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それは終わりではなく始まりでもなく

「────くん! ケーくん、戻ってきて!」


 恵太は目を覚ました。

 心配そうにこちらを覗き込むアシリアの顔が滲んで見えた。


 体の震えが止まらない。

 アシリアが声をかけなかったらあの暗闇から戻れなかった。

 決して這い上がれない底無しの悪夢を見たように。


「わたし……死んだはずじゃ……」

「落ち着いて。キミはレイカじゃないよ。ほら、自分のフルネーム言ってみ?」

「あ……あ、た、滝沢恵太…………のはず」

「よしっ、ダイジョーブイだね!」


 そういうとアシリアはぽんぽんと肩を叩いた。


 母親が死んだあたりから、意識の垣根が曖昧になった。

 冷河の怒り、憎しみ、不安、焦り、苦しみ、悲しみ。ありとあらゆる負の感情を自分のものであるかのように感じ、いつの間にか彼女の心と完全に同化していた。

 逃れられず一方的に吸い込まれるしかないブラックホール……。冷河の心はまさにそれだった。


 恵太は、気持ちが落ち着いてくるにつれ自分の行動の意味を理解し、むせび泣いた。

 生き延びてくれさえすれば幸せになれる。少しの間落ち込むことはあったとしても、いずれ立ち直ってくれると楽観的に考えていた。

 どんなに傷ついたとしても時間が解決してくれると信じていた。

 明るい未来を生きてくれるだろうと……。

 大間違いだった。

 自分の死が引き鉄となり大切な人を地獄へ突き落とす結果になってしまった。


「こんな……酷いことになるなんて……」

「涙をふいて。まだ終わってないよ。キミはキミを必要としている人のところへ行かなきゃいけないんだから」

「どこに……?」

「もちろんレイカのところへ」


 天井スクリーンに新たな映像が浮かぶ。

 いくつもの黒い球体の画だった。すべての球体には紫がかったモヤと流星の煌めきのような光が見えた。ほどなくして球体の光が消えていく。まるで明りを消灯したように球体は光を失い、やがて背景の闇と同化し見えなくなる。


「あの球体のひとつひとつが別の宇宙なんだ。ここからだとちっぽけに見える光の中に多くの生命があったの。光を失えば周囲の闇に飲み込まれ消滅することになる。たとえばそう」


 映像が変わる。慣れ親しんだ街の遊園地の情景。とあるヒーローショーの小さな舞台。怪人役のスタッフに異変が起きた。体から目を刺すような閃光を放ったかと思うと、影らしき痕跡を残して消滅した。ヒーロー役は事態が理解できず慌てふためく。最初のうちは新しい演出だと思われ、客の中に拍手をするものもいた。

 程なくして客席の人間も消滅した。一人、また一人と消滅する人数が増えていき、最後には不気味な静寂が遊園地を覆っていた。


「パニック映画のオープニングのように見えても、まぎれもない現実。運命の糸に干渉することの本当の恐ろしさだよ。無作為の生命消失現象……、当事者は恐怖を感じるヒマもなく、最後の一人がいなくなるまで続くんだ」

「これは……いったいなにが?」

「レイカが受け取った壊れた魂と、運命を憎悪する彼女の意思と意志が主要因。彼女が死の際に放った憎悪のエコーは、隣接する全ての宇宙の冷河に伝わって効力を発揮したんだよ。死の運命ではなく、生の運命をキャンセルする力をね。レイカは、キミとまったく逆のことをしてるってわけ」

「冷ちゃんがこれを?」


 虫も殺せないような人なのに……不特定に危害を与えてることが信じられない。


「六〇年余りの人生は、人を変えてしまうのに十分な長さだよ。純粋で汚れのない愛も転じれば比類のない憎悪に変わるんだ。運命を憎悪するレイカの心は、キミにもじゅうぶん伝わったはず」


