第6話:彩り還る海音
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…だれって?
そんなのきまってるよ。
わたしはあなた。
そしてあなたもわたし。
いつまでも
いっしよだからね。
………おねえちゃん。
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Ι
Ι
《彩り還る海音》
Ι
Ι
縦横無尽に広がる通路を
片っ端から確認する。
効率よく探すなんて
俺1人では無理だ。
だから‥‥
つんつん。
後ろから肩をつつかれる
振り返ると知美がいた。
漉音:
「(知美!
お前は渚と一緒にいろ
って言ったろ?)」
知美:
「(漉君だけじゃ
大変そうだったから…
大丈夫。
渚ちゃんには
薗ちゃんがいるから)」
双方言葉にはできないが
相手が何を
言いたいのかが
何故か読み取れた感じだ
こんなのをたしか‥
知美:
「(以心伝心だよ)」
そうそうそれそれ…
って!
知美にまで
心を読まれた!?
というか
俺も読み取れた!?
知美:
「(…遊んでないで
早く探さなくても
いいの?)」
!
すっかり忘れてた。
漉音:
「(じゃあ知美。
俺は右に行くから
お前は‥‥)」
目の前に何かある。
動きが止まる。
知美:
「(?
どうしたの漉…君?)」
目の前に何かあった。
知美も動きが止まる。
2人は同じものを見て
同じように止まっていた
Ι
Ι
神崎:「…遅いですね」
彼らが
出発してから早10分。
渚さんのボンベは
ほとんど底をつき、
私のボンベを共用して
使っていますが、
このままでは私の分も‥
酸欠で意識が朦朧と
しかかっていたその時、
遠くから光が見えた。
しかも点滅している。
神崎:
「(…やっとですか)」
Ι
Ι
神崎:「……」
神崎がひとり立ち尽くす
その目線の先には彩音が
漉音:
「助かった彩音。
あそこで手を伸ばして
くれなかったら、
俺たち死んでたかも
しれない‥」
その言葉に続いて
知美も感想を述べる。
知美:
「でもいきなり
黒いゴム手袋
みたいなのが現れたから
ちょっと
驚いちゃったよ‥」
彩音:「酷っ!!
人がせっかく
助けてあげたのに、
その手を
ゴム手袋って!?」
神崎:「……彩音」
彩音はこの時
感じたのだろう。
‖
後ろからくる
黒いオーラ。
‖
満ち溢れる殺気。
‖
なんか今までに
感じたことのないような
鋭く尖った視線…
‖
水で濡れてて
分からないはずなのに、
彩音の首筋から冷や汗が
垂れているように見える
彩音:「お、お姉ちゃ‥」
パシッ!
振り向いた途端、
神崎のビンタが
彩音の頬を赤くする。
彩音:「痛っ……
な、なにすんのよ
お姉ちゃん!!」
神崎:
「彩音…あなたが
私たちにどれだけ
心配かけたか
わかってますか?」
彩音:「ぅ‥」
神崎:
「彩音を、もし、
失うようなことが…
あれば‥」
言葉が
途切れ途切れになる。
その頬を伝うは
いくつもの軌跡。
彩音:「お姉ちゃん、
ごめんなさい‥」
知美:「……」
神崎:「……許しません」
渚:「……」
彩音:
「…ごめんなさい!」
神崎:「……許しません」
漉音:「……」
彩音:「………」
神崎:
「…ただ、
許してもらいたいなら、
これからは、私から
離れないでくださいね」
彩音:
「…っ、え?
その、それはつまり‥」
神崎:
「…一緒にいようね、
彩音。
私たちは換えることの
できないたったひとつの
姉妹なんですから」
彩音の頬にも
神崎のような
軌跡が伝わる。
彩音:「…うん。
……ごめんなさい」
神崎:
「…はい、許します」
Ι
Ι
船乗り:
「小僧!
なかなか見所のある
腰構えじゃねえか」
古今:
「えへ。そうですか〜
いやー、たまたまですよ
た・ま・た・ま!」
古今は船乗りの褒め言葉にまんまとのせられ
浮かれていく。
漉音たちが
ダイバー体験を
している間
古今は、
《挑戦!!
