第5話:深海の聖地
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…ねぇ。
あなたは
いったいだれなの?
わたしとおんなじ
うごきをするあなたは‥
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Ι
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《深海の聖地》
Ι
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漉音:
「…崎!
目を開けろ、神崎!」
何度も声をかけた末、
その体は少しだけ
ビクついた。
神崎:
「……はい?
どうか、しましたか?」
目を開けると目の前には
逆光のせいで
よくは見えなかったが、
3つの陰があった。
横たわっている体を
砂浜から起こし、
反射的に背中についた
砂をはたき落とす。
漉音:
「どうしたじゃないだろ
それは俺の台詞だ」
神崎:「?」
いまいち状況が
読み込めてないらしい。
渚:「薗さんは歩いてたら
突然倒れたんですよ」
彩音:
「お姉ちゃん……
ホントに、
ホントに心配
したんだからね!!」
少し涙目になりながら
強く抱きしめる。
神崎:
「……彩音‥ごめんね」
ゆっくりと、
手を頭に回して体に
引き寄せていく。
知美:「感動モノ‥‥」
‖
彩音:
「じゃあ
気を取り直して〜えっ!
バイビバァ〜
(ダイブだぁ〜)」
バッシャーーン!!
勢いよく
海に潜っていく。
担当者の説明も聞かずに
担当者:
「ちょ、ちょっとー!?」
神崎:「…すみません。
ああいう子なんです」
担当者:
「はあ……
では、皆さんも海に
ゆっくり潜りましょう」
渚:
「楽しみです…
ブボッ(おおおっ)!!」
漉音:
「!………
(おおっ!!確かに
こいつはすげえな)」
一面に広がる
色とりどりの魚たち。
その中で魚と戯れていた
彩音に戻ってこいと
合図を送る。
合図はもちろん
ジェスチャーのみ。
彩音:
「(知美ちゃん、
向こうに行こうよ)」
指で果てしない深海の
彼方の方を指差す。
知美:
「(うん、行こ)」
小さく頷く。
漉音:
「(渚、俺たちも
向こうに行こうぜ)」
渚:「(はい!)」
にっこりと微笑む。
その時、俺の肩に
誰かの手がのせられる。
予想も何も、
残っているのは
神崎とあいつなわけ
だから振り向かなくても
察しはついていたが
振り向いてみる。
古今:「……(泣)」
ひたすら俺に何かを
伝えたいようだ。
なんだ?
クラゲアイスでも
お前は食べたいのかよ?
漉音:「(……)」
いや、俺この状況で
どうやってお前に
ツッコメばいいんだよ!
古今:「(泣)!!」
何て捉えたのかは
定かではなかったが、
古今は大泣き(多分)を
しながら浮上していく。
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Ι
彩音:「(おお〜!)」
青く透き通った目は、
とても輝いていた。
神崎:
「(…美しさが
伝わってきます)」
神崎もまた、
その光景に濃青の目を
輝かせていた。
海底に残る謎の残骸。
その周りを取り囲む
ようにして、様々な
深海魚が優美に
動きまわっていた。
彩音:
「んっん!
(この中に
入ってみようよ)」
神崎:「……」
胸の前で腕をクロスする
拒否しているみたいだ。
彩音:「んんー!!」
頬を膨らませ、
駄々をこねる。
神崎:「……」
しかし、神崎の腕は
依然にクロスだ。
彩音:「ふんっ!!」
神崎:「!」
姉の忠告を振り払って
謎の残骸に泳いでいく。
漉音:
「(俺たちも
追いかけるぞ)」
肘の曲げ伸ばしを
繰り返して、行くぞと
渚と神崎に合図を送る。
2人も頷いて、
謎の残骸に泳いでむかう
こととなった。
Ι
Ι
彩音:
「(ったく。
なんだよなんだよ、
拒否ってさー)」
依然に機嫌を斜めに
しながら中を捜索する。
しばらくすると、
暗い通路の一角から
微かに差し込む光が。
彩音:
「(おっ!
冒険らしく
なってきたねぇ‥)」
‖
漉音:
「(どこにいったんだ
彩音のやつは‥)」
まったくの他人である
俺がここまで
心配してるんだ。
きっと後ろの神崎は
それ以上に心配してるに
違いない。
神崎:「(……)」
‖
彩音:「ここは‥」
空気のある部屋。
隅には大量の酸素ボンベ
が転がっていた。
彩音:
「まあこっちの方が
快適だし、しばらく
ここにいとくかなぁ」
‖
渚:「(はぁ…はぁ…)」
渚の顔色が悪い。
確認してみると、
酸素の残量が
残り少なかった。
漉音:
「(一度
上にあがろう)」
そうして
俺はもと来た道を
戻ろうとした。
が、神崎の細い腕が
俺の腕をがっちり捉え、
首を横に振っている。
早くしないと渚が
死ぬかもしれないって
いうのに!
すると神崎は壁に
文字を指で書きだした。
俺は何て書こうと
したいのかを必死に
読み取ろうとする。
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い ま あ か ると、
肺 が あつ ぱ く
さ わて、 死にます。
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大体意味はわかった。
理由は知らんが、
今はそんなことを聞いてるときではない。
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へ やを さかし て
く う き の る
へ ゆを
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…空気のある部屋か?
でもそんな部屋こんな
深海の残骸にあるのか?
だが探すしか道は
なかった。
俺は了承の意で頷いた。
話の中に出てきた
《肺が圧迫されて死ぬ》
っていうのは、
人間とかが深海に
潜ったあと、
肺が水圧で圧迫されて
海からあがるときに
押し潰れてしまう
らしいです。
定かではありませんが…