 美夏と冷河の映像に切り替わった。二人の体に不可思議な模様が浮き上がり、その異様さが増していた。

 恵太には、二人がどこで戦っているのかわからない。鳥の翼を身に着け、暗黒の空間で凄まじい速度の衝突を繰り返していた。


「レイカの憎悪には終わりがない……色鮮やかな世界を黒く塗りつぶすように拡大していく。肉体が滅んでもその意思は途切れてないんだ。彼女の心は赤い闇の深淵に留まったままでいる」

「冷ちゃんが……まだ生きてる?」


 アシリアがうなずく。


「ここで食い止めなきゃ未来はない。同一個体である霧生冷河がレイカの憎悪を受信したら一巻の終わり。霧生冷河がカタストロフィのスイッチを押してしまう。自分の意思で動けない操り人形になるってわけ。アトロが意識を奪ってくれたから操られずに済んでるけど、長くは持たないだろうね」

「アトロポスさんが憑りついたのって、冷ちゃんを守るためでもあったのか……」


 戦いの決着がついたようだ。

 冷河はハサミのような武器を破壊され、抵抗する力を失っていた。

 美夏が何かを諭していると、冷河の背後の空間が引き裂かれたように歪む。

 美夏の手は間に合わず、穴は冷河を吸い込むと煙のように消えた。


「いったいなにが?」

「レイカの念動キネシス。最後のスイッチである霧生冷河を引き寄せたんだ。マジでチョー激ヤバ」

「俺にできることはないの」

「……ケーくん、これを預けるよ」


 アシリアは瑠璃色の指輪を差し出した。


「これは……?」

位置探査装置ロケーターっていってね。レイカを探すのに使えるはずだよ」

「……冷ちゃんは、赤い闇の深淵にいるって言ったよね。そこは俺でも行ける?」


 アシリアが力強く親指を立てた。


「案内しちゃおう! ただ、観測者であるアタシはフェイトを離れるわけにいかない。ケーくん一人で行ってもらうよ」

「冷ちゃんのためなら、どこへだっていくさ」


 恵太は指輪を受け取った。


「どうやってもアタシらではダメだった。レイカは固く心を閉ざしてるんだ。でも、ケーくんなら……。レイカが会いたいと願っていたタキザワケイタに近いキミならあるいは……。あの子を赤い闇の深淵から解放しさえすれば、まだ希望はある」


 アシリアが出口扉へ移動して念押しする。


「いい? キミがこれから行くところはレイカの創造した世界だからね。誇張無しに唯一絶対の神ってわけ。深淵がどんな空間になってるかは彼女の裁量次第。会えたとしても言動には細心の注意をはらうこと。レイカに拒否られでもしたら二度とチャンスはないよ」

「それは……、俺が最初の恵太とは違う人だからってこと?」

「異次元世界の同一個体といっても結局は他人だからね。まったく同じ人生を生きたわけじゃない。キミはレイカが会いたいと願った人とは違うんだよ」


 レイカを納得させられなかったらそれまでということか。


「頼んだよ。レイカを助けてあげて」

「絶対に助ける。冷ちゃんは……責任感が強すぎるだけなんだ」

「そういうトコ、アトロによく似てるって思うよ」


 薄く苦笑いしていた。


「ケーくんにとっちゃアトロは分からず屋で石頭でいけ好かない女神。でも、レイカの境遇を憂いてたのは本当だよ。レイカを救いたいって気持ちにウソはなかったの」

「だいじょうぶ。今ならよくわかるから」

「傲慢だよね。悲劇の根源は、キミらのどちらかしか生き残れないことにある。だったら遺恨を残さぬよう一緒に死なせてしまえばいい」

「……そうするのが一番なのかもしれないね。アシリアもそう思う?」

「アタシは中立の立場。どっちが正しいとかは言及しないよ」


 アシリアは扉の取っ手に指をかけた。


「でも、アトロの案は最後の手段にしたい。キミやレイカを失ったら、せっかく開きかけた可能性を潰すことになるかもしれない。クロトもそう考えたんだと思う。キミは秩序を乱すエラーじゃなくて、黒く淀んだ世界に光を当ててくれる存在なんじゃないかってね。心情的には、アタシもクロトの案に乗りたいかな」

