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運命の女神

 刀身の発現とともに身体の奥底から力が漲るようだ。

 先ほどまでの自分とは違うという確信がある。いけるはずだ。


 ダーク冷河は嬉しそうに口の端を歪めた。


「よく起動してくれた。運命の女神は三神、各々割り振られた能力を用いて人間を幸福にするために存在する。これまで戦闘における優劣は考慮されなかったが……我らが能力解放状態でぶつかればどうなるのか。じつに興味深い」

「言いたいことはそれだけ? せーのっ」


 先手必勝とばかりに美夏はブロックから飛び出していた。

 キュアソードの切れ味は変幻自在。日本刀のように刀身の重さはなく、剣の素人でも楽に扱える。

 まちがっても冷河の体を傷つけるわけにはいかない。狙いはダーク冷河の武器と思われる巨大バサミだ。叩き落として、2秒間触れてしまえばいい。あのハサミはどうみても重量級の代物で、本気の打ち込み合いなら扱いやすさで勝るこちらに分があるはず。


 ほぼ同時にふたりの繰り出す斬撃が重なった。再び空気の破裂音が轟き、稲妻に似た閃光が走った。

 お互い衝撃に吹き飛ばされることはなく、ダーク冷河は無表情を保っている。

 必死こいてる自分のほうが不利に思えた。

 なんてやつ。こっちの振りが確実に早かったはずなのに、余裕で合わせてくるなんて。


 火花を散らす鍔迫り合いの最中、ダーク冷河は、美夏の手元に目を向けていた。


「いつの間にかキネシスモジュールを装備しているな。その玩具でわたしを追い出すか。できるものならやってみるといい。2秒どころか刹那すら触れられるか怪しいものだがな」

「やっかましいぃぃっ!」


 こっちの狙いがバレているならメンドくさい駆け引きなんていらん!


「とおりゃああああっ」


 そのままお互い至近距離で踏みとどまり、連続で武器を叩きつけ合った。スピードは増していき、武器どころか手元の動きすら見えなくなった。唐竹、袈裟、逆袈裟、右薙ぎ、左薙ぎ、逆風、刺突。美夏は、習ってもいない動作を完璧にこなすことができた。そのすべてを、ダーク冷河は、先が見えてるかのような動きで受け止めた。

 一刀ごとの衝撃で手がしびれそうになる。パワーアップした自分に振り回されないよう精一杯の美夏に比べて、ダーク冷河は氷のように冷静だった。


「くうぅ……、このぉっ」

「運命の女神は、人間の手によって生み出された」


 決死で打ち合ってるとは思えないような淡々とした語り口だった。


「無論今のお前が知る人間たちではない。高度に発達した科学力を持つ異次元世界の住人たちだ。彼らのテクノロジーは、こちらの世界からすれば魔法や夢物語といえる事象を可能にさせた。しかし、ある時、彼らは人の生死を操る神の存在を確信してしまう。人間は神によって運命を振り分けられている。自由意志の介在する余地はなく、その支配を甘んじて受け入れるしかない憐れな家畜。その事実は、森羅万象を掌握したと自惚れていた人間たちを絶望させるには十分だった」

「高度ってわりには遅れてる人たちねえ! 神さまがいるなんて当たり前のことでうろたえちゃって。いい? 神さまってのはねえ、善いことをしたら巡り巡ってわたしたちを助けてくれるありがた~い存在なんだからあっ!」


 ダーク冷河が振り下ろしたハサミを、美夏は打ち払った。


「感傷をもつような存在ではない」

「いったい何の話をしてんのよっ」

「我らの存在理由の話だ。運命の女神とは、家畜に成り下がった人間にできる抵抗の象徴。人間たちは、得体の知れない神に支配される屈辱より、自分たちの手で創り出した女神に支配されることを望んだ。軍事や政治はもちろん、生命、宗教、教育、医療、歴史観、あらゆるものを自ら生み出した女神に管理させた。人は自らの足で立つことも忘れ、戦争どころかケンカも起こらぬような揺り籠に逃げ込んだわけだ。笑えると思わないか。どちらにしろ家畜の生き方をしていることに変わりないというのに」


