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魔導師は目立ちたくない  作者: 流人カヲル(仮)
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やっぱり酒は災いの元 その7

伯爵をひとまず部屋に残し、クローディアは着替えをした部屋へと戻っていった


相変わらず廊下は黒い影がガサゴソと蠢いていたが、クローディアの近づくと文字通り蜘蛛の子を散らすように調度の影や壁の隙間に逃げ込んでいった


着替えをした部屋に入ると予想通り、クローディアの荷物は荒らされ、ここに着てきた服は切り裂かれていた


伯爵の部屋にいた影の追い出された仕返しとでも言うものだろうか


クローディアはまぁ、そうなるか、と諦めの表情を浮かべ、荒された荷物からひとつのカバンを抜き出した


そのカバンは散々こじ開けようとしたのか爪のような物でかなり引っ掻いたような跡はあるものの中身は無事だった


このカバンだけは「もしも」の時の薬品とメイド仕事をサボって…合間を見つけて口にする為のお茶菓子が入っていた為、護りを施していたのだった


伯爵の部屋に戻り、薬品を飲ませると青黒かった伯爵の顔色も頬に赤みが生まれ、大分落ち着いたようだった


テーブルに持って来た荷物から紅茶の準備をしながら、クローディアはここに来た理由を語った


「そうか、そういう事か」


伯爵がソファに横になったままでは失礼と身を起こそうとした


「横になったままで」


とクローディアは手短に伝えると、すまないと呟き、またソファに横になり、何から話せばよいものか、と伯爵なりに状況を整理して事情を話始めた


「君と、酒場で勝負をしたのは確かに私の父だ。ただ、私の父は2年ほど前に死んでいる。君と出会った父は、父の姿をした、人形だ」


クローディアは特に驚く様子もなくその言葉を聞いた


伯爵はちらりとも動揺を見せないクローディアに驚きの表情を浮かべたが、顔を合わせてほんの僅かな間だけでも次々と異様な出来事の処理を何事もないかのように行った彼女を「力」のある人間なのだから当然かと思い、話を続ける事にした


「亡くなる前の父は随分と悔しがっていた、勝負に勝てなくなった事を。年齢、体力の衰えから、勝負に集中しきれなくなった自分を、ただ亡くなる直前に

『これで勝てる、もう一度勝負出来る、本当の強者が誰であるか彼奴らに教えてくれてやる』

と気が触れたのではないかと思える程大喜びした事があった。その次の日に父は亡くなった」


クローディアは伯爵の話の途中なのに、そろそろ茶葉の蒸らしが終わったと、席を立ち、2つの家から持って来ていたカップに紅茶を注ぎ、ほんの僅かの砂糖をかき混ぜると伯爵に渡すと再び席に座った


その流れるような無駄の無い所作に伯爵は、身分も定かで無い者が貴族である自分の話の途中に、というような苦情を頭に浮かべる間もなくその頃には手に紅茶のカップがあった


衰えた身体には甘みたっぷりの紅茶より、ほんの僅かの甘みの紅茶の方がいっそ身体に優しかった


伯爵はひと息ついてから話を続けた


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