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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友達以上恋人未満

作者: 愛賀綴

 友達以上恋人未満という言葉を誰が作ったか知らないが、中途半端な関係であることを的確に表現していてよく生み出したと思う。

 俺とあいつとの仲がまさしくそうだ。


 もともとは幼馴染み。

 家が近くて、同い年の子がいることでまず親同士が仲よくなり、子どもは連れて行かれる。

 子どもの世界なんて、親が連れて行ってくれる範囲がすべて。

 保育園か幼稚園に通う前に同年代と知り合えるかは親の行動範囲による。

 俺とあいつはそんなこんなで知り合い、幼稚園に通うまで他に同年代の子がいなかった。

 だから普通に仲よくなった。


 ふと、少子化というニュースで見かけるキーワードが頭に浮かんだが、俺が死ぬとき日本はどうなっちまうんだろう。

 そんなことはどうでもいいなんて言う大人ばかりだから、そんなことはどうでもいいと言う子どもが育ち、負のループなんだろう。

 日本の未来は真っ暗だね。

 俺の未来も今のところ真っ暗だ。

 あいつのことを幼馴染み以上、友達以上に思うようになったのはいつからだろう。


「はあああ……」


 俺自身、俺の気持ちに戸惑った。

 好き。

 誰を?

 あいつを。

 ……は?

 だった。

 落ち着くまで相当かかった。

 ようやく俺はあいつのことが好きなんだと拳を握りしめて思うほど自覚して、発作が起きたかのように叫んで転がった。


「兄ちゃんっ! ウッサイ!」

「す、すまん」


 隣の部屋の弟に怒られた。

 告るなんて、無理だ無理だ無理だ無理だ!


 だって、俺もあいつも男だぞ?

 同性だっていいじゃないかという世の中になっているとはいうけれど、俺のまわりに同性同士で付き合っている話しはゼロ。テレビやインターネットの向こうで作られたフィクションなんじゃないかと思ったりもした。

 同性同士の仲を奇異だと思わないけれど、まわりにいないのはやはり不安で。

 だって、だって、だって、俺の親や伯父や叔父叔母などは、孫がみたいと言う感覚の人たちばかり。


 俺はおかしいのか?

 俺がおかしいのか?

 俺は俺の気持ちに素直になっていいのか?


 そんなこんなで俺が雁字搦めの俺から抜け出すまでにたっぷり数週間かかった。

 長い長いトンネルだった。

 長く長く心に嘘をついてあいつと過ごした。


 やっぱり結論は、──好きだ。あいつが好きだ。


 この想いに蓋をして、このまま卒業してしまおうと思ったけれど、告らないで卒業するほうが後悔する。

 あいつが同性に恋愛感情を持てるのかかどうかはわからない。遠回しにそういう話題を出してみたことはあったけれど、興味がなさそうにはぐらかされた。


 卒業したら、あいつと俺はそれぞれ違う大学に通う。

 俺は大阪、あいつは神奈川。

 俺もあいつも家を出て一人暮らし。


 告ろう。

 気味悪がられようが、修復不可能に絶縁となろうが、玉砕したほうがスッキリする。

 この気持ちに嘘はない。

 嘘はないから、はぐらかさず聞いてほしい。


「お前のこと、好きだったんだ」

「え?」

「すすすすすすすっ」

「……なんで、過去形、な、の……っ!」

「!」


 ぼろぼろと泣きだしたあいつの顔は絶望で、でも瞳で問いかけてくる。


 ──今も好き?


「うおおおおおおおおおおお!」

「うるさいよぉ」


 俺たちに、春がきた!

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