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第二十三話 今月のミッション(六月)

 七条が襲われてから数日が経ち、カレンダーは六月に変わっていた。


 梅雨入りはまだだが、そろそろ雨続きの日々が始まるらしい。


 ちなみに、俺が梅雨を目の前で感じるのはこれが初めてだった。


 梅雨の話はさておき、六月になったということは、新たなミッションが開始されるということである。


 六月の初日である今日は、そのミッションの発表日。


 もう全員それはわかっているため、クラスは朝からそわそわしていた。


 そんな中始業時間になり、時間ぴったりに来見が教室に入って来た。


「はい。朝のホームルームを始める」


 来見がそう言うと、すぐにモニターの画面が切り替わる。


「先月の脱落者は二人。どちらもEクラスで……」


 そして来見はその二人の名前を読み上げる。


 どちらも知っている名前だが、面識などは一切ない。ただ知っているだけだ。


「まさかこのクラスから脱落者が出ないとは……俺も驚いている。その代わり、Eクラスから多く脱落者が出ていて、クラスポイントが変動している」


 さらに画面が切り替わり、クラスポイントが表示される。


 変更があったのはEクラスだけで、875ポイントから898ポイントに変わっていた。


 個人ポイントが低い人たちが落とされたことによって、平均値が上がったのだろう。これでFクラスは最下位に逆戻り。でも、こんな逆転の仕方なら、すぐに追い越すことは可能だろう。どんなミッションかにもよるが。


「逆転されてる……」

「マジかよ……」


 クラスの誰かがそう呟く。


「こんなのはよくあることだ。そこまで気にするな」


 来見はそう言ってざわつきを静め、次の話に移る。


「次に今月のミッションについてだ」


 やっとか。


「今月のミッションは、体育祭だ」


 それからスマホにミッションの通知が届く。


「体育祭は五つの種目に分かれて行う。誰も脱落者がいないから、一人一種目だ」


 その五種目とは、100メートル走、玉入れ、障害物競走、eスポーツの有名コンテンツの一つを利用した陣取りゲーム。謎解きタイムアタックの五つだ。


「それぞれの人数は決める時にまた話す。とりあえずやりたい種目を考えておくこと」


 やりたい種目などないが、おそらく人が少ないのは障害物競走なのだろう。スポーツテストでやったあれのことだが、これで他の種目を選べばあれで学年一位を取った俺が出ないで誰が出るんだと言われてしまうだろう。そもそも、俺が障害物競走で一位だったことを知る人物は生徒にはいないが。


「そして、プラスでクラス代表リレーがある。このメンバーは希望制にはせずに、話し合って決めるのがいいと思う。まあ、好きにやってくれていいが」


 この代表リレーは責任が伴いすぎて誰も引き受けたがらないだろう。結局押し付け合って、順当に決まっていくのだろうが。


「最後に、このミッションでの合格基準だが、それぞれの種目で順位が付き、それに伴ってポイントを獲得する。そのポイントの下位数名が脱落対象となる」


 ちなみに、それを100倍した数が個人ポイントとして与えられる。と通知には書かれていた。


「……ということは、絶対に誰かは落とされるっていうことですか?」


 そう聞いたのは、クラスの中心人物である恵口だった。


「まあ、そういうことになるだろう」

「それじゃあ、運動が苦手な人が必ず落ちる……そんなの、不公平じゃないですか?」

「待て。不公平などではない」

「え?」

「代表リレー、あれはクラス全員にポイントが入る。そこでそういう人たちの分もポイントを稼ぐんだよ。このクラスにはその逆で、運動が得意すぎる人たちもいるからね」


 服部や西園寺、今井などがその一例だ。


 ちなみにリレーに出ていない人はその分の個人ポイントは貰えないらしいが、順位に応じてクラスポイントに加点されるらしい。出た人は順位に応じたポイントの半分が個人ポイントになるとのこと。


 リレーに出ていないくらいの人なら、他のミッションでもポイントを稼げるような人ばかりだと思われるため、よく考えれば特に不公平ではない。


「なるほど……」


 脱落者を出したく無ければ、しっかり得点が稼げる場所に人を配置するということが重要になってくる。一人一人が我を突き通していてはいけない。ここで大事なのがクラスのまとまりや協調性だ。さて、服部はどう動くのだろうか。


「種目決めは来週だ。それまでに、作戦でも練っておくといい」


 そうしてホームルームが終わった。


 今ぱっと思いつく作戦は、100メートル走と障害物競走には運動神経がいい人を集め、頭がいいけどその代わりに運動ができないようなタイプには謎解きに回ってもらう。ゲーマーには陣取りを任せ、当てはまらない人が玉入れか。だが、玉入れもそれなりに戦略が大事になってくる。一人くらいは作戦担当として謎解きに回りそうな人を置いてもいいかもしれない。


 ここまで考えておいてなんだが、俺がいくら考えたところで俺に作戦が提案できるほどの権力はない。おそらく、クラスの中心である恵口や浦田、体育会系の今井などが中心となって話し合いは進んでいくだろう。話し合いと言っても、その三人が意見を出し、それに同意するだけのものになりかねないと思うが。


 別にそれで上手くいくのならそれでいい。



「早見くんはどうする?」

「ん?」

「種目」

「あー……」


 急に前の席の市川が振り返ってそう聞いてきて一瞬驚き、質問の内容が理解できていなかった。


「正直なんでもいい」

「そっか」


 どれでもできないということはない。


「早見くん……障害物競走は、普通のじゃないんだよ?」

「ああ。わかってる」

「あれ? 知ってたの? 休んでなかったっけ……」

「追加でやった。じゃないと不公平だろ」

「それもそうだね」


 そういえば、俺が深夜に来見に連れられて自由にやったことは誰も知らない。


「二人はどうするんだ?」


 今度は俺から話を振ってみる。


「何でもいいっていうのが本音」

「ボクもそうかなー」

「結局、作戦みたいなのが決まって、それでなんとなく決まっていくのかなーって思うし」

「そうか」


 やはり、今の時点では何もわからない……か。

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