やっぱり酒は災いの元 その11
他にも、とある可能性に、気づいていたのでクローディアに結界を広げる事をためらわせていた
『そうするしかない、やっぱり』
一度決断を下すとクローディアの行動は早かった
クローディアは探索の糸を戻すと、伯爵は紅茶を口にしており、話がひと段落しているようだった
「伯爵様」
クローディアはゆっくりと椅子を立った
「これから私はやらなければならない事、がありますので、私がこの扉から出た後私が向こう側から扉を開くまで絶対に扉に開けない、いえ、触れないでください」
伯爵は、カップをテーブルに置き、静かに頷いた。
「すまない、父のせいで君に迷惑を掛ける」
クローディアは僅かに微笑みを浮かべ、首を横に振った。
「臨時の雇われ、とはいえメイドですから」
クローディアはこの屋敷に来てからの不機嫌な態度を和らげ、できる限り明るく振る舞った
スカートの裾を軽く持ち、丁寧に頭を下げる一礼する姿は、どこかの貴婦人の佇まいを思わせ、身体が弱っているはずの伯爵は思わず、ほぉ、と熱っぽい吐息を漏らした
「さて、と」
部屋を出て後ろ手に扉を閉めたクローディアは小さく呪文を呟いた
伯爵の部屋にこれから始まる「音」が伝わらないようにしたのだった
部屋そのものは先程の発動させた簡易の聖域結界
の効果が軽く明日の昼ぐらいまでは残るはずだから安心ではあったけれど
伯爵には、何日も気を落ち着けて休むという事ができていないようだから、ぐっすり眠ってもらいたい、というクローディアの配慮だった
「長く待たせたようだ」
部屋は黒く蠢く物で満たされていた
床に、壁に、天井にまで
その蠢く物の群れは皆赤く、燃えるような眼でクローディアを睨み、威嚇の声を上げている物までいた
伯爵の部屋にいた仲間を殺された事を憎んでいるようだった
「楽しもう、長い夜を」
クローディアの手には再び魔法で生み出した剣が握られていた