 返す刃で繰り出されたハサミに、渾身の力を込め美夏はキュアソードを振った。

 さすがに堪えきれなかったようで、ダーク冷河は土埃を上げながら大きく後退した。


「わたしは人間を愛している。しかし……憐れな愚か者だとも思っている。無様な人間たちに愛想をつかしたクロトとラケシスの気持ちはわからなくもない。わたしたちは都合の良い機械とは違うからな。人間たちが支配される相手を選びたいように、わたしたちも支配する相手は選びたいものだ」


 ダーク冷河が左手を突き出すと、彼女の周囲にある残骸や折れた街灯が引き寄せられた。強力な圧力に押し潰され、形を組み変え、一本の槍となる。

 そして、水中銃の銛のように鋭く発射された。


「なにそれっ!」


 美夏は危ういところで避けた。見えない衝撃波(たぶん空気を圧縮してたんだと思う)は、それほど素早いものではなく楽に避けられたが、槍の攻撃は段違いに早い。

 外れた槍が後方にあるビルに命中するとダイナマイトで吹っ飛ばしたような爆音が鳴った。見た目はショボいのに破壊力が凄まじい。


「飛び道具なんて卑怯だぁ!」


 次弾装填するように、次々とダーク冷河の周りには、弾となる残骸の山が吸い寄せられた。

 バルカン砲の掃射と変わらないような勢いで槍がバラまかれる。

 何発かはキュアソードで逸らしたり叩き落とせたものの限度があった。

 全部凌ぐのは無理だ。狙いを絞らせないよう動き続けなきゃ!


「よっ、ほっ、えいっ!」


 美夏は超人の脚力で飛び回り、建物を盾にしながら、ダーク冷河の周囲をうかがった。

 投擲の隙をついて、なんとか近づかないと勝ち目はない。


「機械として創ればよかったものを、創造主はそうはしなかった。我らに自立した思考力を与え、どんな軍事力にも勝る肉体を与えた。生み出した女神に人間を守らせるだけでなく、同時に査定させるために。もし、人間が運命を克服する存在へ昇華できなかった場合は、使命を拒否してもいい。愚かな人間を見限り、我らが人に代わる新たな種として成り代わるのだ。より強靭で、より完璧に構築された新しい人種。運命の支配を脱した真なる自由を享受する存在としてな。クロトよ、お前たちはその試金石といえるのだろう」

「知るかそんなん! 安っぽいSFじみたことなんかよりねえ、わたしには姉としてもっと重要で大事なミッションがあんの!」


 弟をいっぱしの男性にするという至上の命題!

 女ったらしのクズにはさせん!

 漫画みたいな三次元バトルするよりよっぽど厄介な問題だっつーの!


「……どうもお前は、人に成り代わったというより、人に成り下がってしまったようだ」


 槍攻撃が止んだ。いいかげん撃ち尽くしたか?

 美夏が隠れていた壁を飛び出そうとしたとき。


「ミカ~、こっちもキネシスモジュールが使えるからね。目くらましにはなるはずだよ」


 頭の中に電話の主再び。


「目くらまし? そのへんのものをぶつけろってこと? そうよね。わたしもアイツと同じことができるんだった」


 キュアソードを振るだけで頭がいっぱいだったが、それもだいぶ慣れてきたところ。別の手を試してみるのはいい考えだ。


「なんでもいいからアトロの近くに撃ち込んでみて。土煙に紛れて剪刀の神器を叩き落としちゃえ!」


 ダーク冷河のハサミってそういう名前だったのか。


「いい考えだと思うけど……、土煙の中だとわたしも見えなくならない?」

「ふっふっふ。そこんとこはだいじょうぶ! あなたには現在を見通す目があるからね~」

「現在を見通す目? ……おおっ」


 目を閉じると眼前にダーク冷河の姿が映し出された。饒舌さはなりを潜め、静かにたたずんでいる。

 ダーク冷河の姿や相手までの距離、位置が手に取るようにわかる。去年の火事で一瞬使えた遠隔視の能力だ。

 土壇場にきて使えるようになってくれた。


「目標の現在位置をいつでもどこまでも追跡する。例えそれが異次元世界でもね。アトロが身を隠してもあなたには丸見えってことだよ」

「スゴイ! 完全覚醒ってわけね。よーし、これなら」


 美夏は、近くにあった手頃な岩を引き寄せた。

 覚悟を決めて壁から飛び出し、岩をダーク冷河のそばに撃ち込んだ。

 地面に命中し、目論見どおり土煙が舞い上がると、全速力で横に回り込んだ。


 剪刀の神器めがけて力の限り一閃。


「これなら見えないでしょーっ!」


 鼓膜を引き裂くような金属音が響いた。

 しかし、武器を叩き落とすどころか、攻撃はハサミの柄尻で防がれてしまった。


「ウソぉ!?」


 不意をついた一撃だったのに、紙一重でかわされた。

 自分が本気モードに入ってからは、お互いのパワーやスピードに大きな差がないのはわかっている。

 それなのにどうして不意打ちが通じないんだ?

