第68章 「テスラと謎のハーモニカ」
異世界へ飛ばされた陽希と莉桜は、いつものように状況を把握する間もなく、奇妙な光景に包まれた。目の前には高層ビルのような巨大な塔がそびえ立ち、周囲には無数の電線が張り巡らされている。まるで未来都市のようなこの場所——しかし、すぐに違和感に気づいた。
「……電気がピリピリしてるんだけど!?」
陽希は腕をこすりながら周囲を見渡した。時折、空中に青白い稲妻が走り、電気の火花がバチバチと音を立てる。
「ここ……本当に安全なの?」
莉桜も少し怯えた様子で陽希の背中に隠れた。その時——
「貴様ら、なぜここにいる?」
雷鳴のような低い声が響く。
振り向くと、そこに立っていたのは長身の男。髪はボサボサ、目はギラギラと輝き、手には何やら奇妙な機械を握っている。
「こ、こんにちは! あなたは——」
「ニコラ・テスラだ。」
「うわぁぁぁ!! 天才発明家キターーー!!」
陽希は思わず感激して飛び跳ねたが、次の瞬間——
「危ないっ!!」
ズバァァン!!!
目の前に巨大な雷が落ち、陽希は全身をビリビリさせながら硬直した。
「が……が……が……!!」
「陽希がショートしてる!?」
莉桜は慌てて陽希の背中をバシバシ叩いた。
「テスラさん! ちょっと危なすぎません!?」
「ふむ。問題ない。電気は生命の本質。適量なら人体にも有益だ。」
「適量じゃないよ!! 完全に感電したよ!!」
陽希はまだ体を震わせながら、なんとか立ち直る。
「……で、君たちは何者だ?」
「えっと……アイテムの営業マンです! 今日はこちらの素晴らしい商品を売りに来ました!」
「ほう? それは?」
陽希は誇らしげに掲げた。
「ハーモニカです!!」
テスラの表情が一瞬止まる。
「……ハーモニカ?」
「はい! この美しいメロディーが、あなたの研究にインスピレーションを与えること間違いなし!」
「……待て。」
テスラは陽希の手からハーモニカを取り上げると、まじまじと眺めた。
「私は電気の未来を創造しているのだ。なぜ音楽が必要なのだ?」
「いやいやいや! 音楽と発明は切っても切れない関係ですよ!」
陽希は勢いよく語り始める。
「音楽を聴くことで脳が活性化し、新しいアイデアが浮かぶ! それに、発明家って大体、変わった趣味を持ってるじゃないですか!」
「……ふむ。」
テスラは少し考え込んだ。しかし、次の瞬間——
「いや、やはり不要だ。」
「えぇーーー!!?」
「私はすでに電気の音を聞いている。雷の轟き、電流の流れ、そのすべてが私の音楽だ。」
「えっ、それもう完全にバリバリのSF主人公のセリフじゃないですか!?」
「君のハーモニカなど、私には不要だ。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! だったら、このハーモニカを改造して、エレクトリックハーモニカにすればどうですか!?」
テスラの目がキラリと光る。
「……ほう。」
「たとえば、吹くだけで電流が流れて、空間に音の波を作り出すとか! 雷の音を再現できるとか! これならあなたの研究にも役立つはず!」
テスラはハーモニカをしげしげと眺め——
「……悪くない。」
「おおっ!?」
しかし、テスラは次の瞬間、陽希からハーモニカを取り上げると、自分の装置に繋げてしまった。
「えっ?」
「では、試作してみよう。」
テスラがスイッチを押すと——
バチバチバチバチ!!!
巨大な雷がハーモニカに走り、次の瞬間——
「ピュウウウウウゥゥゥゥン!!!!!」
「うわああああああああ!!!!!」
ハーモニカが暴走し、陽希の手から離れ、空中で勝手にメロディを奏で始めた。
「これ……どうなってるんですか!?」
「想定外だ。」
「ちょっっっ!!!! 天才が言っちゃいけない言葉!!!??」
ハーモニカは暴走し続け、周囲の電線に絡まり、ついには空中で巨大な雷を発生させる。
「陽希! 逃げて!」
「どうすりゃいいんだよこれええええ!!!」
テスラは少し考えた後、バツン! とスイッチを切った。
すると、ハーモニカは一瞬で静かになり、床に落ちた。
「……お?」
陽希はそっと拾い上げる。
「直った?」
「いや、壊れたな。」
「おおおおおい!!!」
「まぁ、買おう。」
「なんで!?」
「これは面白い。改造すれば、新たな発明のヒントになる。」
「えええええ!!? じゃ、じゃあお代は——」
「研究予算の都合で……3ゴールドしか出せん。」
「安ッ!!!!!」
こうして、陽希はハーモニカを無事(?)売ることに成功したが、電気ハーモニカはその後「危険すぎる」として封印されたとかされなかったとか——
第68章 「テスラと謎のハーモニカ」 終




