これなら、最初からやり直せる!!!」
エリザベス1世は満足そうに頷いた。
「よし! では、正式にナンバリングを導入しよう! もちろん、きちんと順番通りに!」
「やったーーー!!!」
こうして陽希はナンバリングスタンプを正式に納品。だが、その後、エリザベス1世の財宝が「No.007」と名付けられ、密かに「スパイ道具」として利用されたとか、されなかったとか——。
第69章 「エリザベス1世とナンバリング地獄」 終