 まるでどこから攻撃されるかわかってるみたいに──


「忘れたのか。お前が現在を見通す目を持つように、わたしには未来を見通す目がある」

「げげっ!」


 それってつまり予知能力?

 どうりでどれだけ攻められても対応できるわけだ。

 ヤバすぎる……完全にラスボスの能力じゃん!

 現在と未来じゃどう考えても未来のが格上っぽいし!


 キュアソードを押し返され、下から強烈な振り上げがきた。美夏は反射的にガードしたが遥か上空に飛ばされた。

 ジャンプしてあっという間に追いついたダーク冷河が追撃を打ってくる。


「クロトといい、ラケシスといい。我らの能力は個人ではなく全体へ還元するためのものだ。お前たちは少年に肩入れしすぎる」

「お姉ちゃんが弟に肩入れすんのは! 当ったり前でしょーがっ!」


 連撃はさばいたが空中で姿勢を崩し、振り下ろされたハサミの一撃を避けられなかった。美夏は、空を突き抜け、地面に叩きつけられる前に体勢を立て直し、建物の屋上に降りることができた。

 着地の衝撃で穴が開き、美夏は階下に滑り落ちた。


「あたたた……なんとかギリギリ…………ってとこね。いたっ」


 潰れたピアノの上で尻もちをついた。ボロボロで見る影もないが音楽室のようだ。どこかの学校に落ちたらしい。

 それにしても参った。未来を読まれてしまっては、どんなパワーも作戦も通じないじゃないか。

 電話の主は心苦しそうに。


「アトロの高精度未来予測のことすっかり忘れてた~。メンゴね」


 そんな超大事なこと忘れられましても。最優先で警戒すべき力じゃね? ……まあわたしも忘れっぽいほうだから強く責められないが。


「でも、どうしよ……。遠くのものを見るだけの力じゃあ、予知能力に対抗できっこないじゃん……」

「むむぅ、心外だなあ。現在視をザコアビ扱いしてもらっちゃあ困るよ。未来視は確定しない事象の中から数学的確率の高い事象をチョイスしてるだけ! 現在を視るってことは確定した事象を寸分のラグもなく追えるってことなんだから。まだまだ真価はこんなもんじゃあないよ~!」


 謎の対抗心を燃やしていた。


「不安だったら真・能力解放までいっとく? そこまでしなくても互角に持ち込めるはずなんだけどね」

「真ってなに!? わたしまだ本気じゃなかったの?」


 じゃあそれやろうよ! 出し惜しみしてる場合じゃないのに!


「女神の本気って環境への負荷が大きいから。あんまりオススメできないんだよねえ。アトロのほうだって10%以内で抑えてるよ」

「あれで10パー……? じゃあ真・能力解放ってのは?」

「20%くらいかな」

「それもうぜんぜん本気じゃないってことじゃん……」

「そりゃあね。戦力は同程度で合わせておくのがマナーってもんよ」


 ボクサーがウェイトで階級をわけるみたいな話なんだろうか。

 電話の主がこのままでいけるというなら信じてやってみるしかないが。

 それにしてもこれ以上のパワーを引き出したらどうなっちゃうんだろう。すでに地形削ったりとかやらかしてるのに……。


「いまより上の能力解放はアトロの出方次第ね。ミカが現在視を使いこなせれば決して負けないよ。未来予測は確定した未来を視るものじゃないの。あれは毎秒毎瞬の情報分析と状況予測結果を反映して確率を導き出すものだから」