「……ありがとう」

「よっし。茨に囚われたお姫様を助け出してこい、ヒーロー!」


 その掛け声に合わせて扉は開かれた。




 強烈な光に包まれて送り出された先は、高校途中の交差点だった。

 つくづく縁のある場所だ。

 元の世界に戻ってきたと錯覚しそうになるが、空を覆うように紅く巨大なオーロラが広がっていた。

 幻想的で、終末的なものを想起させる。

 自分以外に人の姿もなく街全体が不気味なくらい静かだ。

 ここが赤い闇の深淵なのだろう。


「冷ちゃん……どこにいるの」


 想像していたよりも異様な空間ではなかった。

 無人のせいか鏡の国のように感じる。

 とはいえどこから探したものか。


「あわわっ、ちょ、危ない! どいてえーーっ」


 上から声が聞こえた。

 恵太は、空から降ってきた美夏を受け止めた。

 あまりの重量感に耐えられずに倒れ込んだ。


「ふーっ、あっぶなー!」

「ね、姉さん……お願いだからどいて」

「あ、恵太、無事だったのねっ」

「おかげさまで、ぜんぜん無事じゃない……」

「おおっ、ごめんごめん」


 美夏は猫のような身軽さで立ち上がると、恵太の服についた砂を落とした。

 嬉しいような泣いているような、なんとも言えない顔で抱き着いてきた。


「あなたなのよね? アホで女狂いで無鉄砲の、わたしの知ってる恵太なのよね?」

「そんな人物はいないって否定したいんですけど……」


 恵太は、多くを聞かずに黙って抱き返した。


「びっくりしたなぁ。今日だけで二回も空から降ってくるし」

「それがさあ、いきなり消えちゃった冷ちゃんを追っかけてたら、ここにたどり着いちゃって」


 美夏は空のオーロラを見て「うわ~、きれい」と感激していた。


「う~ん、似てるだけで元の場所とは違うみたいね。地に足がつくだけ宇宙空間よりマシか。あなたはずっとここに?」

「いや、ラッシーさんに……というかアシリアに送り出されたんだ。冷ちゃんがいるはずだから助け出してってね」

「リアも無事だったのね。あなたを送り出したってことは……リアも覚醒できたってことかな?」

「うん。まあ、その話はあとでゆっくりしよう。今はそれよりも──」


 恵太は美夏の格好を見て痛々しい気持ちになった。

 制服の大部分は破け、肩から下着のヒモが覗いている。

 小さなキズや火傷だらけの満身創痍。


「姉さん、先に手当てしないと」


 学校の保健室なら使えそうなものがあるかもしれない。

 美夏はぶんぶんと手を大げさに振る。


「こんなのほっといても治るわよ。なにを隠そうお姉ちゃんは強靭無敵最強のウルトラヒロインにな……」


 美夏は電池が切れたみたいに動きを止めた。

 不思議そうな顔でぴょんぴょんとジャンプしている。

 超人的な跳躍ではなく、ごく普通の(むしろ低い)ジャンプ。


「……あれ? もしかして封印されちゃってる? 能力解放っ」


 女神の力が出せなくて戸惑ってるようだ。目を閉じて何やら集中する。


「いっせーのっ、真・能力解放っ。現在視!」


 えいっ、と見得を切るようなポーズ。


「ダメ……やっぱり力が出せない」

「い、いいじゃない。普段からあんなすごい力出してたら逆に大変そうだし」

「まあ、それもそうね。もう戦う必要もないし要らないか。……っていうか、なんであなたがわたしの秘密を知ってるの?」

「それもおいおい話すよ」


 アシリアに貰った指輪をはめる。

 レイカを探すのに役立つとのことだったが……。


「しまったなあ。使い方聞くの忘れてた……」

「その指輪なに?」

「冷ちゃんを探すのに役立つからって、アシリアが貸してくれたんだ」

「ふむふむ」


 美夏は、恵太の指輪と自分のゴールドリングを見比べていた。


「とりあえず念じてみたら。あれよ。きっと脳波コントロールってやつよ」


 元女神の姉のいうことだ。たぶんそうなのだろう。

 恵太は冷河の居場所を教えてくれと念じる。

 すると刑事ドラマのルミノール反応のように、青く発光する足跡が浮かび上がった。

 足跡は、学校から離れるように続いている。


「これを追っていけばきっと見つかるわ」

「でも……それにしちゃ小さすぎる気が……」


 どう見ても子供の足跡だ。


「いくわよ。冷ちゃん見つけて、みんなで家に帰るんだからっ」

「そんな簡単にいくかなあ……」


 美夏に先導される形で足跡を追う。

 街並みを観察するにつれ、その精巧さに驚いた。

 間隔の短すぎる信号機や根元が枯れている街路樹、万年閉店セールをやっている家具店など、かなり細かい部分までそっくり同じなのだ。

 赤い闇の深淵はどこまで広がっていて、何を目的に創った空間なんだろう。

 冷河を神とする箱庭のような場所……はたして彼女の生活圏内だけなのか、それとも地球の裏側まで余すところなく再現されているのか。


 たどり着いたのは、滝沢家の前だった。

 足跡は邸内まで続いている。


「家……?」

「きっと冷ちゃん、心細くてわたしたちの家で待ってたのね」


 美夏が喜んでいると、彼女の体を黒い影が通り抜けた。


「ひゃっ。なに今の!」


 小さな影がふたつあった。

 存在を察知できない幽霊のように、恵太たちを無視しているようだ。

 影に近づくと楽しそうな談笑が聞こえた。


(……ふぎゅっ。はい、これは何の動物でしょーか!)

(わかった、おサルさんっ)

(ブッブー。正解はうちの庭に住み着いてるネコでしたー)

(ウッソだー、ネコはそんな泣き方しないよー)

(ホントだって。風邪引いてるときはふぎゅってクシャミするんだよ。なんなら家に来る?)

(うん、行く行くー)


 影は去っていった。


「び、びっくりした~」

「小さな子供……だったみたい」


 生きている存在には思えない。

 過去の記録か、もしくは記憶が人の形をとったもの。

 一種の残留思念と呼ぶべきだろうか。


「ま、まあ、異空間なわけだしね。幽霊の一人や二人出るってもんか~」


 恵太たちは家の中に入った。

 足跡はリビングのほうへ続いている。

 恐る恐るリビングのドアを開けると、さっき見たような黒い影がテレビの前で座っていた。


(……『あ、愛してる』。……う~ん、こんな感じでいいのかな。もっとカッコよくできないかな)


 どうやら台詞の練習をしているらしい。


「この影の子って……ぜったい恵太よね」

「う、うん。たぶん……、俺なんだと思う」


 覚えている。これは小学生のころの自分だ。

 恋愛映画を観ながら、女子向けの殺し文句を練習しているのだ。

 でも……練習はほとんど冷ちゃんと一緒にしたはずなのに。

 ここにある影は一人分だけ。


「まったく、いったい何の練習してるんやら。とにかく探そ」


 二手に分かれて家中を探す。冷河の姿はなかった。


「ダメだ。足跡はリビングの前で消えてるし……家にはいないんじゃないかな」

「みたいね。もう一度外で指輪を使ってみましょう。……その前に」


 美夏は大急ぎで二階に駆けあがった。

 二階から大声が響く。


「ああ、良かった。わたしの部屋もちゃんとある。新しい制服に着替えるからちょっと待っててーっ」


 美夏が着替える間、恵太は庭で指輪を使った。

 別の足跡が出現した。

 恵太は、着替えた美夏とともに再び追跡を開始した。

 追った先はかつての母校である小学校だった。

 小学校に足を踏み入れた瞬間から大勢の影が現れた。

 あちこちから響く騒々しさは、現実のそれと大差ないように思えた。


 さらに追った先は、図書室だった。

 椅子に座って本を読む小さな影に、もうひとつの影が話しかけている。


(宝多仁美さん、だよね? なに読んでるの?)

(ト、トムソーヤの冒険……です)

(すごいね! 小説読めるんだ)

(すごくは……ないです。あの、滝沢くん、図書室にいていいんですか。クラスの子たちと縄跳びするって言ってませんでした?)

(クラスメイトなんだし俺に敬語は使わなくて大丈夫だよ。仁美さんを誘いに来たんだ)

(わ、わたしを……ですか)

(みんなで大縄跳び、楽しいよ。いっしょにやろ?)

(……………………)


 二人の影は図書室を出ていった。

 影のやり取りを見ていた美夏が目を細めた。


「お友達を誘うのはとてもいいことなのに……。この思いやりを女子以外にも振り分けてくれたら」


 美夏は、雑巾を絞るように拳を握りしめ、はあ~と大きなため息をついた。


 このやり取りも覚えている。図書室にこもりがちだった仁美を外へ連れ出した場面だ。


「でも……少し違うな……」


 この時も冷ちゃんといっしょで、熱心に誘ったのは彼女のほうだったはず。

 足跡はまだある。多くの時間を過ごした小学校だけに痕跡は多かった。

 教室はもちろん音楽室や視聴覚室、職員室と行っていない場所のほうが少ないくらいだ。

 よく見ると足跡の青い光に強弱がある。

 この中で強い光を発しているのは体育館だった。


(ユメノさん、たいじょうぶ!?)

(だ、だいじょうぶ、だよ)

(鼻血が……)


 顔を抑えてうずくまる影に恵太の影が駆け寄っていた。

 恵太の影は上着を脱ぐとユメノの影に差し出した。


(血を拭かなきゃ。ごめんね、こんなのしかなくて)

(だ、ダメ。恵太くんの体操着、汚れちゃう……)

(気にしないでいいから。さあ)

(……うん)


 恵太の影はユメノを連れて出ていった。

 様子を眺めていた美夏が頭を抑えていた。


「我が弟ながら……なんで素でこういうあざといことやれちゃうのかな」


 美夏は額を抑えながら首を横に振る。


「こんなの……ぜんぜん違うよ」


 恵太は過去を思い返していた。まただ。これは事実じゃない。あのとき、ユメノを連れて保健室にいったのは自分だけじゃなかった。冷河もいっしょだったという事実が無い。

 いったい赤い闇の深淵は、なにを意味しているんだ?

 異なる事実……創られた空間……終わっていく異次元世界……苦渋の人生を生きたアナザーレイカ……。


「まさか、これって」


 深淵の意味がやっと理解できた。恵太は、わき目もふらず体育館を飛び出した。アナザーレイカは学校にはいない。もちろん自宅にもいない。足跡を追っても意味がなかった。

 これは追憶だ。

 アナザーレイカにとって最後の別れのようなものだ。


「ちょっと、どこ行くの!」


 美夏も後を追う。


「今まで追ってた足跡は、痕跡を消すために立ち寄ってた」

「どういうことなの?」

「冷ちゃんの目的は、自分が存在しない世界を創ることなんだ。だから、事実を消してる。冷ちゃんの存在した他の異次元世界まで消して、最後に残った深淵を唯一の現実にする気なんだ」


 冷河の気持ちが痛いほど伝わるようだった。

 アナザーレイカは、運命を憎む以上に自分自身を憎んでいた。

 絶対に見つけたい。

 こんなことは止めさせたいんだ。


「冷ちゃん……こんな悲しいこと、やっちゃいけないよ」

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