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魔導師は目立ちたくない  作者: 流人カヲル(仮)
13/16

やっぱり酒は災いの元 その13

軽く食事を済ませたふたりは庭に出た


ひと晩中クローディアが戦い続けたおかげか庭をざわつかせていた悪霊の姿は何処にもなく


多少しばらく手入れされてなかったせいか雑草などで荒れてはいるが以前の静かな庭園に戻っていた


クローディアはあちこち切り裂かれ汚れてしまったメイド服を着替える事もせず


ただ肌を隠すように外套を羽織り


不眠不休でひと晩中戦い続けて軽い擦り傷、切り傷はあったが


それよりも疲労のから来る重い足取りで今にも倒れそうな程フラフラだった


伯爵はその後を心配そうに見つめながら歩いた


何がどうしてこうなった、なんて無駄な事は今は言わず


この状況は当然自分の力でどうにか出来る物ではなく


クローディアにしか解決できない


その邪魔をしたくない


ただ見届けなければならない


何が原因かを


そんな気持ちでいた


クローディアは何の迷いもなくかなり長くなってしまった雑草の中をかき分けて歩き始めた


突然で予想外な事に慌てて伯爵も後を追った


クローディアの足は庭園内の北東部、


柵の際で止まり、そしてしゃがみこんだ 


何だろう?と伯爵は覗き込もうとして動きが止まった


酷い状態の子猫の亡骸がそこにあったからだった


亡くなってから


月日が経過していたからか


子猫の亡骸は酷く傷んでいた


ただ明らかに異様であった


その子猫の亡骸は黒い棘の(ツル)のような物で縛られているのだった


そしてその黒い蔓は亡骸から養分を吸い上げて成長しているかのように生々しく


血液が流れているかのようにビクビクと不気味に震えてさえもいた


ふっとクローディアが念をこめると魔法で短剣が生み出され


黒い蔓を切ろうとすると


その蔓は子猫の身体から離れ、剣を持つクローディアの手にから絡みつこうとしてきた


「危ないっ」


と伯爵が言葉を発する前


クローディアの腕に絡みついた瞬間には


黒い蔓は破裂し、砕けて


後には燃え尽きた黒い木屑のような物だけが残った


「この程度の呪術で」


確かに伯爵はクローディアがそう呟くのを耳にした


それよりも


その言葉から


短くほんの僅かな言葉の中から漂う


クローディアが放つ怒りの意思とでもいうような物が


伯爵の背筋に寒気を走らせ


伯爵は慌ててクローディアから目を離した


そして伯爵は見た


酷く傷んだ子猫の亡骸が立ち上がるのを


いや


立ち上がってはいない


亡骸は確かに横になっていた


伯爵は何度も瞬きをした


立ち上がった方の子猫はなんというか存在感が薄く感じられ


そこでようやく納得出来た


「猫の、幽霊」


「子猫を酷く虐めておいて


呪術を施した蔓で強制的に助けを呼ばせる


身体死んでも魂は死ぬ事無く


棘に傷つけられその消える事のない痛みで助けを求めて泣き続ける


あまりこの国では見られないやり方の呪術です」


クローディアは静かに目を閉じ子猫に優しく撫でてあげると


子猫の幽霊は光に包まれ


ゆっくりと少しずつ痛々しい姿から愛らしい姿へと戻っていった


おお、と伯爵は声を洩らした


子猫の幽霊はクローディアの手に顔を当てて甘えるような声を出していた


「ありがとう」


そう言っているように伯爵には思えた


クローディアは傷んだ子猫の亡骸をいたわるように両手で持ってあげると


子猫の幽霊もピョンとクローディアの手に飛び乗った


そしてクローディアは歩き出した


何の迷いもなく


次の場所は屋敷の北の門だった


また子猫が痛めつけられた亡骸があるのかと伯爵は思ったが


違った


いつの間にかクローディアは僅かに歩みを早めていた


そして突然だった


クローディアが「そこ」をひと睨みすると魔法によって生み出された1本の短剣が


空を切り裂き


一直線に門の柱の根元あたりの地面を突き刺した


近づくとそこには平らな小石が短剣で貫かれていた



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