君も大海原へ行こう!》
に参加していた。
船乗り:
「…小僧!
何か網に引っかかってる
みてえだぞ」
古今:「え?
あ、ホントだ。
よぉーし!!男古今朱雀!
由来たちに目にもの
入れてやるぅー!!」
船乗り:
「入れたら
殺人事件だぞ小僧‥」
古今:「うおおおっ!!
す、すごい重さだ。
今までにないくらい‥」
船乗り:
「(そんなすげえの
この海にいたっけ?)」
古今:
「もう少しぃ…
もう少しぃぃ………
うおりゃあーー!!」
古今が網で
引き揚げたのは
体長1mは軽く超す‥
漉音:「よっ、久しぶり」
釣れたのは魚…
じゃなくて友人。
船乗り&古今:
「んな……
(口を
あんぐりと開ける)」
感覚的にはこうだろう。
ラブレターを好きな子の
靴箱に入れ、意気揚々と
していると、目の前に
現れたのはよく遊ぶ友人
そう、入れる箱を
間違えたのだ!
だがそこで話が
終わればよかった。
‖
実はその友人は
ホモやらゲイやらで、
「ありがとな、○○。
俺もお前を大切にする」
とか堂々と集団の中で
宣言されるようなものだ
渚:
「…ふー。
あれ、何で古今君が?」
古今:「渚ちゃんが
海から現れるなんて……
これはまさに女神と
グヘフルハァーー!!」
古今が船から
落とされる。神崎に。
神崎:
「ふざけている
場合じゃないんです。
彩音!?…彩音!?
目を…開けて‥」
そう、彩音は突如意識を
海底で失っていた。
Ι
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船が180度
回転して岸を目指す。
エンジンは全開。
船乗りも必死だった。
俺も…神崎も‥‥
神崎:
「彩音!
ま、またこんな心配を
か、かけさせて…
許しません…よ‥」
神崎の声が震えていた。
13年前の悲劇。
それは神崎からすべてを
奪った…はずだった。
その後2人は思わぬ形で
再会し、今日まで
楽しく暮らしてきた。
《唯一の家族》
でもそれがまた、
引き離されようと
していた。
ブルル……ガクン!
船乗り:
「岸についたぞ!
小僧たち早く嬢ちゃんを
湾岸病院に連れてけ」
漉音:
「ああ!
…神崎、少しの間
手を離してくれ」
神崎:
「…私も、行きます」
漉音:
「ん…なら早く行くぞ」
Ι
Ι
病院
彩音は緊急治療室に
入れられ、呼吸も
おぼつかない状況だった
日は暮れ、渚や知美は
遅くなるといけないから
先に帰らせた。
古今はひとまず
ジュースの買い出しで。
俺は神崎とつきっきりで
彩音の寝顔を見ていた。
でもそれがいつか
遠い記憶のように‥‥
看護師:
「…え、先生!
患者さんが!!」
ドクター:
「どうしたんだ!」
看護師:
「…い、いないんです」
神崎:「……は!」
その言葉に反応してか
隣で寝ていた神崎が
突然目を覚ます。
神崎:「あ、彩音‥‥」
漉音:
「ん、ん……
っておい、どこに!」
神崎:「海岸です」
漉音:
「その根拠のない自信は
どっからくんだよ?」
神崎:
「たったひとりの
妹の姉ですから。
お見通しなんです」
Ι
Ι
「はっ、はっ、はっ…」
海岸までは走って2分。
俺は神崎の海岸という
ヒントしか知らない。
しかし神崎は正確に
浜辺を走っていた。
そこに、
大きな光が眼に映る。
灯台だった。
しかもそこに映った影は
紛れもなく
彩音のものだった。
でも薄い。薄すぎる。
その影は光に
照らされながらも、
黒くなく、
光に侵されている。
漉音:「あ、彩音っ!」
俺の言葉では
振り向いては
くれなかった。
神崎:
「…彩音!」
はじめは
振り向く素振りも
見せなかったが、
少しだけ振り向いた
ようだった。
彩音:「……いご」
波の音でうまく
聞き取れなかった。
神崎:「……」
彩音:
「……これで、最期…
ここは、空海…
私の…からだ」
な、何を言っているんだ
漉音:
「…い、意味が
わかんねえよ。
ここが、何なんだ?」
神崎:
「空海……
13年前の…悲劇です」
間髪入れず答える。
しかしその表情は暗く、
答えたあとは無言と
なってしまった。
漉音:
「彩音…
お前は何をする気だ」
彩音:「簡単な話だよ。
元の場所にもどる」
神崎:
「っ!
