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魔導師は目立ちたくない  作者: 流人カヲル(仮)
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やっぱり酒は災いの元 その5

クローディアは嫌々ながらも用意されていたメイド服に着替え始めた


用意されていたメイド服は、いわゆるオーソドックスなロングスカートの物だった


あの老紳士の雰囲気から


悪趣味で嫌になるほどのミニスカートの物や肌を露出させるようなタイプのものは用意してはいないだろうとは予測はしていた


着替えながらクローディアはあの老紳士の事を思い出していた


魔道契約書に書かれていたその名前


あとで調べて思い出したその名前


ブルゴス·ディグニダ·コーブレ伯爵の事を


爵位を持ってはいるがどこの派閥にも属しておらず弱小そのもの


そんな彼は異常な程の賭け事の強者(つわもの)であるとの噂を耳にしたことがあった


彼は貴族達の夜会に呼ばれては夜な夜な怪しい勝負で連戦連勝との事


あまりに強すぎる為


夜会に呼ばれる事が減り始めると、勝負を求めて平民の酒場にまで足を運んで勝負をしていたという


老齢の為、しばらくその姿を見かける事も減っていた、そうなのだけれど


そのブルゴス伯爵があの夜


クローディアの前に現れて勝負を仕掛けてきた


(…だけど…)


調べた結果、ブルゴス伯爵については気になる事がいくつかあった


それがどうにもクローディアには引っ掛かっていた


メイド服に着替え終わったクローディアは鏡の前で、くるりっと回転してみた


長身であるクローディアにはメイド服姿がよく似合っていた


自分の家に籠もり研究ばかりしているから


着る服に気を使う事はなく、こういったヒラヒラとした服を着るのは久しくなかった


というより着た事がないのかもしれない、と自身の記憶を探ってみたりもした


(たまにはこんな服で研究してみようかな?)


自分自身の普段とのあまりのギャップに鏡の前でポーズを取ったり


普段使いの用のメイド服を買ってみようかと思う程ウキウキした気持ちになりだしていた


けれど


(さてさて、それでは『仕事』に取り掛かろうかな)


と、くるりと鏡に背を向け、扉を開いた


御者の男の案内で


日が差しているのに暗い、黒い空気が漂い、ヒソヒソ声まで耳に届いてくる廊下を歩き


屋敷の主の部屋へと向かった


扉の前で男は立ち止まり弱々しく話し始めた


「申し訳ありませんが、これより後の事はお任せします」


「どういう事?」


「長年、このお屋敷に仕えさせて頂きましたが


なんとかこれからも頑張ろう


お仕えしていこうとも思っていたのですが


…この辺りが、その、潮時という物かと思いまして…」


「この件は私が片付けて見せる、だから大丈夫」


クローディアの力強い言葉に御者はただただ目を丸くして驚いた


そして深々と何度も頭を下げ、今来た廊下を足早に去っていった


「さてと」


ふぅ…と大きく深呼吸をして


あの老紳士を問い質す所から始めていこうか


と扉を開けたのだった


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