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乱暴者  作者: 口羽龍
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 2日後の月曜日。今日は出勤日だ。いつものように昭二は車で勤務先の中学校に向かう。いつもの日常だ。だが、何かが物足りないと感じる。今までそんな事はなかったのに。まさか、渚といる時間がいいと思っているんだろうか? こんな気持ちは感じたことがない。何だろう。自分にもわからない。


 昭二は中学校にやって来た。中学校の校庭には、朝練習をしている中学生がいる。朝から元気だな。自分も負けないように元気を出さないと。


 昭二は車から降りて、職員室の下駄箱に向かう。だが、いつもと様子が違う。どこか優しい。どうしたんだろう。昭二は気が付いていなかった。だが、周りにいる生徒や、教員は気づいている。いつもの昭二じゃないと。


「おはよう」

「おはよう」


 昭二は気になった。いつもと表情が違う。何かあったんだろうか?


「どうしたんだ?」

「最近、中村先生、変わり始めたなって」


 その教員は気が付いていた。昭二の様子が変わったと。怖くないし、話しかけても聞き入れようとしないのに。何かあったんだろうか?


「どうして?」

「なんか優しくなった」


 昭二は少し照れた。照れるような表情も見た事がない。こんな昭二は初めて見る。


「そう、かな?」

「気づいてないの?」


 だが、昭二はいつもと変わらないと思っている。ただ、渚と会っただけだが、こんなに変化があったのかな?


「うん」

「まぁいいか。直にわかるさ」


 教員は思っていた。直にわかってくるから、これ以上は何も言わないようにしよう。


「うーん・・・」


 昭二は考えていた。ひょっとして、渚に会った事で、自分は変わり始めたんだろうか? 誰かと話す事で、こんなに変わるんだろうか?




 その夜の事。ある教員は夜の道を歩いていた。夜の道はとても静かだ。心が落ち着く。だが、誰かが襲い掛かってこないか不安だ。気を付けて歩かないと。


 と、教員はある人を見つけた。昭二だ。まさか、ここにいるとは。でも、その隣にいる女は誰だろう。


「あの人、誰だろう」

「わからない」


 隣にいた友人は首をかしげた。まさか、恋人だろうか? 交際しているんだろうか?


「まさか、恋人?」

「まさか。恋に全く興味がないんだよ」


 2人は信じられなかった。昭二は恋に興味などなかったのに。どうしたんだろう。


 と、教員は思った。最近、性格に変化が出たのは、あの女と付き合い始めたからだろうか?


「でも、最近おかしいでしょ?」

「そうだな。ひょっとしたら、あの人と付き合い始めて変わったのかな?」


 友人も気づいた。確かにそうかもしれない。人と付き合う事で、人は変わる事ができると思う。昭二にもそれが現れているんだろう。


「そうかもしれない」

「なんだか気になるね」

「うん」


 昭二と渚は昭二のアパートに入っていった。だが、2人がいる事に気が付いていない。入るのを見て、2人は去っていった。いつかこの2人が結婚するといいな。




 昭二と渚は昭二のアパートに入った。最初は抵抗していたが、今ではすんなりと入れる。そう思うと、昭二は変わったなと思う。


「今日は十五夜だね」


 そういえば今日は十五夜だ。今日は満月を見ながら、2人で過ごそうかな? 昭二はそう思っていたが、なかなか話せなかった。


「うん」


 渚はベッドに座っている。一緒に入れて、とても嬉しいな。もっとそんな時間を増やせたらいいな。


「どうしたの?」

「一緒に月を見ようかなと思って」


 昭二は勇気を出してやりたい事を話した。渚は受け入れてくれるんだろうか?


「いいよ」


 昭二はほっとした。渚は受け入れたようだ。


「急にどうしたの?」

「いや、話したいと思ってね」

「ふーん」


 話すだけでもいいじゃないか。一緒にいられる時間があるだけで、とても幸せなのだから。


「やっと自分を取り戻せたかなと思って」

「本当?」

「うん。あんな事があって、誰も信じられないと思っていたけど、君と出会っていろんな意味で変わったよ。ありがとう」


 ようやく昭二は気づいた。渚と出会って、自分は変わり始めた。自分を見つめなおし、もっと自分を見つめて生きていこう。人にやさしく、自分に厳しく生きよう。


「これからも仲良くしようね」


 2人は満月を見ている。とても美しい。今日の疲れが吹っ飛ぶようだ。


「月がきれいだね」

「うん」


 ふと、昭二は思った。これからも一緒にいてくれるんだろうか? ならば、とても嬉しいな。


「なぁ渚ちゃん」

「どうしたの?」


 渚は振り向いた。何か言いたい事があるんだろうか? ならば、素直に話してほしいな。


「一緒に、なってくれないか?」


 渚は少し戸惑った。だが、迷いはない。あなたが好きなのだから。


「いいけど」

「ありがとう」


 そして、2人で歩む道が始まった。昭二は初めて恋を知った。そして、昭二は元の昭二になった。恋って、こんな力があるんだろうか? 自分にはわからない。

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