だ、駄目です。
逝かせません」
漉音:
「逝く…ってまさか!!」
彩音:
「はは…違う違う。
海なんかには帰らない」
お前は笑って言うけど
問題は深刻なんだぞ‥
彩音:
「私がもどるのは…」
ゆっくりと
神崎の方に歩き出す。
そして指差したのは…
神崎:「私の…影?」
彩音はこくりと頷き、
彩音:
「だってさ、海なんて
ただ寒いし暗いし、
いやだな〜って思って。
なら、由来君や
渚ちゃん、お姉ちゃん
とかと一緒にいた方が
楽しいかな〜って」
漉音:
「…待て彩音。
そもそも何でお前が
神崎のところへ
戻んねえと駄目なんだ?
別に今のままでだっ‥」
彩音の顔が突然沈む。
しかし直ぐに立ち直って
彩音:
「ごめん。
私もう、2回ね、
死んじゃったんだよ」
神崎:「…死んだ‥」
彩音:
「そう死んだ。
1回目は飛行機事故で。
2回目はさっき、
酸素が尽きちゃって」
漉音:
「な……
くっ、何で酸素が
ないってことを
俺に言わなかった!」
彩音:
「だってそしたら
由来君が傷つくんだよ!?
そんなの‥」
漉音:
「それがどうした!!」
彩音の体がビクッと
震える。
漉音:
「俺が傷つくくらい、
お前が死ぬより
全然ましなんだよ!!
死んだら…
元も子もねえんだよ!!」
彩音:「ぅ‥ご、ごめん」
……
しばらくの沈黙。
それを破ったのは
彩音だった。
彩音:「お、お姉ちゃん…
私は何で今の今まで
生きてこれたと思う?」
神崎:「それは‥‥」
神崎でも答えは
わからないようだ。
答えられないとわかると
彩音は少し微笑み、
彩音:
「お姉ちゃんに会いたい
お姉ちゃんと
一緒にいたいと
思ったからだよ」
神崎:「……」
彩音:
「だから……
《さよなら、
薗お姉ちゃん》」
神崎:「っ……」
現実じゃありえない。
彩音の、体が薄く…
そして神崎の影が濃く…
神崎:「……っは」
大きく小刻みに
深呼吸をする神崎。
もしかしたら今目の前で
起こったことを
見ていないかもしれない
神崎:
「………由来さん…
……彩音は?」
漉音:「っ!‥‥」
何て答えりゃいいんだ‥
神崎:「…ですよね。
言えませんよね。
頭の中では
わかっているんですよ、
本当は」
漉音:「神崎‥」
さっきまで
ここにいたのは3人。
でも今は2人だけだ。
神崎:
「…彩音。
また皆さんと
お話したかったら
出てきていいんですよ‥」
‖
‖
《空海。
それは海に沈んだ魂が
集まる場所。
肉体がない、それ故に
こう命名された。
13年前に起きた
飛行機事故で、最後に
発見された少女は、
意識はあったがのちに
植物状態となり、
その肉体は事故から
13年後に火葬された》
‖
‖
ミーンミンミンミーン‥
漉音:「……暑いなぁ」
漉音は誰かの仏壇の前で
話しかけるように、
そう呟いた………
彩音ね。
何でこんな話に
なってしまったのか…
まあ、いつか由来たちも
悲しい別れが訪れるの
でしょうね。
本当に、身近なところで
‖
‖
‖
次は《彼》がついに
戻ってきます。
ついでに海から
《付属物》も。