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魔導師は目立ちたくない  作者: 流人カヲル(仮)
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やっぱり酒は災いの元 その4

予感めいた物は既に馬車に乗った時


いや、その馬車の様子を見た時からあった


そして馬車は貴族が邸宅を連ねる区域に入って行く


この段階で確信していた


馬車は屋敷の門を通ると


クローディアは小さく呟いた


「これは…?一体何が…?」


クローディアは察知していた


自分の家に馬車が止まった時に


その豪華な装飾に似つかわしくない


僅かに漂った黒い影の気配を


そして


馬車が通る道筋にも漂う黒い気配


それは屋敷に近づけば近づく程強くなっていく


門を通ると


庭の木々や花々からは黒い気配が立ち昇り


葉の一枚一枚、咲き誇る花がこちらを睨んでいる


そうクローディアには感じられていた


馬車を降りると


まだ昼下がりの時間なはずなのに


夜が近いような薄寒い雰囲気が辺りには漂っていた


馬車を降りたクローディアの目の前には立派な屋敷があった


だけど人が見ると即座に立ち去りたくなるほどの黒い気配が立ち昇っていた


幽霊屋敷


屋敷はその表現がぴったりであった


その感性がない人でもここには何か棲んでいる


この屋敷には近づいてはならない


そう思うはずである


こちらです、と御者がクローディアの前に立ち


屋敷の中へと案内し始めた


これもまた意外だった


かなりの規模の屋敷を持っているのに


御者が屋敷の使用人を兼ねていたのだ


経費を節約している?


にしてもあまり聞かない奇妙な話だった


屋敷の廊下を案内されて歩くにしても昼間なのに調度品の後ろには明らかな影が潜み


あちこちをネズミが徘徊し、そのネズミは慌てて逃げるでもなく


こちらを見て、威嚇の鳴き声を上げてから悠々と立ち去って行くのだった


(これはなかなかお目にかかれない)


クローディアは他人の家でなければ隅々まで観察して回りたい衝動に駆られていた


加えて、この屋敷の主人、あの仮面の老紳士に山のように質問したくてたまらなくなっていたのを必死でこらえていた


人にはそれぞれ事情がある


それを無視してこちら側からの質問を一方的にしてしまうのはよくない


確実に


でも、聞きたくて仕方ない


どこから、どの質問していこうか


と優先順位を頭の中で整理しているとある部屋で御者の足が止まり


「こちらに着替えは用意させていただいております」


と扉を開いた


クローディアは密かに舌打ちをした


自分の知識欲を刺激する物がそこら中にある環境から現実に引き戻されたからであり


仮面の老紳士との勝負に負け、強要されるまずひとつ目の約束事


「メイドとして屋敷で働く」


それを思い出したからでもあった


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