「……ごめん。わたしバカだから言ってることよくわかんない」

「ようするにあなたの動きを学習されちゃったのね。学習されてないことなら未来予測の確率を落とせる。つまりつけ入る隙があるよ」


 ダーク冷河は戦えば戦うほど強くなっていくタイプのようだ。

 ますますもって戦闘民族め。


「はいはい~、でもだいじょうブイ! そこで取りいだしたりまするは、女神の不思議道具パート2~」

「またドラえもんみたいなこと言って……」


 またも左手が淡い光を放つ。

 今度は手首に大きいスマートウォッチみたいな端末が現れた。


「それは指向性憑依装置オーバーライドモジュール。元は宴会向けの……ってそれはいいか。とにかく、ミカが知ってる人の癖に上書きできるよ」

「え、なに? 癖を上書き?」

「人の癖や仕草、立ち居振る舞い、呼吸の間隔はみんなバラバラでしょう。アトロはそういう細々した情報を集めて未来予測の確実性を高める。これで攻撃の瞬間だけ癖を切り替えちゃえば集めた情報が役に立たなくなっちゃうの」


 なんのこっちゃちんぷんかんぷん。


「えーっと、どういえばいいのかな~。まったく練習せずに他人の物真似ができるようになります!って道具」

「はえ~、なるほど。すごいわかりやすい」


 役立つのかは疑問だが、電話の主が太鼓判押してるからたぶんだいじょうぶなんだろう。

 装置のパネルにずらりと人の名前が表示された。家族や親戚、学校の友人、テレビの有名人など知ってる人の名前ばかりだ。中には読むまで忘れてた人の名前まである。この中から真似する対象を選べということらしい。

 あくまで癖だけで誰でもよさそうとはいえ悩むなあ……。


「マネするときは、『アクティベイト』に続いて目標の名前をコールして。この道具は奇襲みたいなものだから、一度失敗したら通用しなくなると思って」

「わかった。切り札ってわけね」

「それと実在する人じゃないとダメだからね。マジキュアとかはなしだよ~」


 アニメの人はダメなのかぁ……。残念。

 突然の地鳴りが起こった。音楽室の天井から破片が落ち、建物全体が揺れているとわかる。窓の外を見ると、校庭のド真ん中でダーク冷河がハサミを地面に突き刺して待ち構えていた。


「来たわね」


 美夏は窓から飛び出し、ダーク冷河の元へ舞い降りた。

 突き刺していたハサミが抜かれた。


「穴を掘れば掘ったものの頭上に土が崩れる。壁を壊せば壊したものに破片が飛び散る。樹木を切り倒せば切り倒したものの上に木は倒れてくる」

「……何かの格言なの? 回りくどいこと言ってないで、言いたいことがあったらはっきり言えば?」

「破滅とはほんのささいなことから始まるもの。結果には必ず原因がある。赤い闇の彼方とは、無数にある異次元世界の終着点だ。お前のいた世界も例外ではない。闇を生み出した原因は、お前が守ろうとしている少年にあるのだぞ」

「バカ言ってんじゃないわよ。どうせあなたがやったに決まってる。うちの恵太にそんな大それたことできるわけないでしょうがっ」


 家族への侮辱は我慢ならなかった。

 美夏はキネシスを発動し、校庭にあった銅像をダーク冷河の足元に投げた。

 砂の煙幕と現在視を併用し、キュアソードで斬り込んだ。


 未来視とやらで問題なく防御できるからだろう。

 ダーク冷河は美夏の攻撃を捌きながら、語り口を止めようとしなかった。


「レイカは今日あの時刻あの場所で死ぬはずだった少女だ。それがレイカの運命だった」

「寝言は寝てから言いなさい! そんなものは運命じゃない。ぜんぶあなたがやってることじゃない!」

「わたしは運命の監視者に過ぎない」


 ダーク冷河が至近距離で衝撃波を放つ。

 大したダメージはなかったが、雲の子が散るように砂の煙幕が晴れた。


「事の始まりはキリウレイカを蘇らせたいというタキザワケイタの渇望だ。無数にある異次元世界のうちの、便宜上ゼロ次元と呼ぶが……お前の知るタキザワケイタとは似て非なるゼロ次元のタキザワケイタが存在した。彼には死の運命を捻じ曲げてしまうという特異な性質があった。死ぬはずの人間を延命させることができるのだ。しかし、そうはいっても同一世界で死んだものを復活させることはできない」

