第67章 「ピカソと√(ルート)の謎」
陽希と莉桜は、今回も異世界へと飛ばされた。しかし、今回はどこか奇妙な雰囲気が漂っている。目の前に広がるのは、まるでキュビズムの絵画の中に入り込んだような風景——建物は歪み、色彩は狂い、遠近法は完全に崩壊している。
「うわっ!? なんだここ!? 目が変になりそうだ!」
陽希は目をこすりながらあたりを見回した。莉桜も戸惑いながら、慎重に歩を進める。
「まるで…ピカソの絵の中みたい…。」
その瞬間、背後から低く響く声が聞こえた。
「君たちは、私の芸術を侮辱しに来たのか?」
振り返ると、そこにはパブロ・ピカソがいた。彼の姿もまた、まるで自画像のように、顔がいくつもの角度に分かれ、目の位置すら統一されていない。
「いやいやいや! 侮辱なんて滅相もない!」
陽希は慌てて手を振った。しかしピカソは鋭い目で見つめてくる(どの目が本当にこっちを見ているのかはわからないが)。
「ならば、君たちは私に何を売りつけに来たんだ?」
そう、今回陽希が売り込むのは——「√(ルート)」である。
「待て…√って何!?」
陽希は台本もないのにこの展開に動揺した。
「ルート…数学の平方根のことか? それとも…別の意味があるのか?」
ピカソが興味津々で近づいてくる。
「えーと…√って…深い意味があるんですよ! ほら、あなたの絵にも√が関係してるって言われたりするじゃないですか!」
「ほう…続けたまえ。」
ピカソは腕を組み、陽希をじっと見つめる。
「ええと…たとえば、黄金比とか、遠近法の発展とか、数学的な要素が芸術に影響を与えて…その…あの…ええと…!」
「……で、君が売る√とは具体的になんだ?」
「えっと……√付きのキャンバスとか……?」
「ダメだ。全然芸術的じゃない。却下。」
ピカソは即答した。
「いやいやいや! そんなこと言わずに!」
「君、売り物の意味を理解していないだろう?」
「それは…まぁ…うん、ちょっと待ってください、考えますから!」
ピカソのじろりとした視線を浴びながら、陽希は必死に考えた。
すると、莉桜がぽつりと言った。
「…√って、ルート(Route=道)とも読めるよね。」
「あっ!!」
陽希の頭の中に電球が点灯した。
「そうだ! ピカソさん! あなたの人生のルート(道)を描くキャンバスを売ります!」
「ほう…。」
ピカソの表情が少し変わる。
「あなたの人生はまさに√(ルート)そのもの! 一直線ではなく、曲がりくねり、時に分岐し、無数の可能性を生み出した! そんなあなたにピッタリのキャンバス、それがこちらです!」
陽希はどこからか取り出した、意味不明なぐにゃぐにゃ曲がったキャンバスを掲げた。
「これにあなたの自由な発想を描けば、究極の芸術が生まれます!」
ピカソはじっとそのキャンバスを見つめ——
「……うーむ。悪くない。」
「おおっ!? まさかの好感触!?」
しかし、ピカソは突然険しい顔をした。
「だが、これではまだ不十分だ。」
「えぇ!? 何が足りません?」
「√(ルート)の本質とは、制約と解放のせめぎ合いにある。私の芸術も、既存のルールを破壊し、新たな道を切り開くものだ。しかし、このキャンバスはただ曲がっているだけで、私を真に解放するものではない。」
「えぇ…難しくなってきたぞ…。」
「もっと自由な形に…そう! たとえば立体的に…!」
「立体的!? つまり…こういうことか!」
陽希はその場で布をねじり、くしゃくしゃにし、意味不明な三次元オブジェを作り上げた。
「うん! これならどうだ!」
ピカソは目を輝かせた。
「これは…まさに私が求めていたものだ! 君、天才だな!」
「やったあああ!!」
陽希はガッツポーズを取った。
「で、いくらなんだ?」
「えっと…通常ならこれ、一枚500万ゴールドですが…今回は特別価格で…480万ゴールド!」
「ほう…値引きしたな。」
「お得感大事ですから!」
ピカソは少し考え——
「では、購入しよう!」
「やったああああ!! 成功したぞおおおお!!」
こうして、陽希はまたしても謎の商品を売ることに成功したのだった。
しかし、その後、ピカソはキャンバスをさらにねじり、新たな概念「四次元キャンバス」を生み出し、美術界を震撼させることとなる——それはまた別の話。
第67章 「ピカソと√(ルート)の謎」 終