「その減らず口を閉じなさいっ」

「ゼロ次元におけるタキザワケイタはその後寿命を全うしたが、彼の思念は遠く過ぎ去りしもののエコーとなって、異次元世界に存在するすべてのタキザワケイタに送られていた。異次元世界の時の流れは一様ではない。未来もあれば過去もある。エコーによって過去のタキザワケイタは未来を知ることになり、キリウレイカを救うための行動を開始したのだ」


 キュアソードを払われ、美夏が体勢を崩したところに、ダーク冷河は大きく振りかぶった一撃を放った。

 美夏はガードした。

 防御する美夏を嘲笑うかのように、ハサミを力任せに押し付けてくる。


「初めのうちはキリウレイカを救うことができず同じ末路を辿った。ある次元では事故死、またある次元では病死。導かれるように自ら命を絶ったこともある。死の運命は形を変えてどこまでも追いついた。少年はその後も数多のエコーを繰り返したが、レイカの命を救うことは容易ではなかった。やがて気づいたのだ。死の運命を覆すには代償が必要だということ。一人を救うのなら別の一人が死なねばならないということ。自ら黄泉の闇へ降ることでしかレイカを救うすべがないということを」

「恵太は死んでなんかいないっ」

「これから死ぬことになる。どうあがこうともだ」

「そんなことさせるもんですか!」


 未来予測を承知で美夏は打ち込み続けた。

 自分の目で相手の動きを追うことはやめた。目を閉じて、現在視の力で追跡したほうがはるかに良い。攻撃の精度が研ぎ澄まされていくのを感じる。


「……追いついてきたか」


 攻撃を防がれるのではなく、防がせる頻度が増えた。現在視の力は、どこに打ち込めばいいか、反撃はどこから来るかを正確に読み取り、しかも追跡してくれる。それに合わせてキュアソードを振るえば外すことはない。

 ダーク冷河の未来予測でダメージを与えることは叶わないが、美夏もダメージを負うことはなかった。

 追いつけないはずの未来に追いつくことができた。


「まだまだよぉ!」


 あともう少しのところまで来た!


「現在視が攻撃を絶対命中のものに。未来視を絶対回避のものにしている」


 パワーもスピードも技も。これでぜんぶ互角だ。


「ここまでは想定通り。女神としての力は完全に並んだわ。さあ、ミカ! アトロを上回るには、あなたの人間としての力もいるよ」

「わかってる!」


 解せないことがある。ダーク冷河はいまだに剪刀を開いてない。ハサミは切るもののはずなのに。攻撃はみねの部分で殴ってくるだけだ。

 なぜ?

 その答えは、次の瞬間にわかった。

 激しい打ち合いの最中、ハサミがふたつに分解した。ネジの部分が外れ、二振りの曲刀に別れたのだ。


「やばっ」


 片方を止めたキュアソードでは受けきれない。

 ダーク冷河はもう片方の曲刀で斬りかかる。

 このタイミングだ。

 その刹那、美夏は虎の子の切り札をきった。


「アクティベイト、『水城舟穂高』ッ」


 類友に賭けるしかない。

 美夏はキュアソードから手を離した。


「なに、神器を捨てただと!?」


 操られるように体が動いた。美夏は一方の曲刀をかわし、もう一方は鮮やかな手刀で手を払いのけダーク冷河の腕を引っ張った。


「おおりゃあああーーっ」


 そのまま刈り取るように両脚で組みつく。


「そっちが二つの武器ならっ、こっちは二人の必殺技だあっ」


 地面に押し倒して動きを封じる腕十字の体勢になった。

 同じ身体能力であれば、腕十字固めは簡単には抜け出せない。


「なんだこれは」

「やった! 穂高ぁ、あなたの寝技めっちゃ役に立ってるぅ!」


 恵太に夜の寝技はかけさせないけどね!

 親友が格闘技をかじってて助かった。

 人知を超えた女神だ神器だとそれがナンボのもんじゃい!

 そんなもんより女子高生二人の力のほうが上をいくってことよ!!


「取った!」


 まちがいなく相手の腕を掴んでいた。

 左手のキネシスモジュールが黄金の光を放った。

 ダーク冷河は目を血走らせながら脱出しようともがいている。

 憑依オーバーダイブ解除まであと一秒もないだろう。


「きさま……ッ」

「あなたの負けよ。観念しなさい